明烏 [DVD]/菅田将暉,若葉竜也,吉岡里帆
¥4,320
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品川で細々と営業を続けるホストクラブ"明烏"。ワーストのホスト、ナオキ(菅田将暉)は借金返済期限が迫る中、返済金1,000万円を無事に用意できたことを祝って宴会を開きます。ところが、翌朝、目を覚ますと、あるはずの金はなく、夢を見ていたことに気付きます。借金を返済できなければ12時間後には東京湾に沈めらることになるナオキでしたが、同僚も客も頼りにならず...。

落語を題材にしたとのことで、当然、落語の"明烏"を題材にしているのかと思ったら、内容的には"芝浜"でした。

ちなみに、「明烏」は、「あまりに真面目で堅物な息子を心配した商店の主人が、町内でも札付きの遊び人である2人の男に息子を吉原に連れていくよう頼みこみます。2人は、人のお金で遊べると張り切ります。吉原を恐ろしいところだと思いこむ若旦那を"お稲荷様に籠ろう"と誘い出し、吉原へ。花魁を目の前にして騙されたことに気付いた若旦那は帰ろうとしますが、2人に『勝手に帰ると大門の見張りに袋叩きにされる』と脅されます。仕方なく花魁と過ごすことになります。結局、2人とも相手の女に振られ、つまらない夜を過ごし、若旦那を迎えに行きます。若旦那はその初心なところを花魁に気に入られ、若旦那も花魁の魅力にメロメロ。若旦那に帰ろうと声をかた2人は若旦那に言われます。『勝手に帰ると大門で袋叩きにされるよ』と。」

「芝浜」は、「魚の行商をしている男は、商才はあるのですが、酒好きで仕事も失敗が続き、うだつが挙がりません。ある日、大金の入った財布を拾います。大喜びで仲間を集めどんちゃん騒ぎをしますが、翌朝、目覚めると女房にこんなに散財してどうするのかと叱られます。前夜に拾った財布のことを言いますが、女房はそんなものは知らないと言い張ります。女房に諭された男は、財布の件は夢の中のことと諦め、断酒をし、仕事に精を出すようになります。3年後、男は表通りに店を構え、人を雇うまでになります。その年の大晦日、男が、女房の献身を労い感謝すると、妻から件の財布を見せられ、話を聞かされます。『大金の入った財布を男に見せられた妻は困惑。大家と相談して財布を拾得物として役所に届け、男にはなかったことと言いくるめることにした。落とし主が現れなかったので、役所から財布が下げ渡された。』男は、女房を責めず、自分を立ち直らせてくれたことを感謝。女房は久し振りに酒でもと勧めます。強く勧められ、一度は、杯を口元まで運びますが、杯を置きます。『よそう。また夢になるといけねぇ。』」というもの。

本作のラストのセリフは芝浜なのですが、内容的には、基本、芝浜。(芝浜は財布事件の後の物語が主題となっている一方、本作は、お金が無くなるというところに焦点が当てられているとか、芝浜は妻の夫への愛が動機なのに対し、本作はお仕置き的な要素が強い感じがあるとか、芝浜は不本意ながら騙すような形になってしまったという感じですが、本作は明らかに騙そうという意思のもとに騙しているとか、いろいろ違いはありますが...。)で、明烏の要素はあまり表に出てきていません。それで、このタイトルだと、やはり、違和感はありました。

それはともかく...。

落語というのは、基本的には、枕を入れて30分+α位の感じ。で、人が語ってそのくらいの時間なのですから、2時間程度の映画にする場合、一つの話を一本の映画にするというよりは、いくつかの話の要素を組み合わせるとか、落語にヒントを得ながらも思い切り膨らますとか、お話そのものに手を加えていく必要があります。その点が、あまりスマートに纏められていないため、引き延ばした感じがしてしまうのかもしれません。

そして、映画というよりは、演劇の舞台を撮影した映像のような印象を受けるのも、落語が元となっているからかもしれません。笑える作品ではあります。そこは、さすがに落語がもつ古典の力ということなのかもしれませんが、ところどころに、掛け合いの面白さも感じられました。途中、ダレる部分もありますが、それでも、力のある演技人に支えられ、コメディとしては、それなりに楽しめました。

レンタルのDVDで十分とも思いますが、悪くない作品だとは思います。


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