Silk Degrees 試聴あり


76年発表。いわゆる、AORのはしりだ。アダルト・オリエンティド・ロック。大人の香り。


私の叔父に、四六時中イーグルスの「ホテル・カルフォルニア」をかけている人がいたのだが、私が幼い時彼の部屋に入ると、イーグルスやらボズ・スキャャッグスやらバンドやらのLPが、週刊「プレーボーイ」と一緒に産卵していた、いや、散乱していたものだ。イーグルスバンドは良いとしても、ボズのアルバム・ジャケットは、たとえば黒タイツをはいた女性の足の上にボズが寝ていたり、上のジャケットのように、どう見ても学校の先生(当時私が知っている若い女性は、母と学校の先生くらいだった)には見えない女性の手足がチラッと見えていたり。


ボズと週刊「プレーボーイ」。私は大人の階段をゆっくりとのぼり始めたのだ。


もともとアメリカ南部の出で、もっと土臭い音楽をやっていたボズが、のちにTOTOを結成するジェフ・ポーカロらと出会って、こんな洗練された都会的な音を鳴らした。「ウィアー・オール・アローン」「ハーバー・ライト」「ロウダウン」・・・。みんなが知っている有名曲がずらりと並んでいる。


カラオケで「マイ・ウェイ」歌うんやったら、ちょっとひねって「ウィアー・オール・アローン」歌った方がおしゃれやと思うね。これも結構盛り上がれる。


「ロウダウン」、ほんまによく聴いた。カセットテープで「オムニバス」とかいって、自分の好きな曲ばかりを編集していたけど、必ずこの曲は入っていた。AOR、大人のメランコリー。今から考えれば、それがスティーリー・ダンにつながり、キリンジにつながる系譜を自分で脈々とこしらえていたのだな。