「若者論」を疑え! | 女子リベ  安原宏美--編集者のブログ

「若者論」を疑え!


 後藤和智さんの新書「若者論を疑え!」が発売になりました。とにもかくにもおめでとうございます。私のブログを読んでくださっている方は後藤さんのブログもお読みの方も多いでしょうし、たこやきさんが書評を丁寧にまとめてくださっているので、ここをお読みくださるのが全体像がよくわかると思います。
http://takotakotakoyaki.blog52.fc2.com/blog-entry-486.html


若者論を疑え! (宝島社新書 265) (宝島社新書 (265))/後藤和智

 では何を書こうかなあと・・・考えて、巻頭の本田由紀先生の「疑問」から紹介してみようかなあと思いました。まさにここが後藤さんのオリジナルな部分でしょうし。赤木さんのことも書いてるみたいだし。
-----------------
本田 彼にとっての「戦争」の意味が、正直なところよくわからなくて・・・。「年収300万円もらって奥さんもらえれば、別に戦争なんか希望しない」って彼はどこかで言ったらしいので、そうならば、別にいいんだけれど。例えば萱野稔人(津田塾大学准教授)さんは、年収300万円とか、奥さんもらえるとか、それこそチョボチョボの生活が成り立つかどうかというところでは、若者の承認問題は解決されないと言ってるよね。アイデンティティー、誇り、尊厳、自分の生きる意味みたいなものを、もっと強烈に求めているのであって、それはカツカツの生活とか、何とか子どもが育てられるとか、そういうところではどうにもならない。だからナショナリズムに走るんだと、萱野さんは言っています。私はそれはどこまで若者に当てはまるのか、まだ確かめられないところがあります。
-----------------
 156頁以下に後藤さんが平成17年の総選挙について「世代別でもっとも自民党に投票した割合が多いのは60代です」論証されてますが、そもそも若者世代の投票率を割り引いても(いばれる話ではないですけど)、なんで「若者が保守化したから自民党が勝った」みたいな一方的なまちがった解釈を押し付けられねばならないのか?ということは一理も二理もあると思います。
 そして、今はどうなっているのか。
 当時の根拠で「若者が右傾化」というなら同様にして、今の下の記事を見れば「若者が左傾化」といえるかもしれません。
-----------------------
---雇用格差追及で党員拡大 共産、支持率も上昇

 共産党が「雇用格差」追及を前面に出し若者層の支持を拡大、新規党員を増やしている。 同党によると、昨年11月から2月までの入党者は3000人超。追い風を意識し、従来は 開催しなかった県庁所在地以外でも志位和夫委員長らの演説会を開いている。

 政党支持率も今月4、5両日実施の共同通信の世論調査で4・1%と、前回3月より一挙に3・0ポイント増。30代男性で11・0%、20代女性で9・4%と、これまでにない 高い支持率となった。

 追い風を強めたのは2月の衆院予算委員会での志位氏の質問。キヤノンの「偽装請負」など 雇用格差問題に絞って福田康夫首相を追及し、インターネットの掲示板で話題になった。

 市田忠義書記局長は「自民、民主両党の大連立騒動を見せつけられた国民が、 まともなことを言っているのは共産党だと思い始めたのではないか」と指摘する一方、 次期衆院選での議席増については「そんなに甘くはない」と慎重な見方を示している。

東京新聞(2008年4月19日 16時31分)
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2008041901000485.html
http://www.kahoku.co.jp/news/2008/04/2008041901000485.htm
-----------------------
 ネット上で志位さんの国会質問はすごく話題になってました。
 この支持は志位さんの質問が「思想的」にいうよりも、論理的でまともで、きちんと根拠のあるものであること、さらに「実名批判」だったことが理由でしょう?さらにほんとうに「いっぱいいっぱい」の若者が見たからなのではないでしょうか。もちろん入党までしなくても、納得できたという若者も多かったのではないでしょうか。私は若者ではないですし、共産党支持者でもないですが、納得できましたよ。
 そりゃまあ、萱野さん曰くの「ナショナリズム」に走る若者もいるんだろうし、のんびり、まったりの生活に物足りない若者もいるんでしょうが、だからといって「若者が保守化」じゃないと思うんですよね。キャッチ的に私が「左傾化する若者」と書いてるのとあんまり変わらないと思います。「保守化してる若者について」「がっつりとした生き方がしたい若者について」って限定してほしいなあと思います。
 私自身は、そもそもは生活情報系の編集なので、2000年前後からの、「まったり」したカフェ系のコンテンツや、リサイクル家具のインテリアや、北欧ネタや、日本の絵柄もかわいいーってかんじで楽しむ着物ネタとか、蚤の市めぐりでしか手に入らないようなシャビーな雑貨もので企画を創ってたほうの人間なので、それって、なんで作ってたかというと、80年代的な金のかかる「ライフスタイル」って、物理的に「お金がない」っていう人が増えたのが一番大きい理由だと思います。付け加えるとすると、「目指せ欧米」的なコンテンツに飽きた(それは日本でも同レベルのものがあるんで別にいいやってかんじと、単純に等価値で差異化してるだけ)とかそんなもんだと思うんだけどね。