思い出のマーニー [DVD]/出演者不明
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ジョーン・G・ロビンソンの同名児童文学を舞台を北海道に置き換えて映画化した作品。原作は未読です。

幼い頃に両親を亡くし、あることがきっかけで心を閉ざしてしまった12歳の杏奈。喘息の療養のために北海道の海辺の村で暮らす親戚の元に預けられます。そこで、古く湿った洋館を見つけます。その屋敷には不思議な雰囲気の金髪の少女、マーニーが住んでいました。ある晩、マーニーが杏奈の前に姿を現し...。

杏奈さん、荒れています。まぁ、まだまだオコチャマなワケですし、致し方ない面はあると思うのですが、結構なイライラ度です。けれど、杏奈がこんな風に自分の感情を出せたのは、彼女が自分自身の恵まれた状況を感じ取っていたからでもあるのでしょう。本当に生きること自体が大変な状況にある子どもは"良い子"にならざるを得ないものです。

札幌から海辺の田舎町にやって来た杏奈は、面倒見の良い地元の少女、信子を"ふとっちょぶた"と罵ります。少々、お節介な面はあったかもしれませんが、杏奈に対し悪いことをしたわけではありません。酷い言葉を投げつけた杏奈とすぐ仲直りしようとする寛大さも持ち合わせています。けれど、杏奈は、信子から差しのべられた手を拒絶します。"この世には目に見えない魔法の輪がある。輪には内側と外側があって、私は外側の人間。"と呟く杏奈にとって、"内側の人間"である信子の手を握ることは難しかったのかもしれません。この場面、杏奈が実に嫌なヤツなのですが、自分自身を不幸の奈落に落としている者は、救いの手すらも受け入れられないのでしょう。そう、嫌いな自分を救ってくれる手など有難くともなんともないのでしょう。まして、杏奈の場合、その手を握らなくても生きていけるのですから。

けれど、そんな杏奈も変わっていきます。自分一人だけが不幸にあった世界から、抜け出していきます。マーニーの力を借りて。では、そのマーニーを生み出した力はどのように育まれたのか。そこに、杏奈を取り巻く"愛"が関わっていたのではないかと思います。

そして、杏奈の成長は、自分を"普通の人々が属する世間"から拒絶しているように感じていた"魔法の輪"が幻想であったことに気付いていく過程と重なるのではないかと思います。世間が自分を拒絶していたのではなく、自分が周囲にある愛を拒み、世間から離れていたこと、自分の周辺に愛があり、世間は自分を受け入れてくれていたことに気付いて初めて、世間のことも、自分自身のことも受け入れられるようになるのかもしれません。この杏奈の成長が本作の物語のキモとなる部分だと思うのですが、その描き方も中途半端な感じがしました。そこをしっかりと描くには時間が足りなかったのかもしれませんが...。

マーニーと仲良くなるのも唐突な感じだし、杏奈の心情の変化もところどころで急展開したりで違和感ありました。ラストの各種説明がやたらと丁寧なことも、全体のバランスを欠いてしまった原因になっていると思います。

流石にジブリな綺麗な絵は印象的でしたが、映画としてはちょっと残念でした。


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