ブリッジ・オブ・スパイ 2枚組ブルーレイ&DVD(初回生産限定) [Blu-ray]/トム・ハンクス,マーク・ライランス,エイミー・ライアン
¥4,309
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実話をもとに作られた映画。

アメリカとソ連が一触即発の冷戦状態にあった1950~60年代。ジム・ドノヴァンは、弁護士として、保険の分野で実直にキャリアを積み重ねていました。1957年、ソ連のスパイとして逮捕されたルドルフ・アベルの弁護を引き受けさせられてしまいます。敵国のスパイの弁護をするということで、世間から非難され、自身や家族の身をも危険に晒されます。ドノヴァンの努力があり、死刑にされる可能性が高かったアベルに対する判決は"禁固30年"となります。1953年、偵察目的でソ連領空内に入ったアメリカ空軍のパイロット、フランク・ゲーリー・パワーズがソ連に捕まります。また、1961年には、東ベルリンでアメリカ人留学生のフレデリック・プライヤーがスパイ容疑で拘束され...。

実話ベースということもあるのでしょうけれど、物語自体に力があり、ドノヴァン役のトム・ハンクスの力のある演技、アベルを演じたマーク・ライランスの大物感を醸し出す演技もあり、結構、引き込まれました。ドノヴァンから「不安じゃないのか?」と聞かれる度にアベルが繰り返す「役に立つか?(Would it help?)」というセリフが印象に残ります。

帰国したアベルのその後が気になったのですが、どうやら、諜報部に復帰し、非合法諜報員の教育に携わったようです。1971年に亡くなり、その20年近く後にはなりますが、1990年には、彼の顔を絵柄にした切手も発行されています。本作の捕虜交換場面からは、アベルが帰国後、処罰を受けたことを予測させられるのですが、観る者をミスリードする意図があったのでしょうか。アベルが帰国後、スパイの教育をしたということになれば、ドノヴァンは、アメリカに敵対する勢力のスパイの力を高めることに貢献したことになってしまうわけで、それは、"都合の悪い真実"だったということなのでしょうか。

要するにアベルは結構な大物で、パワーズとフィッシャーの2人との交換なら、ソ連の勝ちってところでしょうか。

帰国後のドノヴァンが電車から見た少年たちが柵を乗り越えて遊ぶ様子を、東ベルリンで目撃したベルリンの壁を命がけで越えようとする人々に重ねる場面がありますが、見えた少年たちが柵を越えて行くを重ねる場面がありますが、ちょっと、あざといというか、演出過剰な感じもします。そして、本作を観る限り、"ごく普通の弁護士が厄介な仕事を押し付けられた"といった雰囲気で描かれていますが、ドノヴァンは、第二次大戦中はCIAの前身であるOSS(戦略諜報局)に勤務し、ナチスのニュルンベルク裁判でも活躍しているそうです。元々、軍関係者で、その中で、それなりに実績を積んでいたからこその指名だったわけです。(普通に考えても、こうした場合に、その分野の経験も知識もない人物に託されるってことはないですよね。本作を観ていて、こそんないい加減なことが本当にあったのだろうかと気になってしまいました。)

まぁ、物語を盛り上げ、より感動的にするための演出だったのだとは思いますが、ちょっと気になりました。この辺りは、実話通りであっても、十分に感動できる物語として成立し得たと思うのですが...。(むしろ、盛ったためにリアリティが薄れてしまった気さえするのですが...。)実話と無関係な物語として観れば、"ひょんなことから知識も経験もないような分野の仕事を任され、様々な難題を乗り越えて見事解決した正義の男の物語"として、それはそれでありの感動作になっていると思うのですが...。

それでも、それなりに楽しめる作品にはなっていたと思います。ドノヴァンとアベルの互いへの想いの変化が丁寧に描かれていた点では見応えたありました。


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