愛を綴る女 [DVD] 愛を綴る女 [DVD]
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ミレーナ・アグスの小説「祖母の手帖」を映画化した作品。原作は未読です。

 

若く美貌にも恵まれたガブリエルは、南フランスの小さな村で両親と妹と一緒に暮らしていました。彼女は、真実の愛理想の結婚を追い求めていましたが、なかなか思うような相手には出会えずにいました。そんな中、地元の教師に対する一方的な恋に破れます。娘を心配したガブリエルの両親は、ガブリエルを真面目で心優しいスペイン人労働者、ジョゼと結婚させることを決めてしまいます。互いに相手を愛さないと宣言しての結婚でしたが、ジョゼは、彼女に献身的に接します。ある日、ガブリエルに結石があることが分かり、その治療のためにアルプスの療養所に入ることになり...。

 

"真実の愛"を求める夢見る少女であり続けるガブリエルが、あまりに自己中で我儘に見えますが、どうやらジョゼは、ガブリエルの性格や奇異にも見える言動の原因は、彼女の育てられ方にあると受け止めている様子で、彼女の母にガブリエルは愛され方を知らないと皮肉を言っている場面もあり、彼女の過去には色々あったことが仄めかされています。ただ、この部分の描写が弱く、ガブリエルがあまりにジョゼの献身に対して冷淡で自分勝手にしか見受けられないところが残念でした。

 

そして、ジョゼがガブリエルとの結婚を承諾した背景も、もう少し丁寧に描いて欲しかった感じがします。故郷のスペインを離れ、フランスで働く彼にとって、フランス人との結婚は意味のあるものだったかもしれません。ジョゼが、ただただ献身的で成人君主のような雰囲気になってしまっていますが、彼にも彼の必要性があっての結婚で、痛みや悩みを抱えながらの愛情という形の方が、彼の献身にリアリティが生れたような気がします。

 

互いに相手を愛さないと誓い合った結婚。その果てに見えた一筋の光。愛のない結婚からでも深い本物の愛情が生れる、そこに人間のひとつの可能性が見えてくるような感じがする心に沁みるラストでした。ジョゼが明かした彼の行動の理由、そして、ガブリエルが見せた落ち着いた穏やかな微笑み。この先に広がる幸せを感じさせてくれます。まぁ、もっとも、この部分は、もう少し控えめに抑えた表現にして、その後を観る者の想像に委ねた方が余韻が深くなったかもしれませんが...。

 

観てよかったと思います。