「モラルが下がって給食費未納」って「神話」じゃないの? | 女子リベ  安原宏美--編集者のブログ

「モラルが下がって給食費未納」って「神話」じゃないの?

前回のエントリーで朝日の社説が変だなあ(まあよく酔っ払ってらっしゃいますが)と思って書いたら、いろいろ情報とコメントいただきありがとうございます。

 なんか「治安悪化神話」と似てるなあと。「給食費未納はモラル悪化論」?
 識者や専門家や運動家が公式統計をいいかげんに解釈し(もしくは鵜呑み)、極端な事例を一般化し、いらんことを語り過ぎ、そして昔からあったことなのに社会変動論と結びつけ、社会問題化し、マスコミがひろめて、世間に「常識」として定着して、最近の親(例 少年)はモラルがいかんってことになって、力による制圧、倫理強化、厳罰化の方向で行政が動いて、結果的に公的サービスが低下して弱者もふつうの人も直撃(例 不審者対策→刑務所がいわゆる弱者でいっぱい 誤認逮捕や職質横行)すると、結果的には、加害者側(例 セキュリティや刑務所)に予算が割かれて、被害者にリソースや予算がまわらない、という「それ誰も幸せになりませんが」というスパイラルに見舞われませんか?と…。

 いろいろ皆さんから情報いただいたので整理してアップしますね。

 まず仲さん からいただいたデータ 。記事になってる元データですね。いつも元データ見れ見れいってるのにすいません。
 以下後藤さんから教えていただいたブログでも検証されてます。
 なになに?


※小学校の場合
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学校給食実施校 22553
学校給食が未納の児童生徒がいなかった学校数 13446 59.6%
学校給食費が未納の児童生徒がいた学校数 9107 40.4%
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 6割近くの「学校」は未納いない。パーフェクトです!すごい!(じゃなくて?)
 

★過去数年の未納の児童生徒数や未納額の推移について
かなり増えたと思う 1175 12.9%
やや増えたと思う  3296 36.2%
変わらない     3563 39.1%
やや減ったと思う  806 8.9%
かなり減ったと思う 267 2.9%
 総数 9107。 
未納があった学校のみに聞いたもの。「…と思う」ですか?「体感治安」キャンペーンと似てますねー。ただ、未納の学校に聞いて「変わらない」が一番多いんですね。「かなり増えたと思う」「増えたと思う」はマスコミの影響を考慮しないと。騒いでるんだから。

 ちなみに浜井先生が「犯罪不安社会 誰もが「不審者」? 」のはじめにに書かれてますけど、こういう研究をされようと思ったきっかけは、刑務所には、よわよわな外国人や障害者や高齢者がばっかり入ってくるのに現場の刑務官が、「治安悪化してますねー日本やばいですねー(大意)」っていってるのが不思議に思ったからだそうです。

★未納が増えたと思う原因について(自由記述 複数回答)
保護者としての責任感や規範意識 小学校 3102 69.4%
保護者の経済的な問題 1666 37.3%

 ※未納の生徒数や未納額が「かなり増えた」「やや増えたと思う」と回答した学校数 4471 に聞いてて上の計は 4768 →「297」被る。未納が増えた原因について、報告書に出してるのが、ふたつですよ。


 けいさんのコメント追加します。

「冷静に文部科学省の報道発表を見てみると

学校給食実施校総数   31,921校
未納があった学校     13,907校 (43.6%)
未納があった学校のうち
「かなり増えたと思う」「やや増えたと思う」  6,820校


 ということは、「かなり増えたと思う」「やや増えたと思う」 認識の学校は
6,820÷31,921×100=21.4% すなわち、78.6%の学校で給食費未納が、「増えたと」 という認識がありません。 もし文部科学省がまともな調査をする気があれば、未納がなかった学校からも未納の推移について質問し、回答選択肢に、「責任感や規範意識の向上」を入れるべきです。文部科学省に電話して、過去の学校給食費徴収のデータがあるのかを質問してみました。ないそうです。 他の官庁でもそんなデータは、たぶん持っていないとのこと。 残念ながら文部科学省は、「給食費未納が増加している」というデータは出せなかったようです。

 学校給食費未納の1%のうちの何人かは、常識的でない人がいるかもしれません。 でもコンマ数パーセントの人たちが「常識的」でないのは、いつの時代でも同じです。それよりもっと怖いのは、情報操作・世論操作をする国とマスコミです。 そしてそれを信じ込み、嬉々としてバッシングする人たちです。」


 遊鬱さん からいただいた沖縄の未納問題の記事

http://www.j-cast.com/2007/01/27005165.html

 給食費滞納が社会問題となっていることを受け、文部科学省は06年11月~12月に初めて給食費の徴収状況を調査したが、県別で見ると沖縄県の滞納率が突出していた。全国平均は1%なのに、沖縄県で滞納している子どもの割合はなんと6.3%。東京の約8倍、金額にして2億6千万円を超えていた。それはなぜなのか。

 給食費滞納問題をどう解決していくのだろうか。沖縄県教育委員会は県庁内にある 沖縄県内では、以前から給食費滞納問題は深刻な問題だった。たとえば、04年4月24日の「沖縄タイムス」では、 「(沖縄県は)失業率と離婚率は高く県民所得は全国一低い。就学補助制度(給食費補助などを受ける)申請にいたらなくても、支払い困難な家庭が多い」
と報じている。


 文科省のデータでも、北海道と沖縄が突出して未納が高いですね。 ・・・これで「暑いから」「寒いから」は理由になりませんね(笑) 冗談じゃなくて貧困でしょうね。


 後藤和智さん から教えていただいたブログとサイト
http://eritokyo.jp/independent/sato-col0063.html
http://shinka3.exblog.jp/5382847

 私のように朝日の酔っ払い社説で気がついてるわけじゃなくて、とっとと気がついている方もいらっしゃいますねー。えらいなー。しかし、朝日は携帯電話になったり、カエルさんになったり、全文ひらがなにしてみたり、捨て身の攻撃なんだろうか・・・。


 けいさんからいただいたコメントと72歳の元教師が昔のことを振り返った記事

 「文部科学省の報道発表を読みましたが、過去の教育費支払い状態の数字は、いっさいありませんでした。 これでは比較が出来ないので1%が多いのか、少ないのか判断できません。で、古い新聞をあさってみました。1989年の記事で72歳の元教師の方が、現役の頃の話を書いているので、今からだと30年以上前になるはずです。昔から規範意識のない人はいたんですね。」


1989年04月18日 朝日新聞 
「児童の心に食い込む魔性の金(テーマ談話室 お金)
小学校における児童と金とは無縁のようだが、さにあらず、金という魔性が幼い児童の心にまで食い込んでいることが多々あった。
<略>(2)今は知らんが東京都が教育補助費を支払い、給食費も立て替えてくれたころ、某校に講師として行ってびっくりした。クラスの3分の1が教育補助児童だった。それもほとんど自営業が多い。その中の1人の親が担任印をもらいに来た。会社の専務で外車に乗って。私は最後まで印を押さなかった。外車をやめ脱税をやめて、本当の月収の証拠を出すまでは承認印を押さないと。以後私を敵視していたらしいが、ただ私としては児童(5年生)には罪がないからその子に対しては他の子と同じように取り扱うため、自分の心と闘った。(xx市 xx文雄 74 元教師)」

今回の給食費の場合、1%のうちの何例かで給食費が払えるのに払わない人がいた。 どの時代にもこういう人たちはいます。 100%の人が、完全に高い規範意識を持つ社会なんてありえないと思います。 あっても私はそんな世界に住みたくないです。電車に乗るときケータイをマナーモードにするのを忘れたら、撲殺されそうです。

 ごもっともでございます。「ケータイをマナーモードにするのを忘れたら、撲殺されそうです。」 ははは。ほんとですね。このまえ切るの忘れて、目の前のおっさんに携帯マナーシールをこぶしでバンバン叩かれました。怖かったよー。・・・席譲っておきましたわ。


 文科省のデータだと「経済的理由」と「モラル」って理由しかないですね。そして昨今の報道は「未納」一色のように思うのですが、何が語られてないんだろうなーと有料ニュースをちょっとさかのぼってみました。2005年末から2006年だと、ざっくりした印象だと「食育」と「給食費着服」「過剰徴収」と「未納」がいろいろ混在してますねー。

 ・・・・そうかーそうかー。ふむー。着服金額とか過剰徴収とかトータルしてもらいたいなー(笑)。着服があった学校で「もう払うかよープンプン」とか怒ってる親もいるんじゃないの??

 以下、「給食費」で検索。結果画面の見出しの1ページをコピペ(ぜんぜん関係なさそうなは省きました)。


みんなの広場:「いただきます」は心も満たす=主婦・竹内久美子・55(毎日新聞) - 2006年1月27日(金)
神野小の栄養職員、給食費673万円を着服 佐賀市教委、刑事告発を検討=佐賀(読売新聞) - 2006年1月26日(木)
着服:県採用の女性栄養職員、給食費674万円を--佐賀市立神野小 /佐賀(毎日新聞) - 2006年1月26日(木)
同志社 立命館 ブランド競う 京都に相次ぎ小学校 ともにリッチ/保護者ら注目(産経新聞) - 2006年1月25日(水)
考:「いただきます」って言ってますか? 「給食や外食では不要」ラジオで大論争(毎日新聞) - 2006年1月21日(土)
富山市、小・中学校全94校の給食献立統一へ=富山- 2006年1月20日(金)
野菜高騰、学校給食に影響 献立変更や冷凍食品利用=山形(読売新聞) - 2006年1月16日(月)
就学奨励費を支給ミス 南大沢学園養護学校、申請時に入力誤る=多摩(読売新聞) - 2005年12月26日(月)
大分の学校法人、補助金182万円不正受給 給食費の不適切経理も=大分(読売新聞) - 2005年12月10日(土)
不正受給:学校法人「上東学園」、補助金182万円--県は公表せず /大分(毎日新聞) - 2005年12月10日(土)
社福法人着服事件 前理事長宅など横領容疑で捜索 南署=福岡(読売新聞) - 2005年11月30日(水)
福岡・やまびこ保育園の不正会計処理:給与着服容疑で、常磐会元理事長の自宅など捜索(毎日新聞) - 2005年11月29日
着服発覚の社会福祉法人、監事監査なしで決算報告 厚労省、望ましくない=福岡(読売新聞) - 2005年3月1日(火)
稲枝中の給食存続問題:2年間の存続延長を決定--彦根 /滋賀(毎日新聞) - 2005年2月23日(水)
社会福祉法人「常磐会」前理事長 福岡市が横領容疑で再告発 福岡・南署が受理(読売新聞) - 2005年2月19日(土)
給食費64万円着服 小学校教頭を懲戒免職(産経新聞) - 2005年2月18日(金)
給食費着服、教材費流用など 教頭らを懲戒免職/都教育庁(読売新聞) - 2005年2月18日(金)
都教委:着服で教頭を懲戒免職 痴漢の前校長は諭旨免職 /東京(毎日新聞) - 2005年2月18日(金)
給食費滞納212万円 督促申し立てへ 多賀城市が簡裁に=宮城(読売新聞) - 2005年2月16日(水)
西論風発:食育のススメ “考える力”は食にあり=論説委員・池田知隆(毎日新聞) - 2005年2月13日(日)


参考記事
■不明朗会計:給食費など過重徴収 和歌山の保育園、5年で2000万円以上
 和歌山市有本の私立「ひまわり保育園」(三宅多恵子園長)が、給食費などを保護者から過重に徴収し、過去5年半で少なくとも計約2150万円の収入を得ていたことが27日、分かった。園側は保護者に返還する意向だが、不明朗会計処理があったとして市は立ち入り検査を行っている。
 同園は今月22日、保護者説明会を開き、給食費など計約2150万円の過重徴収や、本来は市から支給されるぎょう虫検査費、尿検査費を保護者から集めていたことを明らかにした。疑問の声が相次ぎ、同園は28日に再度説明会を開く予定。
 給食費は、米などの主食費と副食費に分けられ、和歌山県では3歳児未満の主食と副食費、3歳児以上の副食費が、国などから補助されている。同園は給食費として月額3900円を一律に徴収していたという。
 同園作成の資料によると、過重徴収額は▽01年度約266万円▽02年度約273万円▽03年度約265万円▽04年度約587万円▽05年度約530万円。今年度も4~9月に約226万円を過重徴収していた。
 同園は定員120人で、0~5歳児を受け入れている。三宅園長が理事長を務める社会福祉法人「和歌山ひまわり会」の運営で、同会は同県広川町で老人福祉施設なども運営している。
 同園は毎日新聞の取材に「在園児や卒園児にすべて返還する。事務担当者不在で詳細は分からない」としている。【栗原伸夫、最上聡、久保聡】 毎日新聞 2006年9月28日(木)


参考記事
■多摩地区の市立小中、給食費未納3000人以上 貧困家庭増加などで=多摩
 多摩地区の市立小中学校で、給食費を払っていない児童・生徒が、少なくとも3000人以上に上ることが明らかになった。5年前に比べると未納者、未納額ともに大幅に増加している。支払う余裕のない貧困家庭が増えたり、支払い方式が口座振替へと切り替えられていることが背景にあるとみられる。
 読売新聞が多摩地区の26市に問い合わせたところ、未納の状況について昨年度の集計を終えているのは八王子市や町田市など19市。未納者は計3388人で、未納額の総計は約7500万円に上っている。
 このうち2000年度の未納額の記録が残っている14市については、未納額は5年前の約40%増と急増していることが分かった。また未納者数の記録が残っている9市でみると、未納者数は約35%増加していた。
 給食費は月額3000~4500円程度。学校給食法では、食材費は保護者負担と定められており、未納者が多くても、ほとんどの市は公金による補てんは行っておらず、その分、食材費などが削られる結果となっているという。
 「払わなければ給食は食べられない」とする条例を制定している市もあるが、実際は各市とも「たとえ未納でも、児童に給食を食べさせないわけにはいかない」との姿勢だ。
 昨年度の未納額が1226万円に上ったあきる野市は、市教委の職員らが年間のべ2000回以上も各家庭を訪問し、支払いを催促しているが、「リストラによる失業者や離婚家庭などで、払いたくても払えない家庭が増えている」とし、成果が上がらないことに苦渋顔だ。
 一方、「口座振替に切り替えたことが、不払いの主因となっているのではないか」との声も各市の担当者らから上がっている。ほとんどの学校で現金徴収を続けている東村山市は「未納はほぼゼロ」と胸を張る。教育評論家の矢野壽男さんは「モラルが低下し、『払うと損』という風潮があるのでは」と指摘している。
 東大大学院教授の佐藤学さん(教育学)は「就学援助を受けている家庭は給食費も支給されているから、それ以外の家庭も未払いという深刻な状況がはっきりした。貧困が多摩地区にも広がっている」と警鐘を鳴らしている。 2006年9月28 日(木)読売新聞


参考記事

■給食費:県内でも3945人が未納 「報道の影響も」と各校 /神奈川

 文部科学省が24日発表した給食費未納者の調査で、県内でも、給食を受ける児童生徒数の0・7%に当たる3945人が給食費を納めていないことが分かった。県教育委員会の調査に対し、各小中学校からは未納者増の原因として「マスコミ報道で『他にも未納者がたくさんいる』『未納でも食べさせてくれる』と知り、払わない保護者が増えた」という声が出た。
 未納者のいる学校の半数近い277校が「未納者はここ数年で増加した」と答えた。各小中学校は、未納の理由の6割超が「保護者の責任感・規範意識の問題」だったと回答した。
 未納による予算不足のため、各学校や市町村は、材料の質を落とすなどして全員に給食を提供している。

【稲田佳代】 2007年1月25日(木) 毎日新聞


■【断】給食費という高い税金
給食費の滞納や支払い拒否事例が問題となっている。確かに悪質なケースもあろう。だがマスコミ世論に追従するなら小欄の存在意義はない。先日、住民票の交付料をぼったくりと評した。たかが300円の話と思われた読者もいるだろうが、再び異議を申し立てたい。
 今回も具体例で語ろう。以下は都内A区立Z小学校の実例。学年により多少違うが5年生の場合、給食費が年間5万820円。その他、教材費として1万5000円が、修学旅行などの積立金として1万6500円が徴収される(中学になれば、さらに増える)。
 以上に2500円のPTA会費と520円の引き落とし手数料を合計すると年額8万5000円を超える。これに扶養子弟の人数分が乗じる。わが家の場合、こどもが3人。合計額は勤務先大学の年俸1割を超え、家計を圧迫する。恥ずかしい話だが、長男の修学旅行は断念した。正直、重税感を否めない。少子化は必然であろう。
 給食献立に選択の自由はない。宗教上の禁忌や健康食材に拘(こだわ)る家庭の意向も無視される。なぜ画一的な食事を強制されるのか。刑務所ではあるまいし。いや、刑務所なら食事は無料である。
 刑務所が言い過ぎなら、諸外国はどうか。海外では弁当が主流である。欧米では無料給食や、帰宅させ昼食を取らせる学校も少なくない。一部希望者だけが有料の給食を利用する。
 なぜ給食でなく弁当では駄目なのか。関係組合が反対するからか。日本だけが類例のない制度を続けている。強制的に献立を押し付け、実費を取り立てる。いわば義務給食。どう考えても、美しい制度ではない。
 (評論家・潮匡人) 2006年12月2日(土) 産経新聞


 上半分は実態がわかって参考になりました。・・・まあ弁当作るのに手間とお金はかかるんですけどね・・。海外の弁当礼賛は知りませんが(自分で作ってね ニコッ)(ポテチとコカコーラとチョコバーとかになっても文句いわないでねーそれでもあんなにでかくなるんだからってこと?)。

 弁当とは話違いますが、うちは母親が薬剤師でもともと予防接種には懐疑的でした。さらに子どものときの予防接種で私が大熱を出したことがあり、学校のインフルエンザ予防のサービスはそういうわけで拒否してて、教室でひとりのこって本読んでました。だから、私は「鉄砲注射」っていうのを見たことがありません。

 給食だって、どーしてもやなら、別に個別事情で学校に頼めばいいことなんじゃないかな。「うちの子アレルギーなんですー」とかなんとか言ってさ。そんくらい対応してくれるでしょ。子どもが浮くっていうのも配慮する「嘘も方便」も必要だと思いますよ。そいでもってわざわざ新聞で公的サービスを後退させる議論までもってく必要なし。