2014年75本目(12月30日鑑賞)


野球大好きな人も知らない人も

ba1

バンクーバーの朝日


監督:石井裕也

脚本:奥寺佐渡子

撮影:近藤龍人

衣裳:宮本まさ江

ヘアメイク:豊川京子

美術:原田満生

出演:妻夫木聡/亀梨和也/勝地涼/上地雄輔/池松壮亮/高畑充希/宮﨑あおい/貫地谷しほり/ユースケ・サンタマリア/本上まなみ/田口トモロヲ/徳井優/大鷹明良/岩松了/大杉漣/鶴見辰吾/光石研/石田えり/佐藤浩市


戦前、一獲千金を夢見て移住した日本人が作った、カナダ・バンクーバーの日本人街。職を奪われたカナダ人の差別を受けながら、低賃金で長時間働く日本人の数少ない娯楽のひとつに、移民二世で結成された野球チーム朝日軍があった。

カナダ人に体格とパワーで劣り、連敗を続ける朝日軍。過酷な労働環境に耐え、それぞれ問題を抱えながらプレーするレジー(妻夫木聡)、ロイ(亀梨和也)、ケイ(勝地涼)、トム(上地雄輔)、フランク(池松壮亮)らは、バントや走塁を絡めた日本人独特のスモールベースボールに活路を求める。


ba2


2014年の映画鑑賞は大好きな野球映画で締め。「舟を編む 」の石井監督による本作、ありきたりなスポ根、感動モノでは終わらない。活気と混乱に満ちた世界に飛び出した日本人の物語であり、そこで懸命に生きようとする家族のドラマ。

ba3


豪華キャストと言われる出演陣。「ぼくたちの家族 」に続く石井監督作品連続主演の妻夫木くんを除き、主要キャストは野球経験者。野球だけで選ばれた訳ではないのはご覧になればわかる。


ba4


妻夫木くん演じるレジーは自信がないけど責任感はあるキャプテン。「ぼくたちの~」の長男役を前向きにした感じ。視線の演技がよい。

勝地くんは安定のムードメーカー。抜群の存在感。大好きな役者さん。

こちらも「ばくたちの~」に続く出演の池松くんは、キング・オブ・普通。あーこんな人いる系では右に出る者なし。彼も大好き役者。


ba5


アイドル・ナンバーワンのベースボーラー亀梨くん。孤高のヒーローは色気漂う彼にピッタリ。

名門横浜高校野球部出身と筋金入りの上地くん。野球大好きな役ができる幸せ者。


ba6


メインは家族のドラマ。なのに野球シーンは半端なしで違和感なし。彼らの個性を活かしながら、しっかり造り込んでるからこそ、ドラマ部分を堪能できる。

NHK勢が揃った女優陣。中でも光っていたのは充希ちゃん。終盤の長ゼリフ長回しは圧巻。間違いなく本作メインの一人。あおいちゃんは「舟を編む」からの友情出演か。


ba7


ベテラン浩市さん、えりさんがとてもよい。トモロヲさん、徳井さん、大鷹さんら日本人街の人々も、微妙な立場で存在感。

ba8


当時の地図を入手して再現した日本人街のオープンセットがクール。音楽も衣裳もヘアスタイルも時代感あり。撮影隊のカメラ割りもカッコよく、ボールパークに向かう朝日軍の颯爽とした雄姿に胸が踊る。石井監督、もはや一流のエンターテインメント作家。


移民たちの苦悩と希望。野球がつなぐ国籍や人種を超えた絆。…そんな甘美な物語はやがて突入する「戦争」という大きな波にもみ消されていく。劇中登場人物たちが漏らす「仕方がない」という言葉。その後、実在の彼等が経験した物語はあえて語らないのは「仕方ない」からなのか。


ba9


「仕方なく」なんかなかった。バンクーバー朝日軍は2003年、カナダの野球殿堂入りを果たす。彼らの背負ったものは花開く。実に60年以上の時間を要したけれど。


hiroでした。




脚本7 映像7 音響7 配役8 他(美術)8

37/50