オーストラリア人の俳優、デイモン・ガモーは恋人の影響でナチュラル志向に転向し、ヘルシーな食生活を心掛けていました。子どもの誕生を目前に控えたある日、「オーストラリア人は1日平均スプーン40杯分の砂糖を摂っている」と知りがく然とします。デイモンは60日間ジュースやシリアルなど、"ヘルシー"と言われている食品を中心に1日にスプーン40杯の砂糖を摂り、自らの体の変化を観察していきます。

 

以前、「スーパーサイズ・ミー」というマクドナルドのメニューを食べ続けたらどうなるかを実体験した様子を描いたドキュメンタリー映画が話題になりました。本作は、その砂糖版です。

 

「スーパーサイズ・ミー」は、一般t期に健康に悪いと認識されている食品を摂っていたのに比べ、本作では、"ヘルシー"な食品で健康を害しているだけに衝撃度はより大きくなっています。

 

糖質制限ダイエットが流行るのももっともなことかもしれません。実は、私自身も、"スイーツ大好き"、"白いご飯大好き"、"うどん大好き"な、"炭水化物万歳"生活の中で、体重を増やしていたのですが、3年ほど前、ダイエットを決意。周囲で流行っていて、効果が出ている人が多かった糖質制限ダイエットを決行(といっても、ストレスにならない程度に、ホンの一口のご飯とちょっとの甘いものは摂っていましたが)し、1年半で14kgのダイエットに成功。糖質を制限し始めた頃の禁断症状のような辛さで、炭水化物の中毒性を実感したりしました。まぁ、今でも、1日1口のご飯かジャムを塗ったパン1枚は食べるし、ちょっとのお菓子も食べるし、炭水化物はある程度、摂取していますが、それでも、肥満は改善できたし、以前のご飯モリモリの日々に比べ倦怠感などは随分なくなったし、いろいろなめんで炭水化物を減らした効果を実感しています。ですから、本作の内容については、強く、共感できました。

 

炭酸飲料のメーカーが移動歯科診療のための車を寄付を申し出たという話題も取り上げられていますが、笑うに笑えない"ブラック・ジョーク"です。虫歯の原因を売って儲けて、その儲けの中から虫歯を治療するための設備を寄付する。それで治療を受けた者は、治療を受けなければならない原因となった炭酸飲料を飲み続ける。そして、一方で、"肥満=無能"とされ、歯が綺麗なこともきちんとした生活をしている人間であることの証左とされるアメリカですから、メーカーのトップの人たちは、炭酸飲料爆のみなど絶対にしないのでしょう。

 

糖が貴重で、チャンスがあったら砂糖を摂る必要があった時代を長く過ごした人類は、糖をより多く摂取し、溜めこもうとする機能を身に着けてきたわけですが、今は、少なくとも先進国においては、相当な量の砂糖が身近なあちこちに潜んでいて、かなり気を付けないと過剰に摂取してしまうものとなっています。

 

手軽さ、便利さを求め続けて"発展"してきた私たちは、いつの間にか、痛くも痒くもない危険に取り囲まれてしまったようです。

 

砂糖を巡る真面目な情報を取り入れながら、体型の変化をコミカルに見せています。ナレーションもユーモラスで、映像も明るくポップな雰囲気、でありながら、専門家も登場し、科学的な情報もきちんと取り入れられています。テンポも軽快で、飽きずに観ることができますし、硬軟がバランスよく構成され、楽しくお勉強させてくれる作品となっています。

 

ただ、本作では、果糖が一番の問題であるように描かれていますが、実際は、ブドウ糖や他の炭水化物も問題なのではないかと...。その点については、物足りなさもありますが、現代の先進国に生きる人にとって、一度は観ておくべき作品だと思います。