レンブラントの「夜警」など数々の名品を所蔵するオランダのアムステルダム国立美術館の改修事業を追ったドキュメンタリー「ようこそ、アムステルダム国立美術館へ」の続編。

2008年の再オープンを予定して04年に始まった改修工事は、地元住民の反対などさまざまな問題によって何度も中断に追いこまれます。その様子をとらえた前作に続き、10年にもおよぶ紆余曲折を経て13年4月についにグランドオープンにこぎつけるまでの顛末を追います。前作に引き続きウケ・ホーヘンダイク監督が、学芸員や建築家ら美術館に携わる個性的な人々が再オープンを目指して奮闘する姿や、展示品の選定、修復作業、作品購入といった美術館ビジネスの裏側をカメラに収めています。

元々の再オープンの予定は2008年でしたが、実際に再オープンできたのは2014年3月。予定を6年も過ぎてからでした。その最大の原因は"道路"を巡るせめぎ合い。同じような問題が日本で起こったら...と考えずにはいられませんが、恐らく、"再オープン予定日"へのこだわりが先に立って、美術館側の"強権発動"で、"自己中な人々の我儘"を抑え込んだのではないかと...。それぞれが変な妥協をせず、けれど、強引にもならず、双方が納得できる形を作り上げるまで諦めない粘り強さは、走法の本気度を示していて感動的ですらありました。

前作から予測されるものより遥かに良い形で、もっとずっと先のことになってしまうかもしれないと思われた再オープンに漕ぎ着けることができたのですから、考え方の違うそれぞれの間にも、単なる感情的な反発ではなく、コミュニケーションがあったということ。この紆余曲折な課程こそ、この美術館が皆のもので、多くの人々の中に美術館への愛と期待があることを示しているような気がします。

紆余曲折のドタバタだけをコミカルに描くだけでなく、ぶつかり合いながらも意見の相違に真剣に向き合う姿や、美術館を支えるための仕事に真摯に取り組む人々の姿を伝えています。再オープンが遅れに遅れるという異常事態もなんのその、しっかりと自分たちがやるべきことをこなしていく姿は、まさにプロフェッショナル。オープンしてからではじっくり取り組めない収蔵品の整理や修復作業に勤しみます。

中でも、新しくできる"アジア館"部長が新しく収蔵した金剛力士像への愛は印象的。その丁寧な迎え入れ方には、日本人として心動かされるものがありました。この金剛力士像、廃寺となっている島根県の岩屋寺に置かれていたものだったそうです。8世紀頃に創建された真言宗のお寺で、昭和に入ってもそれなりに参拝の人で賑わっていたそうですが、徐々に寂れ、昭和40年から50年頃のある日、こつ然と金剛力士像の姿が消え、ついには廃寺になったとのこと。金剛力士像が海外に流出した背景を考えれば複雑な想いもありますが、こうして大切にされている様子を見れば、納得もできるというもの。

さて、東京では2020年のオリンピックに向けて、大きな建造物があちこちに造られていくことになります。アムステルダム美術館と違い、期日が決められたイベントのための建造物であることを考えると、完成を遅らせるというワケにはいかないのが大きな違いですが、私たちは、ここまで真剣に"公共の建造物"に取り組めるのでしょうか...。


公式サイト
http://amsmuseum.jp/



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