今日は私が尊敬しているブロガーである 龍司さん のブログに書かれていた、米CBSがネット主体の配信にシフトして行くというニュースについて、米国在住者としての見地から、ちょっと書いてみたいと思います。


cbs



「米CBS、ブロードバンド主体の運営に戦略シフト」


なるほど。コレだけ聞いてしまうと「そりゃそーだよね」って思ってしまいますが、実際にアメリカに住んでいる人間であれば「んっ?ホントにちゃんと見れるの?」と、つい懐疑的になってしまうのは私だけでしょうか?


もし私が「ネット環境における米国と日本の大きな違いの一つ」を述べよと聞かれたら、まず始めに大声で「速度だよ。なんとかしてくれ!」と答えます。そうなんです。私も日本に住んでいたときは、まったく気付かなかったのですが、今や日本はADSL天国といわれた韓国を抜いて、高速ブロードバンド/低価格普及 No.1の国となりました。


総務省発行の平成16年情報通信白書によると、プロバイダの提供する価格比較で、100Kbpsあたりを伝送するのにかかる費用が、日本が 0.09 ドルで世界第1位、そして2位の韓国は 0.25 ドル、3位がベルギーの 1.15 ドル、その後は香港、シンガポール、ニュージーランド、中国などが続きます。


あれっ?アメリカは? そうなんです。意外にもIT先進国のイメージが強い

アメリカは10位で100Kbpsあたり 3.53 ドルと、実は日本の3.5倍となっており、ほんと日本と比べるとかなり「弱め」なサービスとなっています。


もちろん地域差もあるとは思いますが、私の住んでいるシアトルあたりだと、普通の家庭が入るようなインターネット接続サービスの速度は512Kbps程度です(しかもベストエフォートです)。それでいて広告には誇らしげに「Hi-Speed Internet」「Broad Band」と書いているあたりが、日本人の私からすると横を向いて「ふっ」と笑いが出てしまいます。


通常家庭で加入するのが、ベストエフォート512Kbps 50ドルぐらいで、オフィスなどで使われるビジネスパックというのが、ベストエフォート1.5Mbps 200ドルぐらいします。ほんと高いですよね。


なぜ、アメリカほどのIT先進国で、しかも裕福でお金のある国のネット環境がこんなに悪いのか?はじめは理解できず、うちの役員のアーロン君に聞いてみたところ、彼の答えはきわめて明確で、私もすぐに納得してしまいました。


アーロン君の答えは、ただ一言。

「それはアメリカが広いから」


そうなんです、アメリカは広すぎるのです。ご存知の方も多いと思いますが、ADSLなどはインターネット接続先の基地局から自宅までの距離が離れれば離れるほど、速度に関するクオリティは劣化してしまい、確か基地局から5kmも離れると、いくら50Mbpsのサービスに入っていても、実際に使えるのは512Kbps程度です。


だからアメリカでは住宅街なども広々としているため、どうしても基地局からの距離が離れてしまいます。先に説明した、低価格ブロードバンド世界比較も、日本、韓国、ベルギー、香港、シンガポール、ニュージランドと、上位にランクされているのは国土が狭い国ばかりだということに気付きます。


私のオフィスでも、たまにYahooBBの動画コンテンツや、GyaOなどを見ようとしても、結構プツプツと止まってしまって、お世辞にも快適とはいえない状況です。もちろんこれらのサービスは日本のネット環境で見ることを前提として、動画コンテンツを作られているからで、サービスサイドに一切問題があるわけはありません。


そんな状況を踏まえた上で、

今回の記事を再度しっかり読み込んでみると...


「ケーブルバイパス戦略の背景としてCBSは、2010年までにブロードバンド導入世帯がCATV導入世帯と同数かそれを上回るようになるとの予測を紹介。主要ニュースの大部分が報じられる時間帯は、CATVや衛星放送よりもブロードバンドの方がはるかに多く利用されていると指摘している。」


そうなんです! 2010年です!この記事からすると、CBSは2010年頃にやっと、ブロードバンドがアメリカに普及すると考えているわけです。


もちろん、動画コンテンツのクオリティを下げることで、現在の状況でも配信は可能であり、また彼らはそれらに合わせてコンテンツを提供していくのだと思いますが、いやはや、アメリカで日本と同じような環境で、ガンガン高品質の動画コンテンツを楽しむには、いったいどれぐらいの時間が必要なのでしょうか?


お客さまに満足して頂きながら高収益性を確保する、そんなデジタル・コンテンツ事業を考えるためには、いいコンテンツを提供するだけでなく、それぞれの国にあったネット配信環境を考慮しなければならいと再確認させられた記事でした。


■ 本日のオススメ本


総務省
情報通信白書〈平成15年版〉