ダーウィン展に行ってきました。 | 女子リベ  安原宏美--編集者のブログ

ダーウィン展に行ってきました。

 ここのところ、すごく忙しくて、更新、コメント返信ともできずにすいませんでした。
 やっと落ち着いたのでぼちぼち再開致します。


 というわけで、「ダーウィン展」に行ってきました。
http://darwin2008.jp/

 ダーウィンの一生とそのキャラクター、その研究経過が楽しく並べられていて(ゾウガメもカエルもいたよ!)すごくおもしろかった。

 世界に影響を与えた思想家と一般的にいわれるときは、ニーチェとかマルクスとか孔子とかなのかなあと思うんだけど、一番すごいのはダーウィンではないかなあと思いました。ニーチェは「神は死んだ」といったけど、実際殺したのはダーウィンだし、「超人」とか言い出したのは、ダーウィンの影響ってあるんかなあと思ったりしました。マルクスは『種の起源』をもらったときにこう賛辞を送っています。「政治経済学という重要で重いテーマについてもっと理解を深めることで、もっと御著書をいただくふさわしい人間になりたいものです」。しかし、エンゲルスへの手紙では、「人間以外にマルサスの理論を適用するなよ、ぶつぶつ」みたいなことをいっていて、ちょっと可愛かった。マルクスでさえも、人間は特別な存在だと思いたかったのかなあ。
 ダーウィンにとってみれば、ワニも猿も人間も上下はないですもんね。自分の子供でさえ、観察してワニの子供と同じことしてるとか書いてますね。

 ダーウィンがすごいのはビーグル号の探検だけで終わらなかったということなんですね。ビーグル号探検だけだったら、「わくわく動物ランド」なのかも(笑)(それはそれでおもしろいんだけどね)。それだけじゃなくてグランドセオリーを説明しきったところがすごい。すさまじい数の証拠を集めて、探検から20年たったあとに「種の起源」を発表しています。つまり、「進化論」のような“仮説”をもっていたのは、ダーウィンだけではなかったのですが、きれいにきっちり説明するためには(宗教観が強烈にあったところにそれを真っ向から否定するわけで)、膨大な証拠が必要だったのです。
 ミミズの研究もそうなのですが、ミミズが土を掘り返してますよ、だけじゃ終わらない。ミミズの研究は40年やってるのですが、そのミミズたちが地球の景観を変えていくことを証明するわけです。それを裏庭に石を置いてそれをえんえんと眺めて記録します。生物の進化のメカニズムの解明だけではなく、長時間の地球史のスケールを視野に入れていたことがわかります。聖書によれば、地球の歴史ってたった6000年になってしまいますもんね。「ノアの方舟」的な麗しい物語にミミズやフィンチという武器ですからね、なんかもう楽しいですわね。ちょっと話がずれますが、これを見ながら、昔のたたみをひっくり返して残留農薬を調べた中西先生もすごいなあと思いました。


 ぜひ子どもたちにも見てもらいたい展覧会だなあと思いました。仮説→実証→理論、その理論が研究の早道と手がかりになり、さらに現代になっても新たな証拠が出てくることでその理論が強化されるという科学研究の基本がよくわかります。
 ダーウィン自身も理論から、新たな生物の発見を予測しています。それはマダカスカルの長い管を持つ蘭の花をみて、ダーウィンは「マダガスカルには信じられないくらい長い舌を持つ昆虫がいる」といっています。しかし昆虫学者は当時は信じなかったみたいですね。ダーウィンの死後40年たってから、見つかります。それは巨大なスズメガ。写真も展示されていたのですが、こんな生物がいるんかというほんとに信じられないくらい長い。「キサントン・モーガニ・プレディクター」命名されたその蛾の名前の由来はダーウィンの「予測」(プリディクション)に敬意を表したものだそうです。
 研究成果とは関係ないかもしれませんが、ダーウィンのキャラクターもわかる展示もおもしろかったですよ。ダーウィンはケンブリッジ大学の学生時代に「人類にとっての未知」の動物を食べる同好会を結成してました。ガラパゴスでイグアナを食べない手はないと「このトガゲは白身で・・・、調理するとおいしく食べられる」と結論。さらにアルマジロも“朝食”にしてしまっております。「ダーウィンはその行動をみて、アルマジロが大好きになった。しかし、その肉のおいしさにも魅力を感じていた。----その朝、ぼくらはアルマジロを捕まえました。甲羅つきのまま丸焼きにすると、ものすごくおいしいのです。しかし腹ペコの大の男二人の朝食と夕食に十分な量とは言えません----」、レアというダチョウのような鳥を食べちゃったあとに、これはもしかして、探していた小型タイプ?やばーいってかんじで食べ残しを標本に残したり、とかなりの食いしんぼうですね。 

 あと、結婚に際しての結婚についてのメリット、デメリットを書いたリストも展示してたのですが、それも笑えました。


 最後に「社会的ダーウイニズム」とか「インテリジェントデザイン」など、「日本では信じられないことですが」と前置きして、アメリカで問題になっている教科書の進化論教育のことも丁寧に説明してますので、ぜひ見てみてください。


 「I think」からはじまるダーウィンが書いている、世界初の種の樹形図のメモがTシャツになって売られていますが、かっこいいので買ってきました。あと展覧会で販売している特別編集本は安くて内容も濃くわかりやすく全体像がよくわかりますのでオススメです。