怪物化する「子ども」と「親」 | 女子リベ  安原宏美--編集者のブログ

怪物化する「子ども」と「親」

 前回、「食育」推進本に多い「キレる子ども」話を書きましたが、あわせて多いのが「モンスターペアレント」話です。給食費未払いとの件とからめて、マスコミでも論者やコメンテーターが口にする便利な言葉になりつつありますね。さっき「たけしの教育白書」でも言ってましたね。

 例えば・・・西日本新聞の「食育」ブックレット「食卓の向こう側」によればこう書いてます。
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 昨秋、タレントの永六輔さんのラジオ番組で、一通の手紙が物議を醸したことを知った。寄せられた手紙の内容は、ある小学校の出来事、母親の一人が学校に「給食時間に『いただきます』と言わせないでほしい。給食費はちゃんと払っているのだから」と申し入れたというのだ。番組に対する反応の多くはこれに否定的だったが、中には肯定する意見もあったという。
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 服部先生の本ではもっとすごい。
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 小児科に六カ月検診に来たお母さんが「うちの子は青いオシッコが出ないのですが、大丈夫でしょうか」というのだそうです。青いオシッコって何だろうと不思議に思ったら、紙オムツのコマーシャルで吸水性を表すために使っているインクを溶かした青い色が本当のオシッコの色だと思い込んでうちの子は大丈夫かと、真剣に悩むお母さんがいたのです。
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 ・・・もう、ここまで来ると、どこぞの都市伝説か、もしくは、いっとき女性週刊誌ではやった「馬鹿っ母シリーズ」みたいな話だと思うんですが、この話はいろんな本や雑誌で服部さんは引用されています。1例を取り上げて、「今の日本の親が非常識なことになっている!」っていうのはどうなんでしょう? そして昭和30年代の家庭と地域にはつながりがあった!という話になるんですが、だーかーらー子殺し件数などは、「少年犯罪データベース」などを見てください。


 ・・・で「モンスターペアレント」って誰が名づけたのかなあ・・・、ウィキペディアによると向山洋一氏らしい・・。ここでもTOSSですか・・・orz

 

 西日本新聞の食育ブックレットはとある団地の親たちの「食生活」をこのような記事にしています。
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 この団地の子どもたちが通う○○小学校(記事では実名)は約4割が母子家庭か父子家庭で生活が苦しい世帯も多い。「子どもたちはとても明るく素直。でも生活習慣が気になる」と○○校長(記事では実名)。アンケート調査ではピザでも肉まんでも「朝ご飯を毎日食べる」と答えた子は69%で同市平均より13ポイント低い。夜11時以降に寝る子は6年生で6割を超える。(略)
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 さらに子どもたちの家庭科実習をこのように取り上げてます(別の学校の話ね)。
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 2005年冬、筑前煮をつくる1年生の調理実習。とり肉をいためる際に油をひかず、ずっと鍋を熱している男子生徒がいた。やがて、生徒はアツアツになった鍋に油を注いで発火させ、周囲を驚かせた。
 包丁の刃を立てて洗いスポンジをズタズタにする、缶きりが使えない・・・。生活技術が落ちている生徒たちのために「もっと実習させたい」と思うが、授業時間は年々減少、実習も削らざる得ない。
 中学校の「技術・家庭科」はかつて3年間で計315時限あったが、現在は175時限に半減。特に3年生は35時限じかなく、家庭科に限れば週0.5時限だ。高校では従来140時限の科目だった家庭科に1999年告示の学習指導要領で70時限の科目が登場。少ない時間の科目も選択できるようになり、関係者を落胆させた。
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 料理はじめてやったなら、けっこうどこでもある話(笑) 「噂の東京マガジン」の「やって!TRY」を見てたほうがおもしろいのでは? 家庭科「産業」の人にとっては、授業時間削減は危機感はある話なんでしょうね。

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 読者の反響はがきもいくつか掲載されているが、手紙の内容は、「こんな変な親もいた」か、「教師が悪い」か、「うちは学歴偏重主義じゃなくて、包丁主義でいきます」か、「昔は良かった症候群」か、「みそ汁、漬物、野菜原理主義」か、「モンスター妊婦もいます」か、「男もやれ」か、に大別されるでしょうか。

 しかし、そのなかで西日本新聞が大きく取り上げている一通がありました。記事へのクレームです。
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 (記事に掲載された)・・・・団地の者ですが、新聞に載せるにはあまりに取材不足ではないでしょうか。確かに当たらずとも遠からずの記事でしたが、あれは団地内でがんばっている人たちが気の毒です。今の団地は昔と違って格差社会の構図的縮図があります。高齢者も増し、母子、父子家庭も多くなりました。子を育てるために夜働き、わずかな睡眠をとり、子どもを一生懸命はぐくんでいる家庭もある事を知ってください。
 一度張られたマイナスのイメージのレッテルは簡単には消えません。ペンは剣よりも強いことを記者の方には常に心にとどめてほしいと願います。
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 これを掲載したのは西日本新聞の良心でしょうね(言い訳かもしれないけど)。「モンスターペアレント」という言葉はこういった話が隠されていくと思います。
 子どもに包丁持たせて、小さいころから番組「ひとりでできるもん!」的な授業やイベントは楽しいと思う。でも、それで上のクレームのような話は解決できることはないと思う。