ネオな麦茶 | 女子リベ  安原宏美--編集者のブログ

ネオな麦茶

戸塚先生、ヤンキー先生話題になってますね。なんで体罰とかになるのかよくわかりません。なにか「こうあるべし」と意気込むから殴りたくなるのかなあ、教師って。戸塚で思い出したんですが・・。


 私の大学生のころの夏休みのバイトは兵庫県西宮市の小学生がみな参加する「海の学校」の指導員をさせてもらっていました。

 今もそうなのかは知らないですが、西宮の海の学校は過酷です。9泊10日無人島に放り込まれます。無人島といっても「母と子の島」という兵庫県の島で施設はありますが村人はいません。今もやってるかどうかは知りませんが親御さんも大喜びのプログラムです。何せ始終まとわりついてるガキがなんと10日もいなくなるんですもの!


 で、学校の先生が確か2泊3日くらいまでしかお泊り実習に行けないか行かせないか忘れたんだけど、とりあえず、先生方は現地から代わり交代でいらっしゃいます。9泊10日子供たちの様子やらをトータルでみる人員が必要ってことで、教育大に兵庫県の教育委員会からバイトの案内がきます。9泊10日飯つきで日当確か1万円くらいになったので、よいバイトになるのと、将来教師になりたい学生ばっかりですから、実習としても勉強になるという意味で人気のバイトでございました。あと1回行くと指導員資格もらえるのよね。さらにいろんな学生同士のつながりもできて、「ステキな人に会えるかも!」という淡い恋の期待もあるわけです。


 9泊10日ですから、キャンプなどでやることはほぼ全部やります。飯盒炊飯、テント設営、暗夜行路、肝だめし、キャンプファイヤー、カッター、地引網、昆虫採集、お魚採りなどなど。

 養老先生が泣いてお喜びになるようなことをたくさんします。しかし島では親が聞いたら泣いて卒倒しそうなこともよくあります。


 実はあわや指導員同士の恋がなんていってる場合でないくらい忙しい。

 まず、学校から島までいく港へのバスの中。興奮して前日寝てないなど体調が万全でない子供もいます。どのバスでもガキが数名激しく酔います。同時多発ゲロ。私にとってはテロより怖いです。

 しかし、船は待ってくれません。激しく酔っているガキをさらに酔うであろう、船へ詰め込まなければなりません。「帰る?お母さん呼ぶ?」といっても真っ青になりながら顔をぶんぶん横にふる子どもたちばかりなので仕方ありません。「まあしゃあないなあーこれも人生やと思って吐くだけ吐こう!」


 そして島に到着します。少し休ませますが、1日目はテント設営です。酔ってるガキもみんなの仲間に入りたいのでこのへんでだいたい元気復活します。テント設営もするんですが。グループに分けて大量の麦茶製作部隊を作るのです。ここで、元気のいい男の子たちは山の中に昆虫とりに勝手に出かけ、プチ遭難してたり、都会にはいない巨大なめくじを枝に刺してもってきて、麦茶に放り込んだりするとんでもない奴もいます。ひとりやると数名マネします。麦茶へのなめくじ混入はなぜかどこの学校のガキもやります。もう怒りません。「君たちが飲む麦茶なんだけど。味見する?」とかいってほかのガキが「○○君 やめろやー!」という自然抑制を待ちます。なぜか「よっしゃ飲んでやる!」というナメクジだしの麦茶コップいっきのみというトンチキなガキもいます。「おーっ」とかいわれてますが、そんなとこで根性試しをしてどうすんかなと思うんですが、しかしこうやって人間はいろんな食べ物を発見したのではとも思われます。

余談ですがオーストラリアではアボリジニのたんぱく質源ってことで蛾の幼虫を食べます。これがかぶと虫の幼虫くらい立派なやつで、土の中で蒸し焼きにして節ごとにちぎって食べます。ちぎるときにびよーんとガムみたいにちぎれます。・・・ひえー・・・ぞぞー。これ子供といっしょに遠足で食べたのですが、最初に食ったのは先生ではなく子供です。こいつが無事なんだからと、おそるおそる食べてみたら、これは卵の黄身みたいでおいしかったです。先日新潟の出張先ではメダカの佃煮を食べました。こやつ小さいわりにほんとうにインパクトのある味で・・・しかし「水槽」の味がしました。コケの塊みたいなかんじでものすごくまずかったです。


 すいません話がズレました。1日目は外で焼きそば作ります。「具がこびりつくから、鉄板が熱くなってから、油入れてね。具入れてね~」というのですが、油を熱しすぎて、そっこうで具が燃え温度を下げようかと思って油をさらに混入!大量の油が熱されて「先生、きゃー焼きそば燃えてる~!」焼きそばに火柱が・・・。 

指導員同士では「焼きそばキャンプファイヤー」と呼んでいました。


 そして1日目、テントでお子様たちはお休みになるのですが。興奮して寝れないのよね。そして夜10時くらい。先生や私たちは施設棟にいるんですが、子供たちが数名きます。

 「先生!○○ちゃんが鼻血!」

 こんどは同時多発鼻血です。これもどこの学校もそうです。騒ぎに入りたいガキもいるので自分で鼻をほじって血を出している子もいます。テントをあけるとすごい熱気です。なんかやるといってもティッシュ鼻につめることくらいしかできないので、すべてのテントにティッシュを配っておきます。「まあ血がとまらないようだった施設棟おいで。でさあ、君らこのテントの中めちゃめちゃ暑いから下あけて風入れて」といって帰ります。

 こっちも先は長いのです。鼻血ごときでいちいち介抱はできませぬ。

 そしてだいたい3日目くらいに同時多発ホームシックがおいて、涙ながらの児童たちを海辺につれていって夜光虫を見せます。夜光虫がいる海の中で泳ぐと人のかたちに光ります。

身を呈して喜ばせます。けっこう海冷たかったりするわけで大変なんですよ指導員。ガキどもは大喜びでだいたい泣き止みます。

 そのへんに落ちているワカメをぶんぶんふるとワカメについてる夜光虫がシャンデリアのようにキラキラ光るので、なぜか初めての指導員のほうが感激して泣いてたりします。おまえが泣いてどうするよ。子供らは必ず「先生このワカメもってかえっていい?」って聞きます。「自然をうんぬん大事に」とか指導するとお思いかもしれませんが、まあ別に私がワカメと夜光虫の所有者じゃないですからね。お許しを出す立場にはないわけで。

 「まあ誰のもんでもないし、もってかえってもいいけど、ワカメ腐るとくさいよ~」とかいいます。ほんと臭いし。そばで「○○ちゃん、命は大事にせんとあかんで」という優等生もいます。

きみ、海の中で「ゴルゴ」の「命」とかやってくれたほうがおもしろいだけどな(笑)

  こういうのを「命の教育」とかいうんでしょうか・・・・。ワカメ毎日みそしるに浮かんで食ってるしな・・・。尾瀬で花摘むと極悪非道かもしれませんが、まあそのへんいいっぱい落ちてるワカメだしなあ。いつでもどこでもエコな子供って逆になあ・・・。あんまりセンスないんだよな~。おもしろいことを言ってほしいと思います(子どもにセンスを求めてどうするってかんじなんですが、大人にセンスは求めるわけで、いかんのだろうか)。

 

続く