必読の書であります(→エルローさん風) | 女子リベ  安原宏美--編集者のブログ

必読の書であります(→エルローさん風)

 ネット上で犯罪を語るならば、知らない人は即バカと言われる「少年犯罪データベース 」さんの本が出ました。「犯罪不安社会 」でも浜井先生が締めにもってきたサイトの御著書を私が紹介しないわけにはいきますまい。

 戦前の少年犯罪/管賀 江留郎

 発刊の折にはご丁寧に連絡いただきありがとうございました。「エルローと呼んでください 」、とのことですので、遠慮なく呼ばせていただきました。失礼いたしました。
 戦前パラダイス論を語る方たちはぜひ熟読していただき、心から懐かしがっていただきたいと思います。
 私は特に「ニート頂上決戦」と「荒木大将 VS 女学生」と「旧制高校生はゆとり世代」は笑い死ぬかと思いました。歴史知っている人ほどおもしろいのではないでしょうか。中曽根さん、ナベツネさんは若いころから確かに“すばらしい政治家”です。

 ご本人はデータだけの本をご所望されてたとのことですが、エルローさんの文章あったほうがいいですよ。おもしろいもん!


 ご紹介ついでに、せっかくですので、私の手元にある大正時代の雑誌『変態心理』から、「心の闇的」犯罪、自殺、虐待、心中などなどをご紹介します。これは『変態心理』に連載されていたもので、受持記者が気になったその手の事件をメモしている日記です。以下たったの1ケ月分でございますから、そこのところお間違いなきよう、よろしくお願い申し上げます。

 昔の言葉は簡単にしております。実際は被疑者、被害者、少年でも実名発表です。順番と見出しは原文ママでございます。

----大正8年 2月分----
●警察署内で情婦を刺殺する
 三重県の○○という男、大正6年6月10日、名古屋監獄を出獄した翌日、仲間のひとりとともに数箇所で強窃盗を働き、内縁の妻○○と敦賀町に入り込み、徘徊中浮浪罪により拘禁中、余罪が発覚した。
 監獄に入れられた際にその妻○○は他人と情交を結んで俺を忘れたと思い込み、警察の許しを得て、妻に面会した際、その内情を試そうと、署内の薄暗い廊下で妻に対して怪しからぬ振る舞いに出ようとしたが、情けないことに拒絶されたので嫉妬憤怒に耐えられず、警察巡査の隙をうかがって、剣場にかけてあった巡査の剣をとって妻を刺殺。
 これは昨年9月17日のことで、そのあと福井分監への護送の途中、捕縄を切って逃走したが三重県下にとらわれ発覚した。

 署内でエッチしようとしたところ、妻に拒まれたので殺して逃げとったのが捕まったという事件です。警察署内の風紀も乱れておったということでしょうか。

●なめくじ、みみずを食う少年
 四谷の尋常小学校○○○○(10歳)という少年がある。父は○○○○といい警察の睨まれもの。
名をアン公。母○○は女人夫をしていたが、昨年横浜に出稼ぎ中死んでしまった。こうして、○○○○(10歳)は祖父母の養育を受けてきたが、祖父も土方だったが、満足な仕事もできず、祖母はわずかな賃金を得て草むしりをしていたが、夫婦喧嘩の挙句、1月に二人とも家出し、そのあとまたいっしょになり、○○○○(10歳)の弟と4人で住んでいる。
 こんなありさまで、両親も祖父母からも相手にされず置き去りにされたことは一度や二度ではない。幼い子供であるから腹が減ってもどうすることもできず、小遣いがほしくてもどうすることもできず、ただ、食いたいの一念から近所の雑木林に入っては樹に下にいる無数のかたつむりやなめくじをとってきては、食べ物の代りにしていた。かたつむりはたらいに水を貼って貝を除いて手でもみながらつまんで食べ、またおでん屋から串をもらってきて、しょうゆなどをつけて、あぶって食べたこともあった。なめくじは水に入れると、固くなるから、ちょっと洗って、生で食うということだ。
 さらに驚くべきは、冬になって無限にいたなめくじやかたつむりがいなくなったので、とかげを食べた。あるいは死んだねずみを焚き火に放り込んで丸焼きにして肉を食べることもあるという。こんなぐあいで○○○○(10歳)は一種妙な生理的変化をきたし、これを食わなかった以前より顔色も元気によくなったということだが、なんという痛ましい惨めな事件だろう。

 なめくじもかたつむりも・・・ですけど、ねずみは食わないほうがいいかと思います。

●死の研究者の死
 京都医科大学4年○○○○(28歳)という学生は5日午後自殺した。同人は常に死の研究に耽り、ことに押川製鉄所長官、女優松井須磨子などの死に興味を持って、頭を悩ましていたが、一両日前妻の○○○に対し「死ねばわれ一人である」などと言っていたことがあり、机の中には3通の遺書が発見された。妻○○○の宛てたものには「万時休し死を決心したれば、御身は健康にして末永かれ」と記してあった。

 いつの世にもこういう人はいるようです。

●今よう桂川
 愛媛県○○○○(45歳男)は隣家の娘○○○○(14歳)と通じて、妊娠させ、嫁にくれと申し込んだところ、あまりに年齢が違うと断られたので、両人は悲観して、5日夜に手に手を取って、家出し、同村の池で抱き合って情死を遂げた。○○○○(45歳男)は15年前に妻と別れた。 
 今よう「お兄ちゃんは悪くない」事件ってかんじでしょうか。おじちゃんですが。

●滑稽悲劇計略の狂人
 富山県の○○○○(50)という村会議員まで勤めたことのある老人、昨年思わぬ金儲けをしたうれしさから気がふらふらとなり、野菜を並べて品評会をひらくのだとて、一等賞、二等賞などと審査長を気取ったり、はては家財を壊すので脳病院を入れようとしたが、俺は狂ってないと肯じない。そこで息子の○○○○は考えた挙句、息子自身が狂人を装って無茶苦茶に暴れた。驚愕した老人が自分のキチガイを棚に上げ、息子を脳病院へ連れ込み、居丈高に息子が発狂して困りました、どうかよろしゅうといった裏で息子はこっそり院長に、実は親父がこれこれこうでと暫く入院させたという悲惨な滑稽話である

 家庭内暴力じいさんは精神病院にひきとってもらっていました。ただ、野菜の品評会あたりまでは、あまり変なじいさんに見えないのですが・・・。

●割腹して腸をひきずりまわる
 札幌の交番前の若い男が綱引き縄のようなものを引きずり歩いているので、巡査が不審に思って見ると、割いた自分の腹から出た血まみれの腸を握って、虫の息で歩いているのであった。
 この男は同区内○○○○(19)なる青年で、このごろ看板屋が嫌になったと小説などを読みふけり、たびたび母に向かってほかの職業に移りたいといったが、いつも意見され、気が変になり、ついに出刃包丁を持ち出して畑の中で腹を切り、死にきれず苦し紛れによろよろと歩きまわっていたのであった。

 紐かと思ったら「腸」でした、という話です。まさに不審者でございます。

●大学生の少女釣り損ね
 12日午後日比谷電車交差点に角帽をかぶり、右手に白手巾を巻き付けた学生が警視庁からやってきた刑事に引致された。これは法政大学言論部○○という男で、数日前深川の辰巳劇場で見初めた少女の袂に名刺を投げ込んだ。
 この美人は、家に帰ってその名刺を兄に見せる。そこで計略をめぐらして「12日の午後4時日比谷電車待合室に、正帽で左の手にハンケチを持って待っているように」と書き送った。角帽先生金縁メガネでやってきたところを刑事に釣られ蒼くなってしまった。

 凶悪お嬢さまにやられたエリート君のちょっとかわいそうなお話。


 ↓こっから下、カチャカチャ打つので腕が痛くなってきたのでまとめます。

●家出人が多くなる。
 統計の話

●食い物にされた田舎娘
(幼くして母を亡くした青森県の18歳の娘が、眼病の父を養ったいたが、その病を治そうと上野に上京。上野公園で前科6犯の53歳の男が声をかけ、木賃宿に連れ込んで強姦。千葉県の料亭に自分の姪と偽って酌婦にする。前借をふみたおす。娘は目下妊娠3ケ月の身重となって養育院へ送られる)

●犯罪がだんだん巧みに
 統計の話

●自慢の食逃げ300円
(食い逃げ自慢男の話)

●富豪の娘の駆け落ち
(麻布の19歳令嬢が自動車運転手と駆け落ち。この家庭が非常に乱れていることと暴露され、天下の問題となったという話)

●松ケ枝に並んだ首吊り情死
(兵庫県の明石の旅館で“ふらり情死”を遂げた、という話)

●二人共謀して刑事の詐称
(ふたりの前科犯が巣鴨に入監中仲良しになり、ひとりは浅草49ケ所で強盗。もうひとりは警視庁刑事と称して被害者を訪ね、被害物を発見したる旅費を要すると10ケ所で150円を搾取。ひとりは吉原の娼妓に浮かれ、もうひとりは生け花師匠として寡婦だまし専門に。浅草資産家の長女を誘拐して中渋谷に一軒屋をかまえ、豪遊していたのは逮捕された。
 渋谷に一軒家をかまえるまでの「誘拐」って・・・。それは自由恋愛では?って気もしないでもないんですが・・。

●長春の拳銃心中
(28才の男が25歳の芸妓が拳銃心中。この芸妓は大連に出ていた女でちょっとヒステリー。深い関係ではないが見事な死。若気の無分別というよりほかに大した理由がない)
 「見事な死」って。そう煽るから心中ブームが・・・。

●全国に公娼15万
(公娼と私娼の統計的なお話)

●看護婦の恨み死
(勤め先でお金がなくなったことを疑われ、電車に飛び込み自殺。「泥棒の塗れ衣をきせるとは、この無念さは死んでも忘れず一家を恨み殺してやりたいばかりに線路の錆びと消えるべし」との遺書)

 「線路の錆と消えます」って・・。「さび」にならなくても・・・。

●男女両性をもった怪賊
(24日夜大阪で捕らわれた賊のなかに、男とも女とも定め難いものがあった。生殖器は不完全男女両性を共有し、頭髪服装は男風で乳房はないが顔立ち骨格はすべて女で戸籍も女という奇形児だったという話)

 以前、友人が「見世物小屋って一度でいいから行きたい、ついてきて。こんなことを頼めるのは安原だけ」というので、「やめておいたほうがいいよー」といいながらもついて行き、友人がものすごくブルーになってたのを思い出しました。

●鉞(まさかり)を揮って(ふるって)我が子と不貞の妻と母を
(横浜生まれの○○○○(36歳)は別れた妻○○(30歳)とその長男(7歳)その母(63歳)に鉞をふるい、被害者即死。○○○○(36歳)は温順であったが働きがないと、妻に疎まれ、そのうち妻は中山鬼子母神で某という素人行者と馴染め、夫と離縁したのだった。それとともに8年通った店をやめ、離縁。
 昨夜、11時半ごろ、元妻の家のまわりを雨の中徘徊。元妻とその母に散々罵られ、憤怒のあまり用意の鉞を揮って惨劇となった)

 ストーカー&まさかりで一家惨殺。

 まことに昔はモラルの高い時代ございます。「教育勅語」万歳!