アバウト・タイム~愛おしい時間について~ [DVD]/ドーナル・グリーソン,レイチェル・マクアダムス,ビル・ナイ
¥3,672
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イギリス南西部コーンウォールに住む青年、ティムは、両親と妹、そして伯父の5人家族。どんな天気でも、海辺でピクニックをし、週末は野外映画上映を楽しむという風変りだけど仲良しな家族と幸せに暮らしていました。けれど、自分に自信のないティムは年頃になっても彼女ができません。そんな中で迎えた21歳の誕生日、父親に一家に生まれた男たちにはタイムトラベル能力が備わっていることを知らされます。驚きつつも恋人ゲットのためにタイムトラベルを繰り返すようになり...。

タイムトラベルものです。タイムトラベル自体は使い古されたテーマですが、タイムトラベルの能力に"自分の過去にしか行けない"という制限が加えられ、変に無理した感じがしないところに好感を持てました。で、ティムは、その特技を最大限に利用して都合のよい人生を作り上げていきます。折角の特技ですから、それを活用するティムに何の文句があるわけではないのですが、見事に活用しています。

前半は、タイムスリップをこれでもかと繰り返します。で、何度も修正を繰り返し、自分の人生を思うように変えていきます。このやりたい放題のコミカルな展開の後、後半に向けて一気に説教臭くなります。普通の日常の大切さとか、ありがちな人生訓が語られるのですが、ここに至るまでの過程が、修正に修正を加えられているのですから、説得力がありません。後半の人生訓を大切にするのなら、前半のタイムスリップの連発は何とかすべきだったでしょうし、前半の雰囲気を大切にするのなら、コメディ路線で突っ走ったほうがずっと面白かったのではないかと思います。

折角、これまでのタイムトラベルものと差別化し得る設定があるのに、それを生かし切れていないのは、何とも勿体ない感じがします。まぁ、何度も特別な能力を使ったからこそ、そんなことでは得られないものがあることに気付き、それが、平凡な日々の中でこそ得られることに気付けるのかもしれません。それにしても、やっと、当たり前の日常の愛おしさに気付いたと思ったところであのラストは不意打ち感たっぷりで???でした。例え、過去をいじるためでなくても、同じ体験を繰り返すのだとしたら、やはり、当たり前の日常のありがたみは薄れるのではないかと...。

特殊な能力を持っている人間が平凡な日常のすばらしさに気付いたというよりは、特別な能力を駆使して完璧な日常を手に入れて能力を行使することに飽きたという感じがしてしまって、モヤモヤします。

そして、これは、やり直せる力故か、ティムのお家はかなりリッチです。まぁ、普通に考えても、やり直しができるなら、競馬でも株でも各種賭博的要素の濃い手段でタップリと儲けることはできるわけで...。経済的に豊かで、きちんとした仕事があり、家族が仲良くて...。その上、タイムスリップの能力と揃えば、向かうところ敵なし。団結できれば最強家族ですね。このあまりの曇りのなさもに気はなりました。タイムトラベルものという以上に、父と息子の物語なのですが、この親子の関係も最初から最後までとても平穏で...。

あえて陰になる部分を排除したのかもしれませんが、そのために、主人公がいいとこどり過ぎて、バランスの欠けた物語になってしまった感じがします。作品の雰囲気はとても温かくて優しいのですが、深みに欠ける感じはします。多少なりとも、ティムがタイムトラベルし過ぎたための代償を払う場面があっても良かったのではないかと...。息子を失う場面はあるのですが、そのことに対し、ティムは特に後悔のようなものを見せてはいませんし...。

ただ、目の前の出来事を何とかしようとタイムスリップを繰り返すティムをじっと見守るお父さんは味わいがありました。ビル・ナイの飄々とした雰囲気は良かったと思います。タイムトラベルという"ドラえもん"を手に入れたティム(=のび太)が、行きつ戻りつしながらも、少しずつ大人になっていく物語といったところでしょうか。

全体として詰まらなくはないのですが、どうもスッキリとしませんでした。


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