カナダ、モントリオール郊外。作家のトマスはスランプに陥り、恋人サラとの関係もギクシャクしていました。そんなある日、雪の積もった道を車で走っていたトマスは、飛び出してきた幼い少年を避けきれずに轢いてしまい...。

 

事故の背景に悪意が存在していなかったのは事実だと思います。ただ、それでも、"誰のせいでもない"というよりは、"ちょっとずつ皆がよくなかった"といった感じでしょうか。トマスが不注意だったのは確かだし、年齢を考えれば仕方ない面はあるにせよ子どもたちがもうちょっと慎重であれば避けられた事故だし、子どもたちの母、ケイトにしても小さな子どもたちを2人だけで放置したのは良くなかったのは確か。

 

原題は「EVERY THING WILL FINE」。何があってもどうにかなるとか、きっとうまくいくといった意味になるでしょうか。どんな悲劇があっても、やがて人は立ち直り、新たな歩みを始めるということなのでしょう。この邦題、ちょっと違うような...。

 

で、事故の加害者と被害者、双方の事故後の10年が描かれます。それぞれに事故により傷を負い、人生を変えられていくのですが、どうも、その辺りの描き方が薄く、それぞれが抱えたものの重さが伝わってきません。

 

心に染み入るような映像の美しさは印象に残りました。特に光と影が見事でした。冒頭の事故の描き方、助かってよかったと思わせておいて、遊んでいた子どもが1人ではなく2人だったことに気付かせる見せ方も巧く、引き込まれました。

 

ただ、その後は、全体に淡々と薄味になってしまった感じがします。2年後、4年後...と飛ばしながらではありましたが、事故から10年という長い年月を描こうとしたのは、やはり、無理があったのかもしれません。トマスとケイトの関係もどうもよく分からないというか、違和感あるというか...。民族や文化の違いもあるのでしょうか...。

 

登場人物たちの心情の描写が薄いために、ラストもアレって感じで...。

 

もっと心揺さぶられるような作品になる可能性のある素材だとは思うのですが...。残念でした。