幼い頃からの親友の突然の死に動揺する夏実は、ある時、よく行く喫茶店のバイトの青年に声をかけられます。

夏希はケータリングの仕事をしています。ある日、突然訪ねてきた青年に、かつて母と自分を捨てて出ていた父の消息を知らされ、迷いながらも、ついに会いに行きます。一方、夏生は借金の取り立てを生業としていました。不意に別れ別れになっていた妹を思い出し訪ねていきます。突然現れた夏生に妹は激しく反発します。夏希と父、夏生と妹、それぞれ2人での生活が始まり...。

 

兄と妹、父と娘の物語が並行して描かれるのですが、その2つが、別の世代の男女の物語を動かしていくという構成は悪くなかったと思います。そして、夏希を演じた中村映里子、夏希に父の消息を知らせる青年を演じた池松壮亮、夏希の父を演じた光石研の繊細な感情の表現には胸に迫るものがありました。

 

"憎むより許す方が簡単"。それはそうなのですが、そこに行き着くまでの苦しさが今一つ伝わってこないというか...。"愛の反対は憎しみではなく、無視すること。"無視したくても憎んでしまう辛さ、憎い憎いと思いながら繫がりを断ち切れない苦しさが、突発的な感情として描かれているので違和感があるのかもしれません。そうした感情がじわじわとシミが拡がるように描かれていれば、もっと登場人物たちに心を寄せることができたような気がするのですが...。

 

そして、映画としては比較的短い時間の中で描き切れなかったのか、登場人物たちの感情が変にポンと飛ぶところがあり、物語の流れがギクシャクした感じがします。「憎んでいないからきついんだ」のセリフも唐突な感じがしました。それまでの描写が"憎んでいる"という感じで、"憎みきれない辛さ"があまり感じられなかったですし...。

 

素材やテーマは面白いのに、こなれていないというか、表現として生々しすぎるというか、良く言えば若々しく、悪く言えば未熟な感じがハナについてしまいます。

 

面白くなる要素が色々あっただけに残念。