ものすさまじい。 | フーテンひぐらし

フーテンひぐらし

永遠の放課後。文化祭前夜のテンションで生きたい。なかなか大人になれない。



ヘロゥ



ご覧の通り、仕事以外はとにかく本ばかり読んでます


だいたい2~3冊並行して読んでるので
記事にしたい本はたくさん出てくるのですが
いかんせん書くのが追いつきませんね




この本は、Twitter上でいろんな方がつぶやいてたので気になってて



でもそれは「面白そう」という気になり方ではなく、
みんなの感想が「絶句」に近かったから気になったのだ


かろうじて「ものすごい」とか「重い」とかの声は聞えたけど
みんななぜこの本にすごい衝撃を受けているのかがとても気になって



昨日「ミレニアム3」の上下巻を買いに行った時に 本屋で見つけてしもた



うーむ、ショッキングなのかなあ。暗いのかなあ。
いまそういうの読む気分じゃないけど、何かスルーしたら
もったいない気がするなあ。


漫画なのでビニールカバーびっちりかかってて

パラパラめくることもできず、エイヤと買った




家帰って、「どれ、ちょっとさわりだけでも」とめくったが最後


そこからまったくやめられず、トイレに行くことも携帯みることも
飲み食いすることもせず、331ページの漫画を身じろぎもせず一気読み



読み終わったら、頭の芯がジンジンする
ボーッとしてるというのか呆然としてるというのか


「何だこれは??」


という感想しか出ない



結局わたしも、先に読んだみんなと同じような反応になった




広野ゆうなのフーテンひぐらし-仮免中


「人間仮免中」卯月妙子



まずこの卯月妙子というひとだが↓


1971年、岩手県生まれ。20歳で結婚。しかし程なく夫の会社が倒産し、
借金返済のためにホステス、ストリップ嬢、AV女優として働く。
排泄物やミミズを食べるなどの過激なAVに出演。カルト的人気を得る。
その後夫は自殺。幼少の頃から悩まされていた統合失調症が悪化し、
自傷行為、殺人欲求等の症状のため入退院を繰り返しながらも、
女優として舞台などで活動を続ける。さらに自伝的漫画『実録企画モノ』
『新家族計画』を出版し、漫画家としても活躍。(アマゾンより)



最後に作品を出版したのが2001年くらいだから
10年ぶりの新作なのだが、その10年のあいだに彼女の身に
起きていたことをまんまノンフィクションとして描いているのがこの「人間仮免中」



36歳のときに出会った25歳上のボビー(あだ名)と出会い、
危ういながらも楽しい生活をおくり、統合失調症のほうも
彼と会ったことによってずいぶんと回復がすすんでいた。
そんな中、事件が起こる。


…という彼女の日々が描かれている




最初のほうで彼女のこれまでが描かれたとこを読んでまず
「こんな苛烈な人生があるだろうか?」と愕然として


でもそれがあまりに淡々とあっけらかんと描かれてることに驚き


ボビーと出会ってからはヒヤヒヤしながらも「よかったな」とちょっとホッとし



でも後半はもう想像の範囲を超えていた




身体じゅうのエネルギーを持ってかれた感じだった


「感動した」「泣けた」という声もあるが
私はそんな生易しい単語ではとても表現できないと思った




人がここまで落ちるのかということと

(人としてとか病気としてのことではなく、世が認識する“不幸”というレッテルにおいて)


人はここまで死ねないのか、または死なないのかということと


どなたかが書いてたけど「ここまできても誰もあきらめてない」ことのあまりのすごさと


ここまで人は人を愛せるのかということと


ここまで親は子の、子は親の礎となるのかということと


そしてこの病気の凄まじさと


それを凌駕する作者の「表現したい」本能の凄まじさと
(それこそが彼女自身を悪化させてる要因の1つかもしれないことも含め)




何もかもが想像を軽く超えていて


「ここまでやっても人間だ」


「ここまでお前はできるのか」


と問いかけてくる




ここまで!?
こんなになってまで?
なぜこんなになる?


そんなことばかりがぐるぐる



そして



これが「生」だ


という作者の言葉が聞えるような気がするのだ




私たちの生は想像以上にえげつない重量がある、ということを
無理やり知らされたような そんな感じ




いま元気のない人や、精神的に弱ってる人や
人生捨てたくなってる人は読むべきではないと思う


でも逆に言うと、そういう時こそ
これを読むべきかもしれないとも思う


自分のかなしみは竜巻のように吹っ飛ぶかもしれないから




こう書くと何かうすっぺらに聞えるけど


生きてることを万々歳と思おう、ということと
自分をもっと大切に愛してやろう、ということと
自分の家族はどこまでいこうと愛しつづけよう、ということも


一生の覚悟のように胸に刻み込まれるです





人

間仮免中
人間仮免中
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卯月 妙子
イースト・ プレス