雨のニューオリンズ [DVD]/チャールズ・ブロンソン
¥1,500
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テネシー・ウィリアムズ作の一幕劇「財産没収」を映画化した作品です。

不況にあえぐミシシッピー州の田舎町、ドッドスン。鉄道会社から人員整理をするために送り込まれたオーエンは、シングルマザーのヘイゼルが経営する下宿屋に滞在します。ヘイゼルには、地元一番の美人と評判の高い長女、アルバと、まだ幼い次女のウィリーの2人の娘がいました。アルバに言い寄る男は沢山いましたが、彼女は都会的な雰囲気のオーエンに惹かれていきます。そんな中、ヘイゼルは、自分たちの暮らしを楽にするためにアルバを裕福だけれど妻もいる老人の愛人にしようとしていて...。
 
自身の魅力を十分に自覚しながら男たちを振り回すアルバは、魅惑的で小悪魔的で、存在感たっぷりです。そして、そんなアルバが、オーエンのもとに行き、実に甲斐甲斐しい"世話女房"になります。最初はツンツンしていましたが、デレデレな乙女な姿を見せます。アルバを演じるナタリー・ウッドの魅力全開。見事な存在感を出しています。ロバート・レッドフォードも閉塞感たっぷりの田舎町に都会の清々しさを吹き込んでいて、アルバを虜にするのももっともな好青年ですし、若きチャールズ・ブロンソンもチョイ役ながらしっかりとした存在感を出しているのですが、本作はナタリー・ウッドのための作品と言っていいでしょう。
 
実の娘であるアルバを売って楽な暮らしを手に入れようとするヘイゼルは、どうしようもない母親でしょう。ただ、不況の田舎町で浮上する一度きりであろうチャンスに目が眩んでしまう弱さを責めるのも酷なのかもしれません。ヘイゼルは自分の生活のためにアルバを利用しようとし、アルバは町を抜け出すために母の愛人、JJを利用します。似た者親子だということなのかもしれませんが、自分の力で生きる道を見出すことが難しい田舎町に押し込められた女の宿命を背負った哀しさがここに現れているのかもしれません。ヘイゼルも、下宿屋をしながら、何とか踏ん張ってきたのですから。

アルバが実家にはがきを出してしまう辺り、いくら何でも不用心ですし、JJとの結婚のことはどうするつもりだったのかという問題もありますが、オーエンとの"新婚生活"に舞い上がっていたということでしょうか。ドッドソンで男たちを軽くあしらっていたアルバのいかにも子どもな面を見せるエピソードということなのかもしれません。
 
アルバの"その後"を映像で見せることなくウィリーに語らせるラストは印象的。ウィリーの姿に、アルバの生活のありようも感じさせられますし、ウィリー自身の将来のついても想像させられます。自身の状況を嘆くこともなく、誰かを恨む様子もなく、淡々と悲劇を語る姿は、彼女の逞しさを示すのか、悲しさを感じるゆとりすら持てなくなっていることを示すのか...。余韻の残るラストでした。