「なくそう!子どもの貧困ネットワーク」のシンポ行ってきました。 | 女子リベ  安原宏美--編集者のブログ

「なくそう!子どもの貧困ネットワーク」のシンポ行ってきました。

 昨日、「なくそう!子どもの貧困全国ネットワーク」 に行ってきました。

 会場は282席は立ち見の方もいらっしゃるくらい満席。たくさんの取材も入っていました。国会議員の秘書の方もいましたし、あと福島みずほ大臣が途中で来場。前、こういうところに福島さんがいらっしゃったときと違ったのは、ボディガードがついてたよ! 湯浅誠さんも来場していましたが、湯浅さんは自由にうろうろしていて、メディアの取材をあっちこっちで受けていらっしゃいました。

  一部は大学生、高校生も登壇、二部が貧困問題への実践報告を現場の大人の方が話すという構成でしたが、非常に興味深い報告が多く、ずっとメモとっていました。

 ・ひとりめの登壇者

 あしなが育英会の大学奨学生からの「子ども貧困対策基本法」制定への取り組み報告。要望の骨子など「政府は次世代の貧困の連鎖を断ち切るため、行動計画を策定し数値目標を掲げて、ひとり親家庭の貧困率(54.3%)を5年以内に半減、10年以内に10%未満にしてほしい」「政府は子どもの貧困の実態や対策に関する年次報告をとりまとめ公表してほしい」「すべての高校において授業料を全額免除あるいは補助してほしい」「給付型の高校・大学奨学金制度を公的資金で新設してほしい」「生活保護受給世帯において、貸与の奨学金などを収入認定し生活保護の支給額を減額しているところがあるので、こういうことがないように改善、指導してほしい」「生活保護と児童扶養手当については、就労等による収入が貧困線を越えない限り、収入の増と同時に支給額を減らさないでほしい。また減額措置を実施するケースについても3年間は支給額をすえおいてください」など。

 ちなみに、この要望骨子に対する各党の回答があしなが育英会の新聞に書かれているんですが、自民党の回答者が義家弘介と下村博文という、なにこの教育再生会議コンビ!。これが自民党の「教育」のトップでしょう?これだけで自民党だめだわ~と思った・・・。登壇した高校生のほうが義家よりはるかに勉強してるな。

 ・ふたりめの登壇者

 東京大学教養学部の学生の方。けっこう驚きの報告だと思う。東大は独自の授業料免除制度をつくったわけですが、07年に広報されて08年に適用。登壇者もそれを知って東大を目指したそうです。400万円以下の世帯は授業料が免除されるのだが、08年にその世帯数の数が前年比倍増。つまり、それまではあきらめていた家庭がたくさんあったということ。 

 デフレの世の中なんですが、私立も公立も学費はがんがんあがっています。現在年間82万円(公立)、130万円(私立)かかるわけですが、この学費があがった経緯というのが、“分数ができない大学生”だとか“東大生の親の平均収入が1000万円以上”という俗流若者論と目立つ数字の取りあげられ方のコラボなんだよね。ほんとろくでもない。

 無利子奨学生の採用率は急激に下がっています。グラフをみると2005年が約40%ですが、2009年が23%くらい。11万人が不採用。無利子貸与はほとんど増えず横ばい、有利子貸与は順調に増えています。

 2008年に奨学金の返還促進に関する有識者会議。「延滞料の高い学校名の公表」「初期延滞債権の民間委託」「滞納9ケ月で法的措置」「滞納3ケ月で個人情報期間に通報」(→ブラックリスト化)。つまり“厳罰化”が行われた。もうこれは、「奨学金」という名前がそもそも違う。ただの高利貸しと名乗ればよいかと。社会に出る前から多額の借金を抱える学生が増えているというわけである。

 ・三人めと四人めの登壇者

 熊本で私立の高校生が「授業料滞納生徒」を救おうと高校生自身が街頭に立って募金活動をやっている取り組みについて紹介。熊本は青森に続いて滞納者が多い。2009年1月末時点の私教連の調査で県下在籍数の8.2%(809人)と九州のなかでとびぬけて高いとのこと。退学者は51人と昨年の約2倍。月1万円でなんとかなるのに授業料の減免補助については、熊本は制度的にほとんど出ない。つまり世帯年収が225万円以上は出ないのでほとんど救済できない(愛知は800万円以上でも可能)。

 私立だから「金持ちだろう」と思われることも多いがそうではない。公立のすべり止めに来た生徒も多いし、景気と雇用状況が直撃されているのは公立の生徒と変わらない。都市部で育った人は、私立は金持ちが行くところと思っている人もけっこういらっしゃるかもしれないけど、これは地方によっていろいろ違うでしょうね。私が育った倉敷は公立が総合選抜(今は違うけど)で大学に行きたい生徒がほぼすべて公立を目指します。総合選抜では高校は選べない(希望は出せてほとんど希望どおりにはなるんだけど)、学力で振り分けるんで公立間格差があまり出ず、今の制度よりも私は「総合選抜」のほうがよかったと思います。受験倍率も公立間でばらけないし、人気校に集中しないというメリットもあるんですが。だってばらけると遠い高校だけひとり勝ちしちゃってたら通うの大変じゃない。そのかわり、入ってからは、岡山なら五校、倉敷なら四校で模試で何かにつけて比較されるんで先生が「国語で青陵に負けたー!!」と悔しがって、補習が行われれたりしましたけど(笑)。夏休みは実質10日間くらいしか休みがなく授業ががんがん進むし、「塾に行かなくても大学に行かせる!」という考え方の先生が多いので、倉敷や岡山の親御さんてほとんど公立志望で私立はすべり止めという人のほうが多いと思う。私立もだからそう高いといけないだろうし、というような話を大学に入って友達と話したら、こういうシステムのほうが珍しいんだなあと感じたことを思い出した。

 そして授業料滞納で卒業証書が渡せなかった校長先生のお話は胸につまる話でした。自分の高校の生徒さんが在学中からお金がなくて、夏休みも土日もバイトで家計を支えていたんですね。合宿代も校長先生がたてかえたりしてなんとかフォローしていたんだけど、事務局からは授業料が全額納入されていない生徒さんに正規の卒業証書は渡せないということで、でも卒業式ではそれがまわりにはわからないように卒業証書のホルダーの中には別の紙を容れて渡したそうです。通信制の大学にいって先生になりたかったその生徒さんの卒業後にくれたメールをがほんとに悲しかったですね。「仕事でしか、がんばっているね言われないからたくさん働かないといけない。甘えているといわれる」と。淡々と冷静にお話されていたのにその部分は言葉につまっていらっしゃいました。あきらめなきゃいけない夢のレベルが、「通信制の大学に行きたい」、だよ。ほんとさあ、うちの国、教育にお金出すべき。絶対出すべき。

 ・もうひとりの登壇者

 プログラムには載っていなかったのですが、もうひとつの「福祉の砦」といわれる「自立援助ホーム あすなろ荘」の方のお話がショックでした。自立援助ホームは虐待などの理由で家庭で生活ができない義務教育を終えた15歳から20歳までの子どもたちが、働きながら自活している施設です。22年間ホームをされてるのですが、はじめて上の学校に行きたいという子どもがお二人今いらっしゃるそうです。その22年間もされていて“はじめて”というのがまずほんとにショックだったわけですが、補助金などは1円も出ません。美容とウェディング関連の専門学校に行きたいとのこと。ひとりは1年間100万円、もうひとりが2年間で200万円かかるお子さんがいらっしゃるそうです。家庭にさまざまな問題を抱えた子ども時代を生きてきただろうにウェディング関連という選択をしたその本人はどういう若者なのだろうと思ったのですが、「今日、登壇してもらって子どもたちから話を聞いてもらいたいのですが、寮の子どもたちは全員、今日も働きに出います。ですから私が来ました」(ちなみに昨日は日曜日)とおっしゃっていました。

 あすなろ基金 郵便振替 00140-5-160461

------------

 子どもに対する社会のセーフティネットが十分でないため“働き自立する”ことを余儀なくされ、大人と同様の労働と社会的責務を果たしながら日々の生活を送っています。そんな大変な生活のなかでも自分で働いて一定の収入を得られるようになると、子どもたちには更なる目標げ芽生えてきます。

 ・高卒認定資格を取って大学にすすみたい

 ・専門学校で技術を身につけたい

 ・将来に役立つ資格を取りたい

 どんな状況下におかれている子どもたちでも「自分の将来に夢を持ち、自分自身をより向上させたい」と希望を抱く権利があり、その希望の芽を育てられる機会を保障することが、私たち大人と社会の責任であります。

------------(配られたチラシより抜粋)


 以上がⅠ部からメモ。続く~