これは傑作!「シェイプ・オブ・ウォーター」 | 帰ってきた神保町日記      ~Return to the Kingdom of Books~

これは傑作!「シェイプ・オブ・ウォーター」

『シェイプ・オブ・ウォーター』

 

 「パンズ・ラビリンス」を観て以来、ギレルモ・デル・トロ監督のファンだが、この作品はそれに劣らぬ大人のファンタジーの傑作。

 舞台は1962年のアメリカ。

 アメリカ軍の極秘研究施設で清掃員として働くイライザ。彼女は幼少の頃のトラウマで話せなくなっていた。

 ある日彼女は施設内で、アマゾンで捕らえられた半魚人に出会う。

 人間の言葉の通じない異性物だったが、話せない彼女はその半魚人と心を通わすようになる。

 しかし軍事的な研究対象として、半魚人は解剖されようとしていた。それを知ったイライザは、友人たちと半魚人を救い出そうと画策する。

 一方、ソ連はアメリカの利とさせないため、施設内にもぐり込ませていた研究者に、半魚人を殺害させようとしていた。

 

 冷戦真っ只中であり、人種差別がまだ色濃く残り、ベトナム戦争中でもある。

 互いを理解しようとせず、自らの主張こそが正義という雰囲気の時代。

 それは現代にも通じるところがある。

 米ソの争いの狭間で、人間性を否定する軍人たちと、人間性にこだわろうとする人々。

 人が人としてあるべきためには、何をなすべきなのか?

 異質なものを否定し、理解しようとしない軍人ばかりの施設の中で、半魚人のいちばんの理解者となるイライザ。

 コミュニケーションでいちばん大切なことは、言語でも会話力でもなく、相手を受け入れ、理解しようとする心。

 それは宗教、人種、文化の壁を乗り越えることも同じ。

 この映画は、異生物と人間との恋というお伽話の形を借りて、そのことを強く訴えかけている。

 もともとモンスター映画や日本の怪獣・特撮映画が好きで、それらに強い影響を受けてきたトロ監督。今作では「大アマゾンの半魚人」へオマージュを捧げつつ、ストーリーはもちろん、美術、衣装、音楽、映像と、監督のこだわりが隅々まで行き渡り、かつとてもセンスが良い。

 異生物のデザインも秀逸で、見ているうちにだんだんと愛着が湧いてくる。

 そう言えば先日、神保町にもやって来たギレルモ・デル・トロ監督。そのあたりにもセンスの良さが垣間見えます(笑)

 今年のアカデミー賞では主要部門を含む13部門でノミネートされている。これまでに見たノミネート作品の中では、断然この映画がおススメ!ぜひ作品賞と監督賞を取ってほしいなあ。