アナーキー [DVD]/イーサン・ホーク,エド・ハリス,ミラ・ジョヴォヴィッチ
¥4,212
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シェイクスピアの「シンベリン」を元に作られた映画。

ギャング軍団"the Britons"を率いる麻薬王、シンベリンは、シンベリンの娘、イノジェンと、後妻のクイーンの息子、クロートンを結婚させようとしていました。けれど、イノジェンは、ギャングの一員であるポステュマスと恋に落ち、親に内緒で彼と結婚してしまいます。そのことに激怒したシンベリンは、ポステュマスを追放。ポステュマスと出会ったヤーキモーは、イノジェンを誘惑して2人の愛が本物かどうか試すと、賭けを吹っ掛けます。一方、クイーンは、シンベリンにローマ警察からの献金の要求を断るよう唆し、シンベリンはそれを受け入れますが、そのことがきっかけとなり血まみれの抗争が勃発。ヤーキモーは賭けに勝つために策略を巡らせ、ギャング軍団とローマ警察の抗争は激化し...。

人間関係が複雑に絡み、一つのエピソードが、意外な形で他の物語に影響し、そこに関わる人々を動かしていきます。そこに、愛や恨み、嫉妬、欲が絡んでいく辺り、いかにもシェイクスピアな雰囲気です。

舞台設定を現代のアメリカに移していて、携帯電話とか、インターネットとか、イマドキのツールも使われているのですが、登場人物たちのセリフが、シェイクスピアらしい重厚な感じで、違和感ありました。シェイクスピアの原作では、シンベリン=王様なわけですから、それでよいと思うのですが、王とはいえ、麻薬王では、やはり、ちょっと違う感じがします。

イノジェンに関する部分でも違和感はありました。あんなに簡単にヤーキモーが近付けてしまうというのはどうかと。少なくとも、ポステュマスの件があるわけですし、シンベリンが、イノジェンの周囲にあまり気を配っていない様子なのは何故なのか...。

イノジェンについては、麻薬王のもとで育ったとはいえ、女の子だから稼業のあれこれからは遠ざけられて育てられてきた可能性も高く、不用心であったとしても仕方ないのだと思います。けれど、ギャングの一員であり、しかも、ボスの娘に手を出すという思い切ったことをしたポステュマスが、あんなに簡単にヤーキモーの策略に嵌ってしまうというのは不自然な感じがしました。大きな賭けをした以上、ヤーキモーがあれこれ陰謀を巡らすのは容易に予測できたはずのこと。ヤーキモーの動向にもっと眼を配っているべきだったでしょうし、"証拠"を疑ってもよかったのではないかと...。そもそも、あんな賭けをしたら、ヤーキモーが何かするのは眼に見えているのに、その賭けに乗ってしまうという点でダメダメです。

で、本来なら、感動の再会になるはずの場面でも最愛の彼女を払いのけてしまうし...。冷静に周囲の人物を見極め、その行動の裏を読み、的確な対処をする能力がこんなにもなくて、どうやって今まで生き残ってこれたのか、不思議です。それだけの強運の持ち主だったってことでしょうか...。

それでも、絡みあった人間関係とか、終盤からラストにかけて様々な伏線が回収されていく爽快感は、割と良い感じでしたし、シンベリンを演じたエド・ハリスは麻薬王としてのワルな迫力を出していましたし、掴みどころのない感じのを演じたイーサン・ホークも雰囲気がありましたし、豪華キャストが見せてくれていますので、全体としては、そこそこ楽しめる作品にはなっていたと思います。

畳みかけるようにハッピーエンドに転がっていくラストについては、変に綺麗に纏まりすぎた感じもあって、少々、呆気ない感じもしましたが、レンタルのDVDで観る分には、悪くないと思います。


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