今にも雨が落ちて来そうな鉛色雲がバンコクの我が家の上空を覆っていますが、本日も所用があって外出しなければなりません。目的地は高架電車(BTS)が通じている地域に在るのですが、この状態では車で出かけた方が賢明のようです。

となれば、道路の混雑を考えて早めに家を出なければならず、腹ごしらえをと思って冷蔵庫の中を覗きこむと・・・1日前に果物店で購入した大粒の 『 リンチー・ジャカパット 』 の残りが目に留まりました。


普通のリンチーの直径は2-3cm程度のものが多いのですが、『 リンチー・ジャカパット ลิ้นจี่จักรพรรดิ 』 は、『 皇帝のリンチー 』 と呼ばれるだけあって、果肉の直径がほぼ4cmもある大玉です。

冷蔵庫内の 『 リンチー・ジャカパット ลิ้นจี่จักรพรรดิ 』 は、通常価格1kg=92バーツ だったのですが、タイム・セールスの特別売り出し価格1kg=52バーツ だと言うので、即!、一束
78バーツ=¥197/1.5kg で衝動買いしたものでした。



タイに魅せられてロングステイ
表皮は赤味を帯びたウロコの凹凸模様。新鮮なものほど凸凹が強いそうです。


リンチー・ジャカパット 』 ลิ้นจี่จักรพรรดิ と言えば、その昔、中国(唐)の玄宗皇帝が、愛する楊貴妃のために、嶺南で栽培された『 リンチ・ジャカパット 』 ( 皇帝のリンチー ) を首都の長安まで数千里の道を運ばせた故事で遍く知られていますね。

嶺南(れいなん)と言っても、福井県南部の若狭湾沿岸の事ではなくて、中国南部の南嶺山脈よりも南に位置する広東省、広西省、海南省辺りのことで、首都の長安までは騎馬で八日八晩を要したそうです。

嶺南地方は、南嶺山脈によって遮られているために、現在でも首都・北京とはかなり異なった気候、言葉、食物習慣、文化が色濃く残っていて、北京駐在時代に中国の彼方此方に出張することの多かった僕ですが、嶺南地域への出張を心待ちにしていた記憶が残っています。


話を本筋に戻しましょう。
リンチー 』 は、熟度が上がって果皮が赤くなるにつれて酸味が甘さに変化して美味しくなります。タイ人は完熟したリンチーのなんとも表現し難い果皮の赤色のことを 『 スィー・リンチ สีลิ้นจี่ 』 (リンチー色)と呼んで愛しみます。

しかし、リンチーは傷みやすく、収穫後3日余りもすると果実の表皮が黒っぽくなって味が
一気に落ちるようです。収穫時期に運悪く雨に打たれ過ぎたりすると、品質劣化の進みが早くて商品価値は急速に下落すると聞きました。



タイに魅せられてロングステイ
果皮を剥くと多汁を多く含んだ白色半透明の果肉が現れます。


リンチー 』 の果皮は軽く手爪を立てれば簡単に剥けます。爪の短い人は、包丁でほんの少し切れ目を入れれば、容易に多汁を多く含んだ白色半透明の果肉を取り出すことが出来ます。

リンチー 』 の最大特徴は、うっとりするほど美味しくて甘い多汁にあると思います。リンチーの100g当たりの含有水分が約82%とあると知って大いに納得です。



このブログでは此の果物の名をタイ語の 『 リンチー ลิ้นจี่ 』 としていますが、その語源は、『 リンチー 』 の原産地とされる閩南地方(ビンナン)の呼称である 『 茘枝 』 (lāi-chi)に由ると思われます。タイ語だけではなく、英語(lychee)、日本語(レイシ)、北京語( Lìzhī )の語源も同じだと思います。  

閩南語(ビンナンゴ)とは、泉州、厦門などの地域で話されている言葉のようですが、その昔、閩南地方からタイに移り住んだ多くの中国系タイ人(華僑、華人、華生)は、閩南語のことを福建省南部の方言だと言っていたのを聞いた覚えがあります。


タイに魅せられてロングステイ
タイのリンチー・ジャカパット種の多くは、タイ北部で栽培されているようです。

リンチーの食べ方としては、果皮を剥いた果肉をそのまま口の中に頬張れば良いのですが、果肉の一端にくっ付いた大きな種子を一つだけ内包していますので、舌先を使って上手に抉り取ってから香ばしい多汁を含んだ果肉を楽しみます。

以前にもリンチーの事を二度ばかりブログに書いたことがありますが、その時に2つの願望を書き残した事を覚えています。

リンチーの黄緑色の花が咲く光景を見てみたい!
新品種の種なしリンチー・ラーイ・メッツ ลิ้นจี่ไร้เม็ด を食べてみたい



その後も、2つの願望は実現していないのですが・・・来年あたりにはなんとかしたいものだと思っています。



≪参考≫
学 名: Litchi chinensis
科 名: ムクロジ科 Sapindaceae
属 名: レイシ属  Litchi
種 名: レイシ L. chinensis
樹 木: 常緑高木(7-10m)
葉  : 偶数羽状複葉の互生(2-4対の小葉)
葉 花: 枝先に花弁の無い黄緑色花を咲かせる。
原 産: 中国南部の熱帯・亜熱帯

閩南語:荔枝(lāi-chi)
北京語:Lìzhī )
英語名:Lychee
広東語:lai-ji1)
日本語:レイシ
タイ語:リンチー ลิ้นจี่