マルタの鷹 [DVD]/ハンフリー・ボガード,メアリー・アスター
¥540
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ダシール・ハメットの同名小説を映画化した作品。1931年の"マルタの鷹"、1936年の"魔王が婦人に出遭った"(内容は大幅に改変)に次ぐ3度目の映画化。原作は未読です。

サンフランシスコの私立探偵、サム・スペードは、家出した妹を連れ戻したいという女性、ワンダリーからの依頼を引き受け、相棒のマイルズ・アーチャーに、ワンダリーの妹を連れ出したフロイド・サースビーという男を尾行させます。けれど、その夜、サースビーとアーチャーはどちらも殺されてしまいます。スペードはアーチャーの妻と不倫しており、警察は彼に嫌疑を向けます。そんな中、スペードはジョエル・カイロという男の訪問を受けます。彼はスペードが何かを握っていると考えていて、それを探ろうとしている様子でした。ワンダリーに再会したスペードは、ワンダリーというのは偽名で、本名はブリジッド・オショーネシーであること、カイロとも関係していることを聞かされます。2人を引き合わせたスペードは、彼らの会話から、2人はある鳥の彫像に興味を持っていること、"G"という人物もそれを欲しがっているらしいことを知ります。やがて、スペードは、彼に接触してきた"G"(ガットマン)から、彼らの捜し求めるマルタ騎士団にゆかりを持つ"マルタの鷹"の存在を聞き出します。どうやら、ガットマンは、ロシアの将軍が"鷹"を持っていることを突き止め、カイロ、サースビー、オショーネシーの3人を代理人として派遣したものの、"鷹"の価値に勘付いた3人に"鷹"を奪われてしまったらしく...。

兎に角、登場人物たちが喋りまくります。それも、結構、皆さま、早口です。次々と怒涛のように繰り出される膨大なセリフで、様々な状況や出来事が語られていきます。しかも、その話が、どこまでが嘘でどこまでが本当かよく分からないときています。誰もが怪しげな空気を身に纏い、何かを誤魔化しているような気配を漂わせます。

そして、かなりのスピードで物語がどんどん先に進められていきます。観ていても、何が何だか分からなくなる位の勢いなのですが、物語の骨格はシンプルなので、左程、難解という印象は受けませんでした。

ただ、残念なのは、物語そのものがあまり面白くないこと。そして、この膨大なセリフのために映画作品としての魅力も損なわれていること。けれど、それでもなお、本作には大きな見所が残されています。そう、何といっても、ハンフリー・ボガード。そこにいるだけでその場を支配してしまう存在感の大きさ、何とも言えない雰囲気のある佇まいは文句なく魅力的です。ハンフリー・ボガードを堪能できること以外にあまり価値が感じられない作品ですが、ハンフリー・ボガードの魅力をタップリ見せてくれる作品としては間違いなく価値ある作品となっています。制作サイドも、ハンフリー・ボガードを魅力的に撮ることだけにこだわったのではないでしょうか。

まぁ、ハンフリー・ボガードが演じたサム・スペードという人物。ちょっと良く分からないところもあったりします。大切なはずの相棒の妻と不倫とか、女性関係にだらしない上に、相棒を裏切っています。そして、その相棒を殺した人物への怒りをあらわにしながらも、相棒の死を特に悲しむ風でもなく、彼の死後すぐに事務所の看板やドアから相棒の名前を消すよう指示したりします。冷酷なのか熱血なのか、女性にだらしないのか厳しいのか、正義の味方だったり、手段を択ばない強引さがあったり...。オショーネシーのことも愛しているのか憎んでいるのか...。様々な面を見せてくれます。

何はともあれ、ハンフリー・ボガードを観るための映画。それ以上でもそれ以下でもないといったところでしょうか。


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