1945年ドイツ。ネリーは、強制収容所に入れられ、銃によって顔に酷い傷を追いましたが、奇跡的に生還し、ユダヤ人を支援する機関の職員であるレネにより保護されます。顔の修復手術を受けますが、望んでいた元の容貌には戻れませんでした。退院したネリーは、生き別れになっていた夫のジョニーを探し出します。けれど、妻は収容所で死んだと思い込んでいるジョニーは、顔の変わった彼女が自分の妻であることに気付きません。それどころか、ジョニーは、ネリーに、死んだ妻の遺産を手に入れるために妻の振りをしてくれないかと持ち掛け...。

ジョニーの計画がどうなるのか、ネリーが"本物"であることにジョニーは気付くのかどうか...。結構、ハラハラドキドキでした。

ただ、何といっても気になったのは、何故、ジョニーは、ネリーが"本物"であることに気付かなかったのかということ。その点はとても不思議でした。最初、ネリーの方から、ジョニーに声を掛けたワケで、ネリーがジョニーを探していたことも周知のこと。彼女が、自分を探していて、自分に"ジョニー"と呼び掛けた事実を考えれば、ネリーに対して、もっと警戒心を持ってよかったはず。いくら、顔が変わったとはいえ、主治医も元の顔にもどす努力はしたようですし、少なくともそれなりに面影は残っていたのではないかと思います。それに、ネリーのために買った靴がピッタリだったり、ネリーの筆跡をあまりに簡単に習得してしまったことについても疑問を持つべきだったのではないかと。何といっても、大金を手に入れる犯罪を実行しようとしているのですから、もっと繊細に用心する必要があったワケで...。

ジョニーの過去の行動は、自身がかなり追い詰められていたことが原因となっているのでしょうし、ネリーへの愛情も確かにあったのでしょう。ジョニーの中の罪悪感が、ネリーが本物かもしれないという疑念に蓋をしようとしたのかもしれません。そして、ネリーもジョニーの自分への愛情を信じたいという想いに目を曇らされていたのかもしれません。それぞれの心の中にある願望が、事実を捻じ曲げようとしていたのかもしれません。けれど、少なくとも犯罪を計画し実行しようとしているジョニーは、もっと警戒すべきだったでしょう。

さらに、レネもレネです。ジョニーがネリーを裏切ったのかどうかを証拠付けるものがクライマックスで、レネからネリーに渡されるのですが、もっと早い段階で渡した方が、ネリーにとっても、レネにとっても良かったのではないかと...。レネの身の処し方も唐突でしたが...。

ラストは良かったです。真実を受け入れたネリーが振り返ることもなく前に向かって歩き出す姿は凛として美しかったです。ジョニーがネリーがネリーだと気付けなかった理由、レネが何故もっと早い段階でジョニーのしたことをネリーに伝えなかったのかの2点をもっと巧く処理できていれば、映画作品としてかなり見応えのある作品になったと思うのですが、実に残念でした。


公式サイト
http://www.anohi-movie.com/


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