ツバルの実情とマスメディアの無視? | 女子リベ  安原宏美--編集者のブログ

ツバルの実情とマスメディアの無視?

 まずはオーストラリアのニュースから。

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環境活動家4人、発電所煙突に立てこもる 30時間過ごして中止決定 2008年7月12日


 7月11日午前5時半頃、QLD州ブリスベン西方にあるスワンバンク石炭火力発電所に13人のグリーンピース活動家が侵入、うち4人が高さ140mの煙突によじ登った。9人は駆けつけた警察官に逮捕されたが、男性3人、女性1人は煙突頂上で立てこもりを続け、夜も寒風吹きすさぶ頂上で過ごした。12日になって、男性2人がアブセーリングで煙突の壁に「go solar(太陽発電に切り替えよう)」と大書した。活動家の一人は、「できる限り頂上に立てこもる」と語り、行動の動機を、「QLD州は、世界でももっとも太陽エネルギーに恵まれているのに、それを利用して再生可能エネルギー産業育成を図ろうとしていない。だから、QLD州を標的にして行動を起こした」と語り、「適切な政策を立てれば、QLD州は、ゼロ排出テクノロジーを開発し、世界に輸出することもできる」として、アンナ・ブライ州首相に、石炭産業の鎖を打ち壊し、再生可能エネルギーをサポートするよう求めた。また、スワンバンク火力発電所は築37年で、年間200万トンの二酸化炭素を排出する。これは自動車30万台の1年間の排気ガスに匹敵するとしている。
 グリーンピースの行動に対し、QLD州政府のジェフ・ウィルソン鉱山・エネルギー担当大臣は、「煙突に登るというのは行き過ぎで、無責任な行為だ」と非難。警察も現場に待機している。しかし、12日午後、立てこもっていた4人が地上に降りることを決定したと報道されている。(AAP)

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 もう、落ちたらどうするの?しかし、簡単に入れるものなんだろうか・・。

  さて、ツバルってほんとうはどうなんだろうと思ってネット上を徘徊していたら、興味深いページを見つけました。ツバルは「温暖化で海に沈む」と煽りまくった取材のコーディネーターをされた、現地に住んでいた方のページです。写真も掲載されています。


「天国に一番近い島 ツバルにて」
http://monden.daa.jp/01tuvalu/02prefix2.html
-海に沈むより先に-
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 海面上昇による現象というよりはー。もっと直接的な、この島に対する人災であることを知りました。
 第2次世界大戦中、アメリカ進駐軍がこの島の土地の大改造をしたのです。
 脆弱なサンゴの島の中心にあった海水湖・沼・プラカ芋畑を埋め立て、滑走路をつくるために、島のあちこちから土を採掘してボコボコにしました。

 人為的な改造は海岸線でもなされました。

 首都の西側(ラグーン側)は、政府庁舎や国営ホテルその他政府用敷地の拡充のため、広範囲に埋め立て拡張されています。 
 また、道路建設用の骨材を採るために、このラグーン側のサンゴ礁を掘削したので、海底に穴が開いている状態で、その穴に海岸線の砂が流れ込み、侵食が進んでいます。

 そんな侵食状態の海岸線の、倒壊したココナツの木をブラウン管で流して、「海面上昇でこのようにココナツが倒れています。」とだけしか言わないアナウンスは、かなり正確な報道から離れています。
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 現地に行って、きちんと取材をして裏とればわかることなのに、なぜしないんでしょうかねっていうか行った人はわかってるでしょう。コーディネーターさんと話するよね。新聞が売れない、雑誌が売れない、あげくの果てにはお決まりの「最近の若者は萌え萌えアニメばかりみて文字を読まなくなった」とお嘆きの声が私のまわりのマスメディアの仕事に従事している人たちの中にもあるんですが、「報道」がしなくちゃいけない、ウソを見抜く力や真実を追う執念がなくなっているんじゃないでしょうか。こと「温暖化報道」に関しては、行政の広報や、IPCCの報告よりも煽っているように思います。

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 この2004年の文では、「ツバルの人たちは、自給自足の暮らしをしているのに、私たち先進国が原因で沈むのだ」と書きました。

 ところが実際に、一緒に暮らしてみると。

 多くのツバル人の若者が、先進国と同じ物質文明を求めて、出身島での自給自足の暮らしを捨て、ドイツ貨物船の乗組員や首都フナフチまたはニュージーランドでの貨幣経済の都市生活を選んでいます。友達になった多くの20代のツバル青年たちは言いました。「プラカ芋や漁なんて、時代遅れだ。もう要らない。日本のようにコンピューターや工業に強くなって、進んだ国にしたいんだ。」「生まれた島より、フナフチ(首都)がいい。フナフチより、ニュージーランドがいい。たくさんの物があるから。豊かな暮らしができるから。」

 そのようにしてツバル国中の島から首都フナフチに大勢が移り住むため、19世紀末に250人であったフナフチの人口は今ではツバル全人口の半分の約5000人に膨れ上がっています。

 約1.4km四方の四角の中に5000人、という人口密度です。フナフチ環礁の水質汚濁ひいてはサンゴの白化現象。そして真水枯渇の原因は、すべて異常気象と海面上昇のせいだと報道されてきました。しかし、この人口が排出する汚水、そしてこの人口が吸い尽くすフナフチの真水。異常なまでの人口の激増が、環境に影響を及ぼさないわけはないのです。

 文明と環境の問題を正確に観察しようとするならば。

 人類を単純に「被害者」と「加害者」には、分けられません。

 「純朴な自給自足の民の島が、アメリカや日本の先進国文明のために海に沈む。」

 そういう勧善懲悪的なとらえ方が陳腐であることがー。
 どんどん変化を求めるツバル人たちと暮らしを共にしていると、痛いほど分かってきました。
 -これこそが、いつもツバル離島での私の煩悶でした。

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 「温暖化」っていうより、まずは「都市化」の問題ではないのですかね。
「かわいそうなツバル民」という物語を作りたいメディアや「温暖化」のダシに使いたい研究者は困る話でしょう。その住民自らが、「環境破壊」をしている部分もあるという話は。でもさ、今の先進国はどこも通ってきた問題なのですね。

 解決案はいろいろとあると思うのですが。掲載されてる「ゴミ処理場」がない現地の写真を見れば、優先される問題は一目瞭然。煙突のぼっている暇があれば、ゴミ処理場建設の運動でもしたほうがいいんじゃないかしら?


追記)

"現地に行って、きちんと取材をして裏とればわかること" ごもっとも。で、自分では裏をとったのかな/リンク先の紹介だけでいいのに、マスコミ、しかも同業の罵倒なんか混ぜるからブーメランになるんじゃないかなぁ

 はてぶにコメントついてますが、あのさあ、このリンク先の方が書いているのは、大金かけてロケきてるのに、「なぜ報道してくれないんだろう」って怒りなんじゃないかな? 「リンク先の紹介だけでいいのに」って書いてるなら、ちゃんと読んだらどう? 申し訳ないけど、私のようなフリーランスじゃ無理ですよ。能力的にも金銭的にも無理です。このブログはテレビ局の方や、出版社の方も見てるから、気骨のある人にやっていただきたいですね。「沈む~沈む~」とか恐怖を煽ってるだけじゃないよい番組できるんじゃないかと思うけど。

 一応、ほかのサイトも調べてみました 

「ツバル写真集・地球温暖化を考える」様

 http://ncc1701d.bufsiz.jp/42/42.html

 「あまり触れられることがありませんが、ツバルにおける第2次大戦の影響を考えてみました。この分野は今後の詳しい調査が望まれます。」

 「戦争遺物」がたくさんあるんですねえ・・・。そうですよねえ。なんか、私もマスコミのはしくれのはしくれですが、なんだか申し訳なくなってきます。こういう写真集どこか出せばいいのに。


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 さて、楽しく住まわせていただいたオーストラリアのへんなニュースばっかり言いたくないので、「へえ、おもしろいな」と思った以下のニュースも。「ラッシュ緩和」って意味だとおもしろいな。日本の「温暖化」政策まわりだと、なんか「厳罰化」と「モラル強化」(「意識改革」でもいいですよ)だけを国民に押し付けてるだけな気がするなあ。「削減!削減!削減!」みたいな。こういう「自治体はこういう努力しますから、どうでしょう?」みたいなかんじがない。

 「低炭素社会」を「なんとなくいいなあー」的に支持している人たちも、やって欲しいことは「都市化対策」なんじゃないのかなあ、と思う次第。ずっと読んでくださってる方はわかると思うのですが、私は「ヒートアイランド」緩和って別に適宜やればいいと思います、熱いし(笑)。QOL向上してほしいので。PASMOも行き渡ってるみたいだし、無料じゃなくても、多少安くしてポイントで返すみたいなシステムは作れるんじゃないだろうか、と。

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メルボルンの早朝電車フリー案、NSW州でも導入なるか

 【シドニー12日AAP】VIC州政府は先週、月曜から金曜の午前7時までに目的地に到着するように電車を利用した乗客に対しその利用料を無料にする案を本格化させると発表したが、これを受けてNSW州のジョーン・ワトキンズ交通相は12日、「シドニーでも同様の計画を検討中である」と述べた。
 VIC州におけるこの計画は、メルボルンの2路線を対象にして昨年10月より試行された。その結果、朝の通勤ラッシュ緩和につながったものの、乗客が帰宅のために電車を利用するのがほぼ同時刻であるため午後の深刻なラッシュの原因にもなっている。計画は3月31日より正式に開始される。

 ワトキンス交通相のコメントは、2007年の公共交通機関の切符販売数が前年より4.3%増加したことを発表した後に出されたもので、交通相はこの増加要因について、ガソリン代の上昇や人々の環境に対する意識の向上、電車が時刻表通りに運行するよう改善されたことを挙げた。

 NSW州野党党首のバリー・オーファレル氏はワトキンス交通相のコメントに対し「政府がバス・電車路線延長に真剣に取り組まない限り、シドニーでは同様の計画も正常に機能しないであろう」と述べた。
(AAP)

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 ちなみに「ラッシュ」いうても、日本に比べれば大したことないんですけどね。