福祉ネットワーク・選 シリーズ 子どものセーフティーネット(山野良一) | 女子リベ  安原宏美--編集者のブログ

福祉ネットワーク・選 シリーズ 子どものセーフティーネット(山野良一)

 NHK教育で子どもの最貧国・日本 (光文社新書)」  の山野良一さんが出演されていたので、録画して見させていただきました。
 「自立を強いられる子どもたち」ということを焦点化したレポートで、公的な機関である児童養護施設にいることができず、民間の自立援助ホームで働きながら暮らさざる得ない子どもに焦点をあてた内容でした。このことを知っている国会議員や知識人がどれくらいいるのだろうかと思いながら録画を巻き戻してメモしながら拝見させていただきました。
 「児童養護施設」は公的機関で住居や生活費は無料ですが、「自立援助ホーム」は民間が経営していてお金がかかります。山野さんは自立援助ホームを「児童の社会的養護の最後の砦」と話していらっしゃいましたが、児童養護施設は高校に通っている子どもは入ることができますが、高校に入ることができない子どもは入ることができません。その受け皿が「自立援助ホーム」になるということでしょう。
 番組では法律や保護の網からこぼれおちた子どもを救いあげているホームで暮らす子どものことを追いかけていました。番組では16歳の男の子の様子を映し出していました。
 山野さんが、自立援助ホームの全国調査から、そこにいる子どもたちがいったいどういう経験をしてきたかをこう解説されていました。
 「50%が虐待、60%が離婚、30%が親が失踪、もしくは死別、25%がホームレス」。
 まさにホームレス中学生・・・。
 映像の途中で自立援助ホームの1枚の約束書きのようなものがうつっていたのですが、興味深いものだったので、映像を止めて読みました。
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●仕事を見つけて毎日働く
 1 遅くても朝10時から始る仕事を探す
 2 週5日以上の出勤で1日6時間以上フルタイムで働く
 3 午後出勤や不規則なローテーション勤務の仕事を認めない
●給料日に給与明細を見せ、清算する
 1 あすなら荘寮費3万円を納める。寮費には朝夕の食費、水高熱費、日用品、医薬品、新聞代などが含まれる(日割1000円)
 2 あすなろ荘を出るときのために5万円以上を自立積立貯金をする
 3 国保、携帯、PHS利用料金等があれば、請求書と現金を預ける
 4 残りのお金の運用について相談する
 
などなど。
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 この下にも、ほかにも書いてましたが、読みずらかったので、割愛しますが・・・。「民間がやってる」となると、すわ「貧困ビジネス」と短絡的結びついてしまう人もいるようですが、日割り1000円ですからねえ。ここまでのこと親でもやってくれないよなあーと思いました。
 先日、老人ホームの火事についてもNHKが番組にしてましたが、「無届け」の裏にある構造的な問題にもちゃんと取材していてよかったです。最長の人で特養50年待ちという数字を聞いて、取材者の「そりゃあ・・・死んじゃいますよねえー」というつぶやきも出てまして、取材してたら悲惨さと表裏の滑稽さというところまで、感じちゃいますよね。「団塊だけが得をしてる!!」と怒りたい気持ちもわかるのですが、特養の不足については、団塊用の施策でしょうからね、すでに罠は完成してて、かわいそうにもなります。勇ましい話だけをしているおじちゃんやおばちゃんたちはいつ気がつくんだろうなあ。私の世代までひっぱられるとかなわんので。だいたい介護保険導入のときにはフェミニストは「家庭からの介護の解放」に賛同してたのに、事態はまったく逆ですから、おひとり様うんぬん言っててよいんかいと思いますけど。

 山野さんが、番組中でも、日本は子どもの貧困の統計すらなく、毎年、子どもの貧困率が上がったとか、下がったという話題にもならないということを言ってましたが、私は「貧困」が話題にならなかったということは、貧困解消に現実的に従事する方たちの話も知られていないんだろうなと思いました。だから、山野さんのような方はいろいろ面倒もあるかと思いますが、メディアにたまには出てください。テレビうつりすごいよかったですよー。話も聞きやすかったです。

 

 保育園が「防波堤」で、自立援助ホームや刑務所が「最後の砦」だけになっているというのはおかしいのではないかと思います。「最後の砦」なのに、ラスボスが出てくるどころか、吹けば飛びそうなわらの家。「公の精神」を心配してもしょうがないんじゃないかなと思います。民間の「公の精神」に頼りすぎているのが、福祉の最後の砦の姿なんじゃないでしょうか。保護司とか民生委員とかも頼りすぎなんじゃないかと思います。