表題は「進行波炉」と訳されています、略して「TWR」。
ちょうど一年前に「新型原子炉」ということでブログを書いているのですが、中身がわかってきました。

http://ameblo.jp/hiranoxx/entry-10489588658.html


ビル・ゲイツ氏が出資するベンチャー企業「Terra Power」東芝と提携して開発しようとしています。
これには東芝が別途開発を進めている小型原子炉の技術が80%ほど流用できるようです。
15年以内の商業運転を目指しています。
今の原子炉がなぜ暴走するのかというと、自然界に0.72%しか存在しないウラン235を3~5%に濃縮して核分裂連鎖反応をする状態(臨界)にしているからです。
反応が暴走しないように制御棒で中性子の量をコントロールしています。
制御に失敗をすれば燃料全体が一度に全部燃えてしまう、チェルノブイリのような事故も起こります。


ところが新型原子炉では、劣化ウランを燃料にするため、そのままでは燃えません。
私の1年前のブログにも書いているのですが、中性子を補ってやらないと燃えないのです。
言わば「種火」が必要です。
その種火には、濃縮ウランを使います。
着火するとはどういうことかと言うと、
劣化ウランの大部分はウラン238です。
そこに中性子が飛び込むと、Np239(ネプツニウム)になり、電子とニュートリノを放出しながらプルトニウム239になります。プルトニウムが核分裂をしてホントの燃料になります。
つまり、ちょっとずつ燃料を作りながら燃えるので一度に全部燃えてしまうことはありません。
しかも、プルトニウムを作る端から燃やすので、プルトニウムが溜まることがなく、軍事転用もできません。
二重の意味で安全な原子炉です。
冷却剤にナトリウムを使うのがちょっと怖いくらいです。
ナトリウムは、火災になったとき水が使えません。
水をかけると、激しく発熱しながら水素発生してさらにひどい事態になります。
今でも、そういうタイプの事故はあるので、福島で起きていることに比べたら大したことはありません。


反応する部分が移動するため、進行波炉という名前になります。
ひらのXX的日常-terra1 着火!
ひらのXX的日常-terra2 3年後

ひらのXX的日常-terra3 60年後
この図では60年かけて燃やしますが、最長100年燃料を入れ換えずに運転します。
しかし、100年間中性子を受け続けて強度を保つ材料があるのか?
そこが技術的なポイントになります。
中国もこのタイプの原子炉を開発すると発表したところです。
もう、東芝には中国人の美人スパイが送り込まれているのでしょうか?


以上、ウラン238を使う劣化ウランタイプの説明ですが、トリウムを使うタイプもあります。
ひらのXX的日常-terra4

トリウムはウランより数倍埋蔵量が多いので、資源的に有利です。
トリウム232に中性子を当てると、プロトアクチニウム233になり、電子(=ベータ線)とニュートリノを放出しながらウラン233になり、核分裂を起こす燃料となります。
資料は、TerraPower LLC(日本でいう合同会社に近い)の資料です。


全文を英語でご覧になりたい方はこちらにどうぞ。

http://www.nuc.berkeley.edu/files/TerraPowerGilleland.pdf


ところで、プルトニウムはローマの神話に出てくる冥界の神プルートーにちなんでいます。ネプツニウムは同じく海の神ネプチューンから。
ウラニウムは、ローマ神話の元ギリシャ神話の天空の神ウラヌスから来ています。