『宇宙飛行士選抜試験』の中から、心に響く言葉より…


日本の航空宇宙分野での研究開発を担う、独立行政法人・日本宇宙航空研究開発機構JAXA(じゃくさ)。
そのJAXAが2008年に行った発表に、日本中にいる多くの人たちが心を躍らせた。

『ISS(国際宇宙ステーション)長期滞在に対応可能な日本人宇宙飛行士の候補者を新規に募集・選抜する』
JAXAは、日本の有人宇宙開発を一手に担ってきた。
NASA(アメリカ航空宇宙局)の協力を得て、スペースシャトルにこれまで、
7人の日本人宇宙飛行士を乗り組ませてきた。

応募動機は様々だ。
ただ、共通していたのは、どんなに歳を取っても、
「宇宙に行きたい」という幼いころからの夢を、あきらめきれない者たちだったことだ。

宇宙飛行士の選抜試験。
まず963人の応募者は、志願書や経歴書に加えて、健康診断などの提出が求められた。

そして、最初の書類選考と英語の筆記・ヒヤリング試験で、4分の1以下の230人に絞られた。
続いて、230人を対象に、一次試験が行われた。
さらに精細な医学検査と、心理、精神面の検査が重点的に行われた。
数学、物理、化学、生物、地学の5科目を含め、一般教養や科学の専門知識の筆記テストも行われた。
こうした試験を経て、応募者は48人まで絞り込まれた。
残った48人から、最終選抜試験に進む候補者の10人を選ぶ第2次選抜試験が、一週間かけて行われた。

応募者たちはここで初めて面接試験となった。
では一体どのような質問がなされたのか?


『あなたは宴会の幹事をしたことがありますか?』

仲間の意見を募り、それをまとめ上げる「リーダーシップ」と、人をもてなしたり、
楽しませたりするための「コミュニケーション能力」を審査するための質問だ。
就職したての社会人なら、先輩に「宴会の幹事ほど重要な仕事はない!」と口酸っぱく言われるものだが、
これは宇宙でも同じである。

宴会の幹事は、基本的に「明るく」「楽天的な」性格でないとうまくこなせない。
忘年会や新年会、歓送迎会など、重要な宴会になればなおさらだ。

宇宙飛行士の場合、世界各国の仲間たちと半年間、宇宙で共同生活を送らなければならない。
そうした中、暗くて人づきあいの悪い人間だと、周りも滅入ってしまい、
チーム全体の士気やパフォーマンスにも影響が出てしまう。

宴会で求められるのは、新しいことを率先して計画する力と、
周りを楽しませることを自らも楽しめるようなパーソナリティだ。
そして、これらは、まさに宇宙飛行士にも不可欠な資質なのである。

『宇宙飛行士選抜試験』(大鐘良一・小原健右)光文社新書


アメリカの宇宙船スペースシャトルは、この7月に30年間にわたる歴史に幕を閉じた。
今後は当分の間、有人宇宙船はロシアのソユーズのみになるという。

まさか、宇宙飛行士の面接試験に、「宴会の幹事をしたことがあるか否か」が出るとは…
しかし、宴会に限らず、パーティー、誕生会などの幹事をやってみればわかるが、多くの人を楽しませ、
喜ばせるための気遣いや、気苦労は並大抵ではない。

そして、楽しい宴会やパーティーにはサプライズがつきものだ。
どうやって、驚いてもらうか、笑ってもらうか、楽しんでもらうか、等を微に入り細に入り企画をする。

そこには、将棋の何十手先を読むような、読みや予測能力も必要だし、
誰を呼ぶか、誰と誰が合うのか合わないのか、といった対人関係の能力も必要だ。

特に、人のおもてなしは細部が大事だ。
偉大な経営者は、この細部にうるさかった。

松下幸之助翁は、わざわざ、式典会場に早めにいき、全部の椅子に座って、
見える角度と座りごこちを点検したという。

人を喜ばせるための気配りとおもてなしの心は、誰もが身につけたい大切な資質。


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