2009-06-28 18:06:51

児童虐待はなぜ減ったか。

テーマ:ブログ

 児童ポルノの単純所持が国会でコントみたいになっているようですね。

 ついこの間、たまたま浅利慶太著の「時の光の中で」(劇団四季主宰者の戦後史)読んでいたんですが、ミュージカル「ウエストサイド物語」の日本招致のために、外貨枠が必要で、当時NHKと朝日しかなかったんたんで、どうしよう・・というところを興味深く読ませていただきました(読んだあとで検索したら、小沢一郎も同じ感想を書いてた)。田中角栄さんがおもしろい。角栄さんの采配で公演できたわけなんですけど。

 http://www.shiki.gr.jp/hikari/

 「ウエストサイド物語」って、よーく考えてみなくても、不良の内部抗争の話なわけで、サブカルですし、反対もあるわけですよ、あんな不良の物語に~~良識派キリッ!みたいな。今現在は、みょーな保守化した親父達も当時は戦ったわけで、私が今の自民党がいかんなーと思うのは、そういう部分の現実的な自民党の歴史がぜんぜん今の議員の人達に伝わってなくて、非常に軽くなってしまっているんじゃないかなあ・・と。

 政治家や実業家がたくさん出てくるある種「表現の戦後史」で、演劇やミュージカルに興味ない人こそおすすめ。小澤征爾ボイコット事件もおもしろかったよ。中曽根さんはやはり昭和天皇とベルリンオペラ来日のところにコメントしてますね。国会で変なエロ議論しているんだったら、この本ちょっと読んでみたらどうでしょう?政治に希望が持てると思うよ、議員さん「が」。

 さて、せっかく、児童ポルノの議論が出ているし。もう少し概念を広げてみると、児童への性的虐待の話ですよね。ちょうど浜井浩一先生の新刊を紹介しようと思っていたので、関連する部分を。詳しくはぜひ本を読んでください。

家族内殺人 (新書y)/浜井 浩一・編著

 この本の帯は「家族内殺人は激発していない!」なのですが、私自身も以前本を作ったときに「犯罪は増えていない!」という帯よりも、本当は『なぜ犯罪は激減したのか!』なんだけどなあと思ったことがあります。ただ、その答えとなる分析が本にあるかというと、実はないので、まあいっかと思ったのですが。

 で、この本は帯は「増えてない!」という文言なんですが、実際には「なぜ減ったのか」という分析を書いているところです。

 なぜ、減ったのか、それは「中絶の合法化」・・・。

 長期的な「犯罪減少」の理由として、よく言われるのは「経済成長」でして、それもまあもちろんそうなんですけど、「激減」ですから、「経済成長」だけでは少し弱い説明になってしまう、と。「ヤバい経済学 /スティーヴン・D・レヴィット/スティーヴン・J・ダブナー 」も出版されていたので、そういうことをおっしゃる論者もそのうち出ていらっしゃるだろう、と思っていたんですけど、今のところは日本に引きつけて話している人は、いなかったように思います。なかなか言いにくい話なのかもしれませんね。「犯罪不安社会」を出したときにも「ヤバい経済学」は出てたので、「なんで減ってるんですか?というところは書いてないですね」という批判や感想はあるかなあと、あるといいなあ、と思っていたんですが、私が記憶する限りは1名でしたかね。

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 殺人(1~5歳の幼児殺し)、嬰児殺、強制わいせつはいずれも減少していることがわかる。なかでも嬰児殺は、戦後直後の1948年をピークに50年代において、激減、その後、横ばいで推移するも、80年代初頭から現在にいたるまで、一貫して減少している。1948年以降の激減については、同年の優生保護法の施行によって、望まない嬰児殺の劇的な減少につながったと考えられている。現在はピーク時の約18分の1まで減っている。

 殺人(1~5歳の幼児殺し)と強制わいせつは1970年代に大きな山を確認できる。これは団塊ジュニアの幼児の増加によるところが大きいと考えられる。その後、80年代に減少して、90年代以降はほぼ横ばいで推移している。~第3章 「データから読み解く子殺しと児童虐待」津島昌寛(龍谷大学)

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 終戦直後の第一次ベビーブーム期において、嬰児殺が最も多く発生していた。この時期の嬰児殺に関する植松(1951)の研究によれば、近親相姦によって生まれた赤ちゃんの殺害が総数の26%にも上り、加害者のうち21%を男性が占めていた。しかし近親相姦による嬰児殺はその後、減少し、最近のほとんどの嬰児殺は女性による単独犯で行われるようになっている。

 第一次ベビーブーム時期以降、一定の条件下での中絶が合法化されたこと、出生数が減少したことなどによって、嬰児殺も減少したが、1960年代以降、第2次ベビーブーム時期には再び嬰児殺が増加傾向を示している。

 当時、マスコミは、母親たちの母性喪失によって子捨て、子殺しが増加していると報じた。これに対し、当時の新聞記事の言説を分析した田間(2001)は、マスコミは子どもの命に関わる全責任を排他的に母親のみに帰属させ、父親の無責任状態を許容しようとしていたと批判した。~第4章 嬰児殺の動向と背景を考える 近藤日出夫(千葉少年鑑別所)

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 「中絶の合法化」は、どう決まったかというと、昔読んだ本なので、あんまり覚えてないのですが、日本では戦後で食べるにも大変な時期でして、産めよ増やせよの反動で、より大変なことになっていたので、あまり議論の余地なく、国会では割合すっと決まったんじゃなかったかな。

 欧米のように戦って勝ち取った権利ってかんじじゃなかったと思いますので、今でもあんまり話題にならないというか、アメリカみたいに産婦人科が放火されるような話題になってるほうが困る気はするんですけど、知ってはおいたほうがよいような気がします。

 結局、山本さんや浜井先生などの本を読んでると、中絶と刑務所が「福祉最後の砦」ってなんだかなあと思いますが。

 全体の本の感想ですが、本のコンセプトとしては、現場の実務をよく知っている方が、研究論文ではなく、一般向けの読みものとして、わかりやすく書かれている本ということですが、現場の実例などは、個人的な感想かもしれませんが、書き方の踏み込みが“おそるおそる”“あたりさわりなく書きたい”という印象を受けました。もちろん、こういった本をお書きになる方は、プライバシーには配慮しないといけないのですが、新聞記事を中心の分析だと、「せっかく現場の方が書かれているのに・・・もったいないかなあ」と思う部分もありました。でもこれ、きっと草薙厚子さんの事件などで、現場が委縮している部分が出てるんじゃないかなあ~。


コメント

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1 ■無題

>当時の新聞記事の言説を分析した田聞(2001)

のところ、「田間」が正しいのでは?

2 ■hiyokoさま

ありがとうございます。
修正いたしました。

3 ■無題

もともとこの問題は「児童の性的虐待」の話しだったんですが、「男の性」が大嫌いな女性議員が絡むとどうしても「ポルノ」規制の話になってしまうというので、民主案では「児童性行為等姿態描写物」と名称変更して、そういう連中を完全に切り捨てようとしているわけなんですよね。

(「児童性行為等姿態描写物」には只の水着は入らないのはもちろんのこと、架空のアニメなども含まないと民主の千葉景子が明言)

4 ■望まれない子供という扱いの軽さ

>今現在は、みょーな保守化した親父達も当時は戦ったわけで

浅利慶太なんてその代表のような人物ではありませんか?
中曽根康弘と組んだあたりから「今の若い者けしからん」調に変わっていって、教育改革国民会議に至っては曾野綾子などと一緒に、若者を強制収容所に叩き込んで鍛え直す、などといった電波思想にかぶれたあたりでは完全に見放しましたが。

児童虐待では知られているようであまり知られていない、寿産院事件。被告となった2人は「どうせ望まれない子供だろう」とうそぶいたというのは、当時の社会情勢では説得力を持ったのかも知れませんね。
100人以上の子供を殺して、懲役2年という刑事責任の軽さがそんな実態をあらわしていると感じます。

5 ■通りすがり様

こんにちは。
>もともとこの問題は「児童の性的虐待」の話しだったんですが、

まあそうですよね。
あの国会議論を見ていると、子どもが救えるようには思えないですね。不思議過ぎで。児童虐待事態は減っていると思いますが、相談件数は増えているので、現場が対応できる余裕がないと思います。児童福祉司ひとりで120人担当で、それ80人に減らしてくれみたいな要望出してる自治体もある、と聞いたことがあります。80人でも多いよ、クラスの人数より多いじゃない、それありえねーと思うんですけど。この議論聞いてると、現場で機能するとも思えないし、莫大な予算がいるわけじゃないですか、非現実的以前だと思います。まずは、せめてクラスの人数くらいの担当にしたほうがよいかと。

6 ■組合員A様

こんにちはー。

>浅利慶太なんてその代表のような人物ではありませんか?
そうですね。教育論語りだすと、電波に変貌する人は多いですねー。この人のやったことをみると、ふがいない若者に文句ひとつも言いたくなるだろうとも思うのですが、教育論にしなくても自分にやったことを具体的にきちんと語っているだけのほうが教育になるんじゃないかと思います。「歴史から若者が断絶されてる」と言われてますけど、断絶されている(というか忘れているのは)、上の世代がそうだからなんじゃないかなあと、感じます。

>寿産院事件。
紹介した本にも載ってましたね。少し話ずれますが、この前の平塚八平衛のドラマ高視聴率だったみたいですね。ドラマとしてはおもしろかったですけど(自白偏重の捜査はよかったねーと言いたいんか朝日は!という突っ込みながら見れるという意味でも)、帝銀事件とかなんでみんなでよくわからない飲みもの飲んでんだよ、という意味では当時の社会状況がありますからねー。3億円事件も昭和最大の間抜け事件かもしれないですけど「爆発する!」っていうのにリアリティがあるんですよね。

7 ■浜井教授SAPIO降臨「日本人でよかった」

タイトルからして
犯罪「急増」「凶悪化」「低年齢化」はマスコミの嘘 日本は今も世界に誇れる「安全な国」だ
です(この特集記事で同時に寄稿しているのが日下公人だったりするので何ですがw)。内容としては、これまで浜井教授のものされているものを読んでいる方にとっては目新しいものはないかと思いますが、外国人犯罪についても外国人犯罪の恐怖を煽ってきたSAPIOで心配するほどではないと言い切ったその勇気に乾杯!

今回の新書ではどうしても編著ということで、論調は穏やかなものにせざるをえなかったのではないかと私も思います。

8 ■遊鬱様

こんにちはー。

SAPIOの編集が読んでいるという、というのはおもしろいですよね(笑) よしりんもなんだかぐるっと回って大塚さんみたいになっているようですし。

本については「中絶の合法化」というのは、犯罪学者の間ではわりと常識だった部分があるみたいで、アメリカでは大論争になる話題なので、ヤバい経済学はよく書いたなと思います。この本でもわりとあっさりめに書かれているのですが、重要なのは、矯正保護関係者が書いているということで、あんまり言いたくないことだと思います。下手すると、社会保障の議論を後退させる誤解にもつながるし、あえて曲解する人もいるかもしれないので、ここはもう少し詳しく書いていったほうがよかったのではないかなあと思いました。雑誌等で浜井先生がフォローの論考などがあることを期待しております。

9 ■大事

>中絶と刑務所が「福祉最後の砦」ってなんだかなあ

ま、それが現実。その砦を両方とも崩したら偉いことになりますわ

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