バンコク郊外の Sirikit 王妃公園(下写真)の多くの花木には、タイ文字の花名に加えて、アルファベットで記された植物学上の学名と科名の標識板が取りつけてあるのですが・・・中には標識板のない花木もあったりして、個人的には、未だに名前不明のままになっている花が幾つかあります。
 
公園の正式名:Suan Somdet Phra-naagjao-Sirikit 
(สวนสมเด็จพระนางเจ้าสิริกิติ ฯ )

 

ところが、数日前に名無しの花の前に立ち止まると、正規の花名標識板ではないのですが、簡易のプラスチックケースの中に、タイ語とアルファベット文字で記された名札らしき紙が挿み込んでありました。

 

タイ名:ラントム・クルア

 

ลันทมเครือ、 Agaosma Siamensis Craib、 Apocynaceae

 

タイ名=ラントム・クルア、学名=Aganosma Siamensis Craib、科名=キョウチクトウ

 

名札の冒頭に書かれている『ラントム・クルア』(ลันทมเครือ)の名前を見て、目が点になってしまいました。 タイ語の『ラントム』(ลันทม)とは、良き芳香を放つ五弁の美花として遍く知られるインドソケイ(属名:プルメリア)のことを意味します。 

 

良き芳香を放つ五弁のインドソケイ(プルメリア)

 

ハワイの人々は、インドソケイの属名であるプルメリア(Plumeria)を、そのまま花名として呼んでいますので、此の手のプルメリアならば、皆様もよく御存知だろうと思います。 (上写真)

 

しかし、ラントム・クルア(เครือเครือ)の花弁は、どう贔屓目にみても、レイや女性の髪飾りやレイ、そして、女性が好きなスパのシンボルでもあるプルメリアの花と比較すると、似ても似つかないとても貧相な姿形(下写真)をしています。

 

タイ名:ラントム・クルア (意味:蔓性のプルメリア)

 

学名の『Aganosma Siamensis Craib』の中に付記してあるSiam(シャム)を連想させる

『Siamensis』から想像を逞しくすると、タイと極めて関係の深い植物のようにも思えます。しかし、タイ語WEBにアプローチしても、何の情報も得られません。

 

タイ語のラントム・クルアの『クルア』(เครือ)の意味をチェックすると、地面近くを横方向に這って伸びる蔓性の植物を意味するとあります。タイ語の『ルアイ』(เลื้อย)と同じ意味としてよく使われるタイ語の植物用語でした。

 

地面近くを横に這って伸びるラントム・クルア

 

空に向かって花弁を開くプルメリア(インドソケイ)と、地面近くを横方向に這うように伸びる蔓性のラントム・クルアは、科名は同じキョウチクトウ科であっても、花弁の形状も植物としての性状も大きく異なる花であることが分かります。

 

 

天空に向いて咲くプルメリア(Plumeria)

 

蔓性のラントム・クルアの学名の 『Aganosma Siamensis Craib』 に、タイの古い呼称に似た“Siamensis”が付加されていることから想像すると、ひょっとすると、タイ国内で発見された新品種の蔓性プルメリアかも知れないですね?  

 

もう少し時間を割いて、学名の“Siamensis”の意味するところを調べてみたいと思いますが・・・・どちらにしても、地面近くを横方向に這って伸びる蔓性のプルメリア(ラントム・クルア ลันทมเครือ)の存在を知ったことは格別の喜びでありました。