ついに来てしまった代々木の老舗の総菜パンの店、文明軒閉店の日です。当初、4月いっぱいと聞いていたのですが、もう少し営業は続くようです。今日も朝早くパンを買いに行ってきたのですが、「7日もやるかもしれない。」とのこと。材料を使い切るまでといったところでしょうか。「作る種類と数は少なくなるけどね。」とのことでした。

で、今日も早朝に起きして、5時頃お店に。既に売り切れたものも。
買ったのは
メンチ
カレーパン
ネジリパン
の3個、350円也。

最近は、ネットでも評判が良く、結構な有名店になっているようですが、決して、グルメな方々が喜ぶような"美味しいパン"ではないと思います。もちろん、美味しいことは間違いないのですが、"特別に美味しい"というよりは、"懐かしい美味しさ"という感じです。全体に、真っ当というか、真面目というか、美味しさを追求してあれこれ研究して作り上げた味というより、頑ななまでに古くからのレシピを守り通した味というか...。有名デザイナーによる洗練された服ではなく愛情が込められたお母さんの手づくりの服とか、プロによる巧い歌ではなく愛するわが子のために歌う子守歌とか、そんな感じでしょうか。

そして、この"懐かしい美味しさ"は、お店の佇まいやお店の方々をも含めた味わいなのだと思います。だから、自分でお店に行って、おばちゃんから紙の袋に入れたパンを手渡してもらって、それでこそ文明軒のパンを十分に味わえるのではないかと思います。で、わざわざ遠くから訪ねていくというよりは、犬の散歩とかジョギングとか通勤通学の途中にふらりと寄るようなお店。遠くから時間と交通費をかけて訪れ、グルメなお味を期待して買っても、ちょっと期待とはズレてしまうかもしれません。

気軽に行ける範囲にひとつあると嬉しい店。今の住まいで生活を始めて20年近くなるのですが、ここに住んで良かったと思うことの一つがこの文明軒に近いということでした。

住み始めた頃は、まだ、あまりネットなどでは評判になっていなかったような気がします。地元の人や通勤通学で近くを通る人しか知らなかったのではないでしょうか。けれど、地元では定評のあるお店で、朝の通勤通学の時間帯などは切れ目なくお客が入っていました。

早い時間帯に売り切れてしまうのは、以前からのことですが、こちらに住み始めた頃は、お昼頃までは多少はパンが残っていて、完全に売り切れて閉店するのは、14時とか、15時とかだったと思います。それが、昼にはほぼ売り切れるようになり、10時頃にはほとんどなくなるようになり...。最近は、"欲しいパンを買いたいなら8時じゃ遅い"くらいな勢いでした。開店時間も以前より早くなっているような気がします。(前は、7時頃ではなかったかと...。最近では4時とかのようですが。)そして、徐々に、作る量も減ってきたような...。

そんなこともあって、"いつまで、文明軒のパンを食べることができるのだろう"なんて思っていたりもしたのですが...。イマドキ、こうしたお店を継ぐ人が出るとは思いにくいですし(決して、大きく利益が上がるようなお店ではないと思いますし)、そんなに遠くない将来、閉店するであろうことは想像していたわけですが...。

このパンを味わえるのは今日が最後になるのか、7日にもう一度チャンスを得られるのか...。できれば、7日、もう一度、行ってみたいと思います。


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