1963年に放映が始まった国産初の連続テレビアニメ「鉄腕アトム」の音響効果を務めた音響デザイナー、大野松雄を追ったドキュメンタリー。1950年代に生まれたばかりの電子音楽の技術で未来都市の音を創造し、日本の音響界に多大な影響を与えた彼の功績を辿ります。

 

大野松雄を追ったドキュメンタリーであると同時に、日本の音響効果の歴史を紐解く作品となっています。"音響の仕事"について、きちんとした知識を持っていなかったので、改めて、音響の仕事の重要性、その技の凄さについて認識させられました。いろいろな種類の鳥の鳴き声が示される場面で、我が家の犬が本物の鳥が集まっていると思ったのか不思議そうにテレビのモニターに見入っていたのは面白かったです。

 

最初の1/3以上、大野自身は登場しません。まぁ、メジャーな作品の製作に参加しなくなって久しいので、彼の業績を描くうえで、本人の不在は全く問題ないということなのでしょう。

 

そして、その後、"現在の本人"が登場するのですが、最初の分部で語られたイメージとは違った人の良いお爺さん的な雰囲気に驚かされました。

 

活動する場を変えながらも、まだ聞いたことのない未知の音を追及するという姿勢は変わらず、80歳という年齢を感じさせないパワフルな姿自体が感動的ですらありました。

 

大野の説く"プロフェッショナルの条件"が面白かったです。ひとつは、いつでもアマチュアに戻れること、もうひとつは、どんなに手を抜いても相手をだまくらかせること。なかなかユニークな考え方ですが、成程と思わされる部分もあります。プロである以上、一生懸命かどうかではなく、結果で勝負すべき、さすがと思わせる結果を出すこと、顧客を満足させることこそプロの価値ということなのかもしれません。まぁ、この大野の説自体、"いい加減"なのかもしれませんが...。