ジュリー・マロによるフランスの人気コミックを映画化した作品。


幼稚園教諭を目指す高校生アデルは、髪を青く染めた美大生、エマに出会い、彼女の知性や独特の雰囲気に魅了されます。2人は情熱的に愛し合うようになり、数年後、目標通り幼稚園教諭として働くようになったアデルは、エマと一緒に住み、幸せな毎日を過ごしていました。しかしエマの作品披露パーティーをきっかけに、2人の気持ちは徐々に擦れ違っていき...。


"衝撃の7分間"が謳い文句となっている本作。まぁ、確かにかなり過激なラブシーンでした。ちょっとやり過ぎ感もあり、延々と続く感じがあって、飽きてしまうというか...。別にアダルトビデオではないのでしょうから、"肉欲"がメインなわけではなく、"肉体だけでない全人格的な繋がり"が2人の間にあったということを印象付けるような描写にすべきだったのではないかと...。


アデルとエマが女性同士だということが本作のウリなのでしょうから、そこに焦点を当てたということなのかもしれませんが、もう少し、肉体以外の結びつきも描いてあった方が、アデルの心情に寄り添えたのではないかと思います。


エマとの恋愛が盛り上がり幸福の絶頂にある時の幸せそうな表情、笑顔、エマとすれ違うようになってきた頃の寂しさがにじむ表情、苦悩、涙、怒り...。様々に変化する表情が印象的です。エマの中性的な雰囲気も役どころにピッタリで良かったです。アデルを演じたアデル・エグザルコプロスとエマを演じたレア・セドゥ、この2人の演技は、間違いなく、本作の一番の見所です。


それぞれの家庭の様子を挟み込むことで、それぞれのバックグラウンドとそこで育まれた性格の違いが伝わってきます。この辺りの組立ては見事だと思います。高校生当時から、決して品行方正な学生ではなかったアデルでしたが、エマとの関係に傷つきながらも、きちんと出勤し、それなりに仕事をこなしているのは、やはり、あの父と母による躾ゆえなのでしょうし、エマを芸術家にした背景に、両親とあの継父の影響があるのは確かでしょう。


エマとの出会いによって、知らなかった世界を知ったアデル。けれど、彼女は、その世界に魅力を感じはしても、取り込まれることなく、自分の生き方を守ります。自分を傷つけたアデルに別れを告げたエマ。彼女は、アデルとの関係の中で徐々に世に認められるようになり、リーズとの生活の中で更に新境地を開いていきます。アデルより、むしろ、エマの方が、恋愛に影響を受けるタイプなのかもしれません。


"恋愛によって大きく心を乱されても自分なりの生活は維持するアデル"と"恋愛についてはどちらかというと主導的な立場にあったけれどその相手との関係の中で大きく作風を変えていくエマ"の対比という辺りにもっと視線を当てていれば、"アダルトビデオ感満載の過激な作品"ではなく、"深い味わいのラブロマンス"になったのではないかと...。


結構、良い評判を聴くことが多い作品で、そのために、知らず知らずのうちに期待値が高くなってしまったのかもしれませんが、正直、それほど見応えのある作品とは思えませんでした。女性同士というところで物珍しさがあるでしょうけれど、これが男と女だったら、よくある出会いと喧嘩と別れの物語になっていたのでしょう。


179分という、ほとんど3時間の上映時間は、正直、長く感じました。ところどころ、集中を欠いてしまいました。2人の演技とか、印象的な青の使い方とか、ところどころ見所もあっただけに、残念な作品でした。



公式サイト

http://adele-blue.com/