デブ追放!ヤセ追放! | 女子リベ  安原宏美--編集者のブログ

デブ追放!ヤセ追放!

 メディア上では「食の崩壊」がHOTな我が日本でございまして、メタボ基準値については今号の「東洋経済」でも喧喧諤諤の議論がされております。健康増進法において「健康」はいまや国民の「責務」になっております。さらに医療制度改正で、2008年4月に40~74歳の人は特定健康診断および特定保健指導が義務化。生活習慣病の予防、減少がその目的です。検査結果で問題があれば、「特定保健指導」を必ず受けなければならないというわけ。

 基本的に健診を国がやってくれることに関しては私は反対ではありません。ただ専門家の指摘を呼んでいると、検診内容がかなり問題ありのように思います。ひとことでいうと「厳しい」。日本人ってそんな太ってないんだけどね。ほとんどの日本国民が“病気”となってしまうというデータも出されています。 

 そもそも「健康を増進」ってなかなかどうして難しいと思うんですけど。“いやー昨日より今日は元気になったよー”ってわかんなくない? あと「メタボメタボ」って騒ぎすぎだよ、そのうち「デブハラ」とか「メタハラ」とかいわれそうだわ。ちなみに厚生労働省でも健康増進の「責務」を負った国民のために「1に運動、2に食事 しっかり禁煙、最後にクスリ」というスローガンと打ち出しております。最初からクスリ飲んだほうがいい人もいると思うんだけどねー。

 http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/seikatsu/index.html
 

 この「健康増進分野」でHOTなのがBMI値という、ようするに「デブ」基準です。
 『
人は見た目が9割 (新潮新書)/竹内 一郎』 とかいつまでもデブと思うなよ (新潮新書 227)/岡田斗司夫 はベストセラーになっている美しい国(→もう古いね)日本ですが、岡田さんはその著書の中ではっきりとこういいます。
 
  ----わたしたちが知らぬ間に日本社会は大きく変わりつつあり。その最大の変化が「見た目印象」を重視する「見た目主義社会」への移行だ。----


 ----もちろん自分が太っているのは知っていた。だが、たったそれだけでの理由で、私に対する評価が、まず「太っているヤツ」であり、自動的に「大食い」「だらしない」「明るいけどバカ」「人付き合いが下手」・・・・などのイメージをあてはめられてしまう、とは考えてもみなかったのだ。私はそれまでに『ぼくたちの洗脳社会』『オタク学入門』『フロン』など社会評論を何冊か出していたし、そういうテーマでの出演・対談・取材依頼も多かった。だから、自分は「物書き」「社会評論家」とラベリングされているかと思っていたのだ。
 まあ、自分から「オタクの王様・オタキング」などと名乗っていたから、一般のテレビ視聴者からは「オタク」の人というラベリングかなぁ、と考えていた。
 が、違っていた。
 私のキャラは「デブ」だったのだ。----


 「デブになりたい」と思う人はまあいないと思うので、基本的に「デブ」は今や「絶対悪」ではないのでしょうか。岡田さんの本はとっても楽しく読ませたいただいたのですが、ベストセラーになってるってことだし、岡田さんほど太っていない人も買って読んでるってことなんでしょうね。

 日本のことだけいわなくても、もちろん全世界的に(先進国では)、肥満による病気が問題視されています。


 しかしながら、かたや、「ファッション業界」では、今「激やせ」が大問題になっています。
 06年ミラノコレクションではBMI値18以下のモデルの出演制限に踏み切ったからです。
 07年ミラノコレクションの最中にベネトンの意見広告で有名なオリヴィエロ・トスカーニが拒食症のフランス人モデルを起用した衝撃的なキャンペーン写真を発表します。
 それがこの写真。びっくりしないでねっていってもびっくりしますよね。

 
拒食症

  ちなみにこの写真のモデルは23歳。

「摂食障害」ってついつい「心の問題」に話が進みがちなんですが、この騒動を受けて、今号の『ELLE JAPON (エル・ジャポン) 2007年 12月号 』では『自分らしいボディを探して』というTOP特集を組んでおります。

なかなかいい特集でございました。ひとつはみんながきれいきれいと思っているセレブだってかなり「見た目の悩みを抱えておるんです」特集。ざっくりまとめると、「ハルベリーは実は足が短いです。ドレス着てるときはいつも10cmヒールなんだよ」とか、「リリーアレンは「155cmでプチデブなのを逆手にとって、ガリガリのモデルのためじゃなくて、みんなが着られる服のデザイナーデビューをしたよ。かわいいのー」とか、「ジェニファー・ロベスはあんなデカ尻でよく外を歩くものねと言われたこともありましたが、やかましいんじゃ、それが美の原点じゃい!とひらきなおる」といったようなお話で、セレブのコンプレックス話満載。確かにケイト・ブランシェットはパーフェクトビューティーだと思っていたがししゃも脚だ(笑) ぜんぜんわかんなかったなあ。映画ライターの座談会の「『アリーmyラブ』の現場もキャリスタ・フロックハート(アリー役ね)にあわせて、みんなが拒食症寸前に陥ってた」発言は納得。さらにダイエットをやめたトップモデル、ケイト・ディロンの今の姿のヌードグラビア。“太めトップモデル”のラクさを語っております。
 で、もうひとつの特集記事。これ大事。
 これはなぜ“拒食症モデル”が問題になるのかといった記事。
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 昨年8月、ウルグアイ出身のルイゼル・ラモスが、ショーに出演した直後に栄養失調で急死。彼女の3度の食事はサラダとコカコーラ・ライトだったという。その半年後には、ルイゼルの妹、エリアナも拒食症で死亡。昨年11月にはブラジル出身の18歳のモデル、アナ・カロリーナ・レストンが亡くなる。アナは身長174cm、体重40キロで少量の果物だけを食べてこの体形を維持していた。(略)
 しかし、こうした措置やキャンペーンだけで本当に拒食症の悲劇を予防できるのだろうか? 問題はモデルが年々低年齢化していることにある、とモード関係者たちは指摘する。貧しい低開発国からやってきた、英語も満足に話せない10代のモデルたちは自分をコントロールする能力もまだないまま、親や親戚の期待を一身に背負い、モデルとしての成功するためならどんな犠牲も引き受けてしまうのだ。
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 元モデルのカーラ・ブルーニはこう言っています。
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 最近のモデルたちをショーで見るとき、私が驚くのは彼女たちの体形の細さより、年齢の若さなの。私の娘といっても通用しそうな、まだ大人になりきっていない、未熟な体つきの子ばかり。これはモラルの問題。子供を働かせてはいけないのよ。私は19歳でモデルになったけど、それ以下だったら、どうなっていたかわからない。
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 井出草平さんのブログ では世界での報道のされ方をまとめていらっしゃいます。
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 レストンさんはモデルをすることで金銭的に家族を養っていたそうだ。今年の夏に死亡したLuisel Ramosについても同じことが言えるのだろうが、南米出身者がモデル業界に入って成功するということは、貧しさから抜け出すことを意味する。彼女たちの肩には家族の生活がかかっているのである。ただ痩せることに強迫的になるという以上のものがあるのだ。母親のコメントはそういう背景から発言されていると思われる。
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 貧しい国から来て、栄養失調で死んでしまう彼女たち。

 ブラジルでは「拒食症と過食症の防止キャンペーン」の実施を発表しました。
http://www.afpbb.com/article/entertainment/fashion/2148006/1135484  

 岡田さんの著書に戻ると、このように書かれています。
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 「大切なのは○○じゃない。中身だ」という主張にも著者個人としては賛成する。それはいつの時代にも必ず主張されるスローガンだ。が、残念ながら、常に単なるスローガンで終わらざる得ない。
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 いまや国を挙げての「デブ追放」時代ですからね。ただね・・ブラジルの二極化スローガンを見ても、こういうことは堂々と建前をいえる社会のほうが「健康にいい」気はしますね。ちなみに私は本気で「中身」だと思いますが。

 とりあえず、何事も行き過ぎは身体に毒っ。「食」は非常に属人的な事柄と思われがちですけど、社会的経済的な問題も大きいと思います。属人的な問題だけに集約されるは避けてほしいなと思います。あと基準値は適正にしてほしいかと(残留農薬の大騒ぎみても思う)。検診始まる前から「メタボ侍」の公務員死んでるけど大丈夫なんだろうか。日本っていっきにふれるからなー(メディアもいっきにふれるからだと思うんだけど)。
 http://www.nikkansports.com/general/f-gn-tp0-20070817-242966.html