「福祉施設化」進む刑務所 龍谷大・浜井教授に聞く | 女子リベ  安原宏美--編集者のブログ

「福祉施設化」進む刑務所 龍谷大・浜井教授に聞く

 浜井浩一先生の記事が神戸新聞に掲載されていたのでご紹介します。
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http://www.kobe-np.co.jp/news/shakai/0000757954.shtml  

 なぜ、高齢受刑者が急増しているのか。元法務省職員で、横浜刑務所首席処遇統括官などを歴任した、龍谷大矯正保護研究センターの浜井浩一教授(47)に聞いた。

 -受刑者が高齢化している

 身体疾患や認知症とみられる症状があるなど、まともに服役できる受刑者が少ないのに驚いた。集団行動で成り立つ刑務所内での高齢化は深刻だ。

 -初犯と犯罪を繰り返す累犯の二分化が進んでいる

 初犯の受刑者には、社会で頑張って疲れ果てた人たちが多い。働けない、食べていけない、どうしようもない-と。累犯の受刑者は、何度も失敗して受刑生活を経験し、あきらめの早い人が多い。

 -満期出所した高齢受刑者の再入所率が高い

 刑務所の現場では「追い出されたり、食べるものがなかったりという心配がない」という声が聞かれた。社会に居場所がない高齢受刑者にとって、刑務所は最後のよりどころになっていると感じた。

 -それで、服役を繰り返す

 累犯の高齢受刑者には、社会に居場所がないため電車にひたすら乗り続ける無賃乗車や無銭飲食で捕まり、出所から一週間もたたずに戻ってくるパターンが多い。

 -結果、刑務所が福祉施設化している

 ほかに行くところがないのだから、仮出所率は下がる。厳罰化の流れで無期刑の終身刑化が進み、刑務所はさらに福祉施設化するだろう。だが、外に受け皿がない現状ではやむを得ないのかもしれない。

 -刑務所側の対策は

 「高齢で病気のある受刑者をみる刑務官は五-十倍大変」と言われている。これまで職員増員などの問題は(経費の面から)財務省の理解が得られずタブー視されてきたこともあり、対策は進んでいない。

 -高齢受刑者急増の背景に何があるのか

 社会全体が無駄を嫌い、「迷惑な人は出て行ってほしい」と願っている。生活に困る高齢者が罪を犯すという問題が根底にあり、高齢受刑者の増加は格差社会が直撃していると言えるだろう。
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 橋下弁護士が府知事選に出るんだってね、懲戒請求を煽りながら、自分では懲戒請求を「時間と労力を費やすのを避けた」御仁だそうな。
 安田弁護士に対して、光市の事件を死刑反対運動に利用していると非難する声も大きい。「大弁護団」っていう状況にあることだけで、まことに空気の読めてないなと私も正直思う。あの被告人をかばう気もない。
でも犯罪被害者運動はそんなふうに、“あっちに利用され”、“こっちに利用され”といわれ、結果的に「不安と俗情を煽り」、「厳罰化とセキュリティ化」を推し進め、社会内福祉を後退させ、刑務所内福祉を向上させるためのものなのでしょうか(この流れは「犯罪不安社会 をぜひ読んでください)。
私は「犯罪」被害者家族ではないが、まったく落ち度のない事故の被害者の家族だった当事者としても意味がないと思う。そりゃね、今だって、許せるか許せないかで問われれば、「許せない」というしかないよ。でも、被害者が生き残っている被害者家族にとって、なにかが起きたときに一番必要な手当ては「報復」ではない(ICUで自分の家族が生死の境をさまよっているときや、運良くを生死の境を脱して介護してるときに、はっきりいって加害者のことなどはどうでもよいし、思い出したくもないし、ただただ必死なだけ)。必要なのは適切な医療、適切な人的なフォロー、仕事を休んで介護をしても生活が脅かされない当座のお金である。だからこそ社会内福祉を後退させてはならないと切実に思うのである(それが結果的に加害者のためにもなろうともね)。
 江川紹子さんが「光市事件」をめぐる懲戒請求まわりをまとめていらっしゃった。これがジャーナリストの態度だと思う。ぜひ読んでいただきたいと思います。

http://www.egawashoko.com/c006/000235.html