サン・ジャックへの道  言わば、遍路の旅で自分探しをするのだ! | 新・伝説のhiropoo映画日記

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映画が好きだ。ドラマも好きだ。
そして、イケてる面はもっと好きだ。

そんな好きなものが詰まった日記、読んでみるかい。



2005・仏     ★★★★☆(4.2)


監督:コリーヌ・セロー

出演:ミュリエル・ロバン  アルチュス・ドゥ・パンゲルン  ジャン=ピエール・ダルッサン  マリー・ビュネル



兎に角仲の悪い3兄弟。  母が亡くなった為に遺産相続の説明の為に弁護士の前で顔を合わせた。


<ピエール>(パンゲルン) … 長男 会社経営者。


妻がアルコール依存症で心配事が山積みの上、人から好かれない性格だと自分で決めつけ

ストレスを溜め込んでいる。  差別的発言も平気でする自己中な所も有る。  金には全く困っていない。



<クララ>(ロバン) … 長女 高校教師。


支配的で頑固者。  失業中の夫の代わりに家庭の収入を支えている。

ローンの支払いも有り、学校を休んでまでこの旅に参加する事は嫌だが、背に腹はかえられない。



<クロード>(ダルッサン) … 次男 無職。


無職で、文無し。  その上アル中。  家族にも見放されているのだが、人当たりが良く結構モテル。


亡き母の遺産相続の条件は、3人が揃って聖地サンティアゴ・デ・コンポステーラまでの1500キロにも及ぶ

巡礼路を歩き通すという事。  それを成し得て始めて遺産相続の資格を得る。

3人のウチ一人でも欠けても、途中放棄も認められない。


そんな困った3人兄弟も含む、この巡礼ツアーのベテラン・ガイドの<ギイ>。



ガイドの為に家を空ける事が殆どで、このツアー中も子供が入院するという病気になったり

妻も知人と浮気しているらしい。  どんな事があっても、皆をサンティアゴまで連れて行くという使命感を持つ。


このツアーの同行者達が集合場所に集まりだす。


<マチルド> … 頭に絶えずターバンを巻く女性。  最近、離婚を経験。  巡礼の旅も何度か経験済みらしい。



<サイッド> … カミーユの事が好きで、カミーユがこのツアーに参加すると知り参加する。アラブ系移民。


<ラムジィ> … 従兄弟であるサイッドに騙され、イスラムのメッカに行けると信じ、苦しい家計の中から

           2人分の旅費を母親から捻出してもらう。  文字も読めずに自分の事を馬鹿だと思っている。


<カミーユ><エルザ> … 楽しい山歩きだと勘違いし、お気楽にツアーに参加したハイティーンの少女。

                  サイッドとは同級生。  カミーユもサイッドの事が実は好きなのである。



総勢9名の巡礼の旅が、フランスからスペインへと今始まる…。


遺産の事しかない、諍いばかりの3兄弟。  我儘三昧のピエール。  クララは、顔を合わせるのも嫌な様だ。

こんなに過酷な旅に手ぶらで参加、バーと見れば文無しなのに既に入って酒を飲んでいるクロード。

女の子達も余りにも荷物の重さに途中シャンプーやドライヤーなどを捨ててしまったり、サイッドの事が好きなのに

嫌いな態度を取ってしまったり…。



しかしこの旅は、1日の終わりにホカホカのベッドが用意されているものでは無い、宿泊所には早く付いた者勝ち。

時には、女性の部屋にたった一人男性が寝かされる事や学校の床や教会を尋ねて、泊めて貰うことも…。


しかも、ハイキングコースの様にラクチンな道は殆ど無く、険しい崖を登ったり何て事もある。


ガイドのギイは、ツアー中に子供の病気を知りイライラしている上に、兄弟の喧嘩や勝手な行動、

翌日の昼ご飯の仕込み等で、思わず「帰りたいのは俺の方だ!」等と怒ってしまう事も…。



果たして、この珍道中の間に誰が何を感じ、誰がどう目覚めるのか…。

貴方も1500キロの旅に参加してみませんか…?



《***》


パンフにカバーの様にくっ付いていた地図。


サン・ジャック=サンティアゴのフランス語。 

日本で言えば四国の御遍路さんとか88箇所巡りとかの巡礼の旅。  各所でスタンプを押して貰って行く。


この作品は、そういう意味で完全なるロードムービー。  

若者達のロードムービーと言うのは良くあるが、人生も後半になりつつある3兄弟とその巡礼の旅に参加した人々

9名のロードムービーである。


母の遺言として、本当は半分の距離を3人が一緒に歩けば良しとするものだったのが。

そう、スペイン領に入る時ギイが本当の事を話す。  一旦、帰ろうとする3人だが…。



兎に角3兄弟のそれぞれのキャラの書き分けが、物凄く上手く書けていた。

特に男勝りで勝気なクララ。  兄貴のピエールの頬を平気でビンタ張っちゃったりする。

でも、其処は母でもあり教師でも有る。  

カミーユがいい加減にラムジィに言葉を教えていたりすると、サイッドに「教えてやって欲しい」と言われた時は

断ったのに、ラムジィの興味のある所から上手に言葉が読める様に教えて行く。


飄々として、自らを駄目人間だからと言うクロード。  着替えも歩き様の靴すらない状態で参加。

時より、肩に担いだ杖代わりの棒にパンツやらシャツやらが国旗の様に登場する。

思わず、「パンツを担いでいるよ。ッて事は、ノーパン!」そう思うと可笑しくて可笑しくて。


隙あらば、酒を口にするクロード。  実は上2人の良き潤滑油になりそうなんだけれど…。



ロードムービーなので、言わば目当ての建物の見学場面なんかは殆ど無い。

ラストのサンティアゴ大聖堂のボタフメイロ(大香炉)の儀式は圧巻であった。  

(巡礼者の体臭を消す為に始まったらしい)


景色は、美しいと言って良いのだろうか、道又道を兎に角歩き通す感じ。



日頃、映画館の梯子ぐらいで、滅多に歩く事も外出すらあまりしない私にとっては、気持ち的には非常に

羨ましい作品であった。  が、とてもとても1500キロを歩き通す事なんか出来そうにも無い。


資料を色々調べていて、勿論おフランスも良いけれど、スペインには是非行ってみたいと思った。




ガウディ建築にも、興味はあるが数々ある大聖堂の紹介の中で、憧れてしまったレオンの大聖堂。

美しい!ゴシック様式にはかなり弱い私である。  

こういう物を見ていると「もう少しデザイン史も身を入れて勉強しとけば良かったなァ~」と思うが

17・8の乙女の頃には、心が全く動かなかったんだよね。  私も大人になったって事かい?(爆)


監督は、「赤ちゃんに乾杯」「女はみんな生きている」のコリーヌ・セロー。(右の画像の一番前の女性)

特に「女はみんな生きている」が大好きな私。  女性には特に観て欲しい作品。

角川エンタテインメント
女はみんな生きている

凄く敷居が高かった、おフランス映画のイメージを覆してくれた1作でもあった。

女に生まれてきて良かったとも…。


それ程、スクリーンで是が非でも観なくてはイケナイ作品とは思わない。  

けれどもレンタルになった際には、是非とも観て欲しい1作。  

ラストが何とも言えない良い終り方で思わずブラボーであった。


≪大阪近辺にお住まいの方に…≫

この作品と並行して、催し物が開催されているらしい。  今が満開の桜の花見がてらに如何でしょうか?



http://www.minpaku.ac.jp/special/pilgrimage/


万博公園内にある、国立民族学博物館 開館30周年記念特別展「聖地・巡礼-自分探しの旅へ-」

6月5日までなので、私も行けたら行ってみたいと思っている。