数々の名作を残した映画監督、ロバート・アルトマン。彼を師と仰ぐポール・トーマス・アンダーソン監督や、ジュリアン・ムーアといった縁のある俳優や家族の証言を交え、権力に振り回されることなく映画を撮り続けた巨匠の精神や人生を多角的に考察していきます。

今まで、私が観て、ここに感想を書いたロバート・アルトマンの作品は、以下の16作品。
M★A★S★H
BIRD★SHT バード★シット
ロング・グッドバイ
ナッシュビル
ビッグ・アメリカン
三人の女
ウエディング
クインテット
ザ・プレイヤー
ショート・カッツ
カンザス・シティ
相続人
クッキー・フォーチュン
ゴスフォード・パーク
バレエ・カンパニー
今宵、フィッツジェラルド劇場で

こうして並べると、結構、いろいろな味わいの作品があり、バラエティーに富んでいます。戦争、ファッション、政治、バレエ、恋愛、サスペンス、裏社会、家族...様々な題材が取り上げられ、いろいろな手法が取られ、幅の広さが感じられます。

嘘八百を並べて映画の仕事を得て、ヒッチコックに認められてTVの世界で活躍し、映画監督として成功を収め...。その過程であった"業界"との軋轢。アルトマンの作品の何が画期的で、それが、他の作品にどのような影響を与えたのか、映画の歴史の文脈の中で、アルトマンの作品の意味が語られています。アルトマンについて、アルトマンの作品について、分かりやすく纏められていて、良くできた"アルトマン入門"のテキストになっていると思います。

今の映画では当たり前になっている手法で、アルトマンが始めたものがいろいろとあることも知りました。コロンブスの卵のように、気付いてみれば辺り前で、これまで考え付かなかったことの方が不思議な感じすらしてしまうようなことでも、意外に、使われてこなかった手法があったということなのでしょう。

アカデミー賞名誉賞を受賞した際のスピーチで、"好きなものを撮ってきた"と語っています。アーティストとして幸せだったのだと思います。けれど、その幸せをつかめたのも彼の力なのでしょう。そう言えるようになるためには、恐れず、妥協せず、主義主張に反するものを拒否する力が必要なのです。簡単にできることではありません。それを貫いた姿勢に感銘を受けました。

創作の背景にあった家族との日々についてもホームムービーも交えながら描かれ、アルトマン監督の人となりを立体的に描きだしています。まぁ、この手の作品としてはやむを得ないところなのでしょうけれど、描き方としてポジティブな面に偏り過ぎた感じはしますが、その辺りも許容範囲ではあるのでしょう。

今まで観ていなかった作品を観て見たいと思いましたし、これまで観た作品ももう一度観て見たいと思いました。本作を観て、これまでに観た作品も、前とはちょっと違った見方ができそうな気がします。

2006年にアカデミー賞名誉賞を授与された時、式典会場にフィリップ・シーモア・ホフマンの姿が見えました。亡くなる8年前の映像です。まだ、晩年よりずっとスリムで元気そうな姿に懐かしさがこみ上げてきました。

一見の価値アリだと思います。


公式サイト
http://bitters.co.jp/altman/


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