1864年、デンマークで兵士として勇敢に戦ったジョン(マッツ・ミケルセン)と兄のピーター(ミカエル・パーシュブラント)。2人は、敗戦後の荒れたデンマークから、新天地を求め、アメリカに移住します。7年後の1871年、生活も安定し、ジョンは妻子を呼び寄せます。駅で再会を喜び、駅馬車で家に向かいますが、その駅馬車でならず者と同乗することになってしまい、ジョンは妻子を殺されてしまいます。ジョンは、怒りのあまり、妻子を殺した男たちを射殺しますが、その1人は、その辺り一帯を支配する悪名高いデラルー大佐の弟だったため、大佐の怒りをかってしまい...。

"妻子の復讐"自体は、かなり早い段階であっけなく完了します。けれど、その"復讐"が新たな"復讐"を呼び、さらに、"復讐"が行われ...と連鎖していきます。

久し振りに妻に会い、成長した息子の姿を見て喜ぶ、ごく当たり前の夫であり父であったジョン。けれど、無残にも妻子を殺されたジョンは、復讐せずにはいられませんでした。再会の喜びも、愛する者たちの死に際しての悲しみも、加害者たちへの怒りも、全体に控えめです。あまり感情を爆発させたりすることはなく、登場人物たちは全体に寡黙です。けれど、それぞれの瞳がその想いを伝えていて、それぞれの気持ちが観る者の胸に沁みてきて、その後の展開に説得力を持たせています。そして、ジョンがデラルー一味を倒していく過程では、彼が兵士だったという設定が生かされていて、その辺りも丁寧に作られた作品という感じを受けました。

デラルーがあまりに明確に悪で、議論の余地なしの分かりやすさです。で、デラルーに牛耳られる街の保安官たちは平和主義というか、事なかれ主義というか、ジョンの復讐をたしなめてしまったりもします。デラルーに脅されればジョンを突き出すし、ジョンがデラルー一味に勝利すれば、ジョンになびくというのも、分かりやすいことこの上なしです。そもそも、愛する者たちを殺されて復讐に走るジョンも分かりやすいワケですが...。

その中で、やや異色なのがマデリン。話すことができないという設定になっていて、一切、セリフがない役どころということもあるのでしょうけれど、何を考えているのか、ちょっと分かりにくい感じがあり、作中の程よいスパイスになっていました。夫との関係性が良く分からなかったので、ジョンへの復讐の気持ちがどの程度のものだったのか、その辺りについては、もっと触れられていれば、ラストの彼女の行動にもっと重みが出たような気がします。まぁ、デラルーへの感情などはそれなりに見せてくれてたので、その後の行動に納得はできましたが...。

妻子を殺されたジョンによる復讐。弟を殺されたデラルー大佐による復讐。デラルー大佐に祖母を殺された青年による復讐。兄を殺されたジョンによる復讐。ジョンによる自分たちを裏切った町長に対する復讐。ジョンに夫を殺されたマデリンによる復讐。6件の復讐が描かれ、その内の3件はジョンによる復讐で、2件はジョンに対する復讐。そして、残りの1件は、ジョンも共闘しているので、ジョンは全ての復讐と関係しているということになります。

デラルーに夫殺された女性は復讐をしようとはせず、住んでいた土地を離れます。マデリンは、ジョンに銃口を向けますが、撃ちませんでした。復讐を成し遂げたジョンに満足感や達成感が浮かばなかったことを見ると、そして、デラルーが"先住民を殺し過ぎたために悪くなった人物"とされていることを考えると、理由はどうあれ、人を殺せば、無傷ではいられないということなのだと思います。だとしたら、少なくとも、夫を殺された女性とマデリンは救われたということなのでしょうか。そして、マデリンに赦されたことで、ジョンも救われたということなのでしょうか。

基本的には王道の西部劇でありながら、"悪を倒して万々歳"ではないところには好感を持てました。復讐をしても、失われた者は取り戻せませんし、スッキリ気分爽快になれるワケでもありません。そして、デラルーや町長を殺したからメデタシメデタシという単純な問題でもないでしょう。デラルーは相当の悪ですし、町長もその協力者なのですから、この2人を排除すれば解決される問題もあるのでしょうけれど、どうやら、彼らの背景には、もっと大きな悪がいる様子です。デラルーと町長が排除されても、彼らのような役割を担う新たな者が登場するだけのこと。

デラルーと町長の背景にいた者たちが無傷で残されたことを考えると、続編があるということなのでしょうか...。

それはともかく、アクションは地味目ながら西部劇らしさは出ていたと思いますし、本作ならではの味わいも感じられて、なかなか面白かったです。


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http://akutou-shukusei.com


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