アルジェの戦い [DVD] アルジェの戦い [DVD]
2,052円
Amazon

 

 

1954年から1962年のアルジェリア戦争(アルジェリアがフランスの支配に対するアルジェリアの独立戦争)をドキュメンタリータッチで描いた作品です。

 

作られた映画を観ているというより、今、ここで起きている出来事のニュース映像を観ているような臨場感がありました。

 

「アラブを追い出せば平和になる。」という声が上がる場面があります。私たちはまた同じことを繰り返そうとしているのでしょうか。モノクロの映像は、確かに、かなり前の作品であること、描かれている内容も相当前の出来事であることを示しているのですが、まるで、現在を描写しているようにも見えます。歴史に学ぶ力を身につけることができない私たちの姿がそこに重なり、そこに、一番の恐ろしさを感じました。

 

記者会見で、フランスから派遣された空挺師団を率いる陸軍中佐による「兵士の中にはレジスタンスの闘士だった者も強制収容所を生き抜いた者も多い」との発言があります。自分たちの正当な権利である自由を求めて戦った者たちが立場が変われば、当然の自由を求めて戦う者たちを不法に抑圧することになる。それも、私たちが歴史の中で繰り返してきたことです。

 

戦争や革命に勝利するのに必要なのは暴力ではなく民衆の行動。
テロが有効なのは最初のうちだけ。
本当に困難なのは戦いに勝利したあと。
作中のFLN幹部ベン・ムヒディの言葉が胸に沁みます。その視点を持ちながらもテロに走らざるを得なかった悲劇。

 

弱い立場の者たちでも過激な行動を取れば世界の注目を集めやすい。けれど、それにより、権力の側に口実を与えてしまう。そして、暴力が連鎖する。どこかで、一旦、落ち着いても、何かのきっかけで、血で血を洗った恨みが吹き出してしまう...。

 

どちらも、完全な正義ではなく、完全な悪でもありません。独立を勝ち取ろうとする側、“テロを制圧”しようとする側、双方の視点に立った冷静な眼差しが印象的です。

 

何かとキナ臭くなってきている今こそ、観るべき作品だと思います。