フィリピン、マニラ。親を知らずにスラム街で生活してきた少女ブランカは、ある時、欲しかった母親をお金で買おうと思いつきます。そんな中、彼女はピーターという盲目のギター弾きと知り合い、歌でお金を稼ぐようになります。ピーターの演奏をバックに路上で歌っていた彼女は、スカウトされ、レストランで歌い始めますが...。

 

厳しい環境を生き抜く子どもたち。その逞しさには圧倒されます。日々の生業として、というか生きる手段としての盗み。その手口の鮮やかさというより、あまりに当たり前に罪を犯す姿、慣れた手つきに、スラムを生き抜く子どもたちの状況を実感させられます。

 

ブランカの「大人は子どもを買うことがあるのに、何故、子どもが大人を買ってはいけないの?」というセリフが鋭いです。確かに。本当は、どちらもダメなのですが、現実に大人による人身売買はいつの時代も世界各地で行われてきたわけで...。本作にも、ブランカから"母親の代金"3万ペソを受け取った上にブランカを売ろうとするオバチャンが登場しますし...。

 

スラムで生活する厳しさや酷さと、ギリギリの日々の中にも生まれる優しさや温かさが混在する作品です。

 

ブランカが出会う"兄弟"、ラウルとセバスチャン。まだ幼いセバスチャンは、お金が全てではないという結論に達しますが、ラウルは、お金第一を貫きます。

 

ラウルの心は、彼の過酷な短い人生の中で、"人の心"が沁みていかない程まで、固められてしまったのかもしれません。セバスチャンを失った彼は、どう生きていくのでしょうか。新たな"手下"を見つけて同じ生活を続けるのでしょうか。ラストの場面で、不在の彼に今後が気になりました。

 

ブランカの歌が良かったです。曲も歌詞も、彼女の歌声も。

 

80分を切る短い作品ですが、その中に、巧くストーリーがまとめられ、心揺さぶられる作品になっています。お勧めです。

 

 

公式サイト

http://www.transformer.co.jp/m/blanka/