アフガン・レポート [DVD]/デヴィッド・エリオット,マーク・スタンリー,スコット・カイル
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2001年9月11日にアメリカで起きた同時多発テロ事件を受けて、アメリカ主導の下に始まった対テロ戦争にイギリスも参加。タリバン勢力を掃討すべく、イギリスからも多くの若者がアフガニスタンに派兵されることになります。そうしたイギリス兵の実話を基にした作品。

2006年9月5日。アフガニスタンの村、カジャキに駐留していたイギリス部隊の兵士、スチューは、移動パトロール中、地雷を踏んで右足を失ってしまいます。彼の救出に仲間たちが駆けつけますが、次々と地雷に触れ...。

タリバン勢力を倒すための戦いのはずが、旧ソ連軍が残していった地雷で傷つけられていくイギリス軍兵士たち。元々、地雷というのは、殺さずに傷つけるための兵器。1人の兵士を殺しても敵の兵力は1人分しか減らないけれど、1人に重傷を負わせれば、その1人を救出する人手が必要となり、数人分の兵力を減らすことができるという冷徹な計算のもとに作られた兵器なのだとか。本作で描かれている状況は、地雷という兵器が、その本来の役割を有効に果たしている状況だと言えるのでしょう。スチュー1人が地雷を踏んだことで、次々に他のイギリス兵が巻き込まれていったわけですから。

そして、彼らを傷つけた地雷は、彼らの敵であるはずのタリバン勢力ではなく、旧ソ連軍のもの。既に終わったはずの戦いで使われた兵器に傷つけられているのです。そして、もちろん、地雷が傷つけるのは兵士だけではありません。戦争が終わり、その土地に戻ってきた普通の住民たちを傷つけます。地雷は対象を選びません。大人も子どもも、男も女も、分け隔てなく傷つけ、身体の一部を奪い、もちろん、時には命を奪います。

本作で描かれるのは、純粋に"戦場"で、登場するのは兵士だけですが、敵が姿を見せない中で、次々と兵士が傷つけられていく状況にイマドキの戦場の怖さが感じられます。

地雷を扱った映画作品は他にもいろいろとありますが、その中でも、地雷という兵器の"効力"をまざまざと見せつけられる作品だと思います。

エンドロールで、兵士たちのその後について述べられていますが、意外に戦場に戻った兵士が多いことに驚きました。これだけの酷い経験をしても戦場に戻ったのは何故なのか、その背景に興味を引かれます。