アクトレス ~女たちの舞台~ [DVD]/ジュリエット・ビノシュ,クリステン・スチュワート,クロエ・グレース・モレッツ
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大物女優マリアは、個人秘書のヴァレンティンに支えられながら、日々、仕事に励んでいました。そんなある日、20年前、彼女の出世作となった舞台"マローヤのヘビ"のリメイク版への出演オファーがあります。しかし、マリアに求められた役柄はかつて演じた20歳の主人公、シグリッドではなく、シグリッドに翻弄され自殺する40歳の会社経営者、ヘレナ。シグリッド役には、ハリウッド映画で活躍する19歳の女優、ジョアン・エリスがキャスティングされていて...。

マリアとヴァレンティンの関係が印象的です。マリアの仕事がスムーズに進むように様々な調整をし、練習の相手をし、精神面でのフォローもし、時には、意見もし...。シグリッドとヘレナの関係のある部分が、ヴァレンティンとマリアの関係に重なり、また、リメイク版のシグリッドを演じることになるジョアンとマリアの関係に重なります。途中で、シグリッドの立場にある者がヴァレンティンからジョアンに代わるのですが、この交代がちょっとぎくしゃくした感じもしました。ただ、シグリッド的な位置の人物を2人配したことで、マリアの苦悩がより立体的に深みをもって表現されたようにも思えました。

実際問題、勿論、若さだけでやっていける程、世の中は甘くありませんが、それでも、若さは様々な場面で武器になることがあります。若さを善きものと受け止める人は多いですし、何とか若さを保とう、少しでも老いを遠ざけようと努力することは基本的によいことと受け止められています。そして、老いを自覚することは、多くの人にとってショッキングなこと。マリアは女優です。年齢を重ねてこそ出せる味わいがあるとはいえ、やはり、普通よりもずっと若さが重視される立場にあるワケで、老いに対する恐怖は強いのでしょう。

20年振りの上演となれば、キャスティングが変わるのも当然と思ったりもしますが、"放浪記"の舞台版は、森光子が1961年10月から2009年5月までの47年半以上、林芙美子の役を演じ続けたわけで、マリアがジグリッド役に未練を残したのも無理からぬところかもしれません。

マリア役のジュリエット・ビノシュ、ヴァレンティン役のクリステン・スチュワート、ジョアン役のクロエ・グレース・モレッツ。ジュリエット・ビノシュは、ちょっとした表情の動きでマリアの心情の変化を繊細に表現していますし、クロエ・グレース・モレッツは、まさにこれから大輪の花を咲かせようとしている若手女優の勢いと輝きを見せてくれています。そして、何よりも、クリステン・スチュワートのマリアを見つめる冷静な視線と愛憎入り混じった感情が切実に伝わってきて物語に深みが感じられました。いずれも見事な演技だと思います。それぞれの役どころが、個々の人生(だと一般にイメージされるもの)が重なることもあり、リアリティが感じられました。

ラストも、やや唐突な感じもしましたが、迷いを振り切り、新たな気持ちで舞台に臨もうとするマリアの凛とした姿が胸に沁みました。若さは大きな魅力だけれど、年齢を重ねることで初めて得られる若さに負けない力があるのだと思わせてくれるラストだったと思います。

観ておいて損はない作品だと思います。


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