前項より続き

【前のめりの菅政権】

ただ、何よりも問題は、菅・民主党が「前のめり」で参院選の争点にしてしまった、消費税率引き上げの動きだ。

これについても、おかしなことが起きている。

松下政経塾出身の野田佳彦財務大臣は先週のG8サミット前にアメリカのジョン・ルース大使の前で次のような発言をしている。

産経新聞の記事。

(引用開始)

消費税増税論議「国民も理解」 野田財務相、米駐日大使に説明
2010.6.25 13:14

野田佳彦財務相は25日午前、都内で、ルース米駐日大使と会談した。野田財務相は参院選の争点となっている消費税率引き上げの議論について、「国民もだんだん理解し始めている」と述べた

会談は、ルース大使が要望した。

同大使は消費税のほか、日本経済の現状や成長戦略について質問した。(以下略)

『産経新聞』(2010年6月25日)
http://sankei.jp.msn.com/economy/finance/100625/fnc1006251315007-n1.htm
(引用終わり)


これは、野田財務大臣がルース大使に消費税率アップの世論形成の報告をしているご説明である。

もともと菅直人は鳩山政権の財務大臣の時代、消費税増税の条件として、「逆立ちしても鼻血も出ないほど、完全に無駄をなくしたと言えるまで来たとき、必要であれば措置をとる」としていたにも関わらず、しだいに財務官僚に取り込まれていった。

そもそも、消費税は逆進性も強い上、これを法人税減税のセットで行うことは結果的に法人減税のコストを消費税が担うこととなるだけで、果たして強い財政が実現できるかかなり疑問だ。

何より手順が乱暴だ。

ただ、野田大臣がわざわざルース大使に「世論形成」の成果を「ご報告」に向かっていることで、この政権が国民ではなくアメリカの方を向いていることがいよいよはっきりしたといえる。



そもそも菅直人首相の言う「強い経済、強い財政、強い社会保障という、いわゆるよく分からない「第3の道」はまず税率アップありきの政策である。

国民はそれに本気で怒らなければならない。


読売の世論調査(2010年6月12-13日)が消費税増税容認66%という数字を無理矢理にはじき出したようだ。

この調査手法にはきわめて問題がある。

正しい世論調査のやり方としては「あなたは消費税率の引き上げが必要だと思いますか」と単純に聞かなければならない。
(読売の調査結果:http://www.yomiuri.co.jp/feature/fe6100/koumoku/20100614.htm


ところが、この世論調査では前段に「財政再建や、社会保障制度を維持するために・・・・」と回答者を誘導する文言が入っている。

このような世論調査は信用できない。

いくらでも設問の作り方で世論が誘導できる。


だから、例えば、「菅新政権は無駄の削減や公務員制度改革よりも消費税の議論を参院選の争点に打ち出しましたが、あなたはこの姿勢に賛成ですか、反対ですか」という設問を使えば、8割は反対と出るのではないか。

おそらく大新聞は、都合の悪い調査結果の回の結果数字は発表せず、再度調査を行うなどのこともやってきていると思う。

世論調査の研究書を出している谷岡一郎という学者は「自分はどんな世論調査でも思い通りの結果を出す自信がある」と『社会調査のウソ』(文春新書)でに書いていた。

だから、私は現在の世論調査(電話世論調査)はまったく信用のできないと思う。

安易な電話世論調査を紙面を埋めるための手段として使っている大新聞が多い。

これは新聞の堕落である。
  
【小沢戦略にとってベストはあるのか】

この参院選、小沢一郎・前民主党幹事長にとってのベストシナリオは何か。

それは自分のグループに所属する新人候補を次々と当選させていくことである。

これはきわめて単純だ。

鍵となるのが小沢一郎が幹事長時代に、12ある2人当選区に現職やすでに公認されていた新人とは別に擁立した独自の新人候補(10選挙区に擁立)たちである。

なお、選挙区で1人しか当選しない「1人区」は全部で29ある。

それ以外には大都市圏で当選者数3とか5の複数区もある。(http://www.yomiuri.co.jp/election/sangiin/2010/news2/20100625-OYT1T00205.htm

 


【山梨県を訪れた小沢一郎・前幹事長】


当初の小沢戦略としては、鳩山政権なり、自分が主導権を握って樹立した菅政権のもとで、自分は選挙対策本部長か何かについて表舞台からは引っ込み、細野豪志あたりを幹事長に据えて選挙戦に突入するというシナリオだっただろう。


ところが、ご存じのように6月2日以降の「反小沢クーデター」が起きてしまった。


私はシナリオがここで崩れたのではないかとみている。


そして、菅首相が消費税を争点に選挙を始めてしまった。


これで相当に小沢は怒っている。


朝日新聞の6月28日記事


(貼り付け開始)


「約束、実行しなきゃ駄目」 小沢氏、菅執行部を批判
2010年6月28日22時2分

民主党の小沢一郎前幹事長は28日、党が子ども手当の満額支給断念など昨年の衆院選マニフェストを見直したことについて「約束は実行しなきゃ駄目だ。政権取ったら、カネがないからできません、そんな馬鹿なことがあるか」と述べ、菅執行部の対応を批判した。


愛媛県今治市での会合で語った。

小沢氏は公示日の24日は山梨、25日は青森と1人区を中心に選挙遊説を続けている。新執行部が人事や政策で「脱小沢」路線を進めたことに対し、様子見の姿勢を示していた小沢氏だが、選挙戦が始まってからは執行部批判を鮮明にした。


この日の会合で、小沢氏は「公然と政党が約束し、政権を与えられたのだから、やればできる。必ず私が微力を尽くし、約束通り実現できるよう頑張りたい」と強調。菅直人首相の「消費税10%」発言についても「一生懸命無駄を省き、最終的に4年たって、社会保障費などがどうしても足りないという場合は検討しなければならないが、(昨年の衆院選で)上げないと言ったんだから約束は守るべきだ」と訴えた。


会合後も収まりがつかない様子で、小沢氏は記者団に「国民の皆さんと約束したことは、何としても守らなければ社会は成り立たない。これでは結果としてうそをついたことになる」と述べた。

 

「朝日新聞」(2010年6月28日)

http://www2.asahi.com/senkyo2010/news/TKY201006280409.html

(貼り付け終わり)

 

このような小沢一郎が抱いた「怒り」を、実際のところは国民の多くが共有していると思う。

 

ところで、選挙では地上戦と空中戦がある。

参院選というのは本来ならば、労働組合とかゼネコン、農業団体とかの組織票を奪い合う「地上戦」である。

だから、消費税発言によって一番影響を受けるのはこの組織票ではなく、組織ではなく個人の人気や勢いといった要素に左右される「空中戦」で得られる浮動票でなのである。

逆に言えば「2人区」では黙っていても民主党は1人は当選する。

みんなの党などに有力な候補がいない限り、民主は1人は確保できる。

今の組織を握っているのは今は小沢一郎ではなく、新幹事長の枝野幸男であるということになっている。

選挙対策本部長の安住淳が枝野の「みんな」との連携発言を注意したと報じられた。

安住は、「ここで増税路線を打ち出した現執行部にそっぽを向いて民主党の組織が小沢側に転ばれてしまうと、小沢系の新人候補は浮動票ではなく組織票で当選する可能性が出てくる。選挙後も何が起きるか分からない」と警戒したのだろう。

消費税を巡っては、玄葉光一郎政調会長や小沢との間でもすでに「つばぜり合い」が起きてもいる。

ここまでの話をまとめると、参院選というのは基本的には組織票の選挙であり、今回は「2人区」の二人目の新人候補は基本的には「民主党」の風が無ければ当選が難しい例がかなりある、ということになる。

以下で各選挙区を見ていく。

参院選は、「現職」の議員は経歴を見るだけで、どういった組織が付いているか分かる人が多い。

そういう候補はガチガチに固めた組織票の奪い合いを自民党とやる。

だから浮動票である一般有権者の出る幕はない。

実際には相当難しいだろうが、2人区新人の「小沢系候補」が10人、それと複数区の小沢系と言われる候補が、世論の支持を得て全て当選していけば、小沢としては満足のいく結果のはずだ。

今の選挙情勢を見ると新執行部と旧執行部の大物が公然と論争する事態になっている。

これはもう分裂選挙だ。


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対米従属の自民党に別れを告げた筈ではなかったのか!

菅政権になり、民主党執行部はアメリカに魂を売ったのか、それとも虎視眈々と狙っていたのか?

終戦から今日まで、いまだ占領下にある日本を救うのは誰なのか?

その姿がだんだんはっきりと映る様になってきた事は確かだ!