かなり昔にタイ語を教えて貰ったことのある女教師と雑談をしている内に、タイで大地震が起こるか如何かという、穏やかではない話題になってしまいました。

     彼女 『 タイ国内で大地震が発生することはないと思うわ 』
     僕   『 どうして、そんなことが分かるの? 』
     彼女 『 タイ政府がそう言っているのを聞いたことがあるわ 』
     僕   『 でも、タイには13の活断層が在ると聞いているよ 』
     彼女 『 小さな活断層なので、大地震を起こす力は無いそうよ 』
     僕   『 小さな地震でも簡単に倒壊しそうな建物が多いと思うけれど・・・』


バンコクの日系建設会社の日本人に聞いた話だと、2008年(?)以前までのタイの建築設計基準は、建物の耐自重と耐風圧の基準はあっても、耐震性の設計基準は全く無く、最近になって、高さ15m以上の建物に耐震性が求められるようになったようです。

     彼女 『 バンコクの建物が、地震で壊れたなんて聞いたことないわ 』

       タイに魅せられてロングステイ 
         カット写真:西暦1544年、大地震で崩壊したチェンマイのチェディ・ルアン寺の仏塔


西暦460年頃(大和時代初期)、タイ北部のチェンセンで地震が発生、4つの町が水没、王様と多くの人民が死亡したと書かれた文献があることを、通学していたタイの大学の先生から聞いたと彼女に告げても・・・

     彼女 『 そんな大昔の地震の話なんて信じられないわ 』

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         カット写真:西暦1544年、大地震で崩壊したチェンマイのチェディ・ルアン寺の仏塔


西暦1434年(室町時代初期)、タイ北部のチェンラーイで地震が発生、倒壊した寺院(注1)の仏塔の中から、現在、バンコクの王宮寺院に祀られている翡翠の仏像(注2)が発見されたことを話すと・・・ 


     彼女 『 それも随分と古い話だわね 』

     (注1)
現在のプラケーオ・チェンラーイ寺院 (当時の名はパーイア寺院 วัดป่าเยี้ยะ 
     (注2)
プラ ケーオ モラコットพระแก้วมรกต (聖なるエメラルド仏)

       タイに魅せられてロングステイ 
        カット写真:大地震で崩壊したチェンマイのチェディ・ルアン寺の仏塔東面の壁龕


チェンラーイの地震で発見された翡翠の仏像(注2)は、その後、ラムパーンの寺院を経て、チェンマイのチェディ・ルアン寺院 (วัดเจดีย์หลวง)の仏塔東面の壁龕(へきがん)に安置(1468年)されるのですが、西暦1544年に起こった大地震によって、高さ85mの仏塔は土台だけを残して崩壊してしまいます。

これこそ第一級の歴史資料が残っていることを強調したのですが・・・


     彼女 『 遥か遠くのタイ北部の地震だからバンコクは全然影響ないわ 』 


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        カット写真:大地震で崩壊したチェディ・ルアン寺の仏塔東面の現在の壁龕


  僕   『 今年の3月24日の夜9時頃、バンコクが地震で揺れたの憶えてる? 』
  彼女 『 忘れるわけがないわ! 怖くなってマンションの外に飛び出したのよ! 』 

2011年3月24日午後8時55分(タイ時間)、タイ北部チェンラーイと国境を接するミャンマー・シャン州の地下10kmを震源地とするマグニチュード6・8の地震が発生。震源地から約800km離れたバンコクも大きな振幅で1分間以上ゆっくりと揺れたのです。

僕の感覚では、震度3程度の揺れだと思うのですが、地震に慣れていないタイ人の多くは、あまりの怖さに耐えかねて建物の外に一斉に飛び出し・・・それはもう大騒ぎでした。


       タイに魅せられてロングステイ 
        タイ北部のミャンマーとの国境線に連なる大活断層を抱き込んだ山並み


タイ国内にある13の活断層はM5-6程度の小さな規模かもしれませんが、タイ北部(チェンラーイ県)とタイ西部(カーンチャナブリー県)で国境を接するミャンマー国内の地下には、M6-9規模の大地震を起こし得る大活断層があることが分かっています。

悪戯に不安を煽るつもりは毛頭ありませんが、若しも、M6-9規模の地震が、バンコクから僅か200kmしか離れていないタイ西部のミャンマー国内の大活断層で発生したとするならば、バンコクはどのような事態に陥るのでしょうか? 


       タイに魅せられてロングステイ
        タイ西部カーンチャナブリー県の国境線に連なる大活断層を抱き込んだ山並み


最近になって、タイ政府は、今まで指定していたタイ北部10県の地震可能性地域に加えて、タイ西部カーンチャナブリー県と国境を接するミャンマーの大活断層の危険性を考慮して、新たにサムットサーコン県、首都バンコク、パトゥムタニー県、サムットプラカーン県などを地震可能性地域として追加指定しました。

タイ南部(プーケット)の津波災害を契機にして、タイにも国家災害警報システム財団が設けられたと聞いています。 タイ北部や西部に大地震を引き起こす大活断層を抱え込んでいるのですから、地震に関するタイ国民への啓蒙(脅しではなく)をもっと徹底して行うべきだと思うのですが・・・

2011年3月24日午後8時55分頃、タイ北部でM6・8の地震が発生した時・・・僕はゆっくりと揺れ動くバンコクの自宅でTVを見ていたのですが・・・タイのTVは何も報じませんでした。
30分以上も経過したころになって、漸く簡単な結果報知のニュースだけが流れ始めたのですが、まるで危機感は無し! TVの持つ警報性も速報性も生かされていませんでした。
       
     彼女 『 hiro-1さんは、バンコクの地震が怖いから東京に戻るの? 』
     僕   『 戻るつもりは全然ないよ 』 
     彼女 『 エッツ? どうしてなの? 』
     僕   『 バンコクの方が、僕の気持ちに合っているからね 』 
     彼女 『 なんだ、そうなの、バンコクの方が安全なの、良かった! 』
     僕   『 そうじゃなくて・・・まーいいか 』