ブロンクス物語 [DVD]/ロバート・デ・ニーロ,チャズ・パルミンテリ,ジョー・ペシ
¥3,990
Amazon.co.jp


本作の脚本を書き、地元のボス、ソニー役で登場するチャズ・パルミンテリの自伝的一人芝居の舞台を映画化した作品。


1960年代のブロンクス。バスの運転手として真面目に生きる父、ロレンツォ、専業主婦の母、ロジーナと暮らすカロジェロは、地元のボス、ソニーに憧れていました。カロジェロは、ある日、ソニーが、揉めた相手を銃で撃つところを目撃しますが、嘘の証言でソニーを庇い、それ以降、ソニーの"友人"となります。一方、ロレンツォは、ソニーに違法な商売を持ちかけられますが拒絶。カロジェロは、ロレンツォとソニーの間で板挟みになりながらも、2人の愛情を受けながら成長し...。


実の父、ロレンツォと第二の父のようなソニー。2人の関係は、カロジェロを挟んだ三角関係という感じもあって、ロレンツォとソニーの間には、互いに嫉妬もあったように見受けられます。そして、ある部分では、互いに一目置いてもいて、2人に共通するのは、カロジェロに対する深い愛情。自然な形で、互いの"持ち味"を活かしながら、カロジェロに対する教育が行われます。


悪い仲間との付き合いをやめさせようとし、学校へ行ってきちんと勉強するよう諭すのが、ロレンツォよりも、ソニーであることは、印象的でした。ロレンツォは、ソニーと違って真っ当に生きている分、カロジェロの友人関係の危うさに気付きにくかったということかもしれません。


ロレンツォは、地味ながら堅実な生き方をカロジェロに見せます。ソニーに商売を持ちかけられても毅然と断る強さは、幼く、見た目の強さに惹かれる子どものカロジェロには理解できなくても、彼が大人になった時、きっと、尊敬できるようになることでしょう。


カロジェロは、ソニーに現実社会の泳ぎ方を、ロレンツォに人として生きる道を教えられたといったところでしょうか。


当時、まだまだ、社会的には認められなかった白人と黒人の恋。その異人種間の恋に大らかだったのはソニーで、拒否的だったのがロレンツォというところは、"道徳"が、時として"保守"に繋がるという一面を見せてくれているようでもあります。


ロレンツォにも、ソニーにも、それぞれ長所があり、短所がある...。その辺りの描き方のバランスが良かったと思います。


実に地味な作品ですし、真っ直ぐ一本道を進んでいくようなストーリー展開で、意外性とか、波乱とか、浮き沈みとかはあまりなく、そういう意味での面白みには欠けるのですが、奇を衒わない真っ当で真面目な作りの映画で、素直に作品の世界に入れます。静かに胸に沁みてくる作品です。