袋小路 [DVD]/ドナルド・プレザンス,フランソワーズ・ドルレアック,ライオネル・スタンダー
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強盗をしくじって負傷した二人組のリチャードとアルバートが、盗難車で逃走中、人里離れた場所に古城を発見します。リチャードは負傷したアルバートを車に残し、ボスに助けてもらうため、電話で連絡を取ろうと、古城に侵入します。そこには、中年の男性、ジョージと、彼の再婚相手で若いフランス人女性、テレサが住んでいました。リチャードは、ジョージとテレサを脅し、古城に潜伏しながら、ボスを待つことにしますが...。


満潮になると道が水没し、孤立してしまう城。主な登場人物は、ジョージ、テレサ、リチャードの3人。そこに、時折、予期せぬ訪問客などが絡み、3人の関係を変化させていきます。


城に侵入してきた逃亡者2人については、親分に見放されるような失敗をしたらしきことはわかるのですが、それ以上、彼らの経緯の詳細については明かされません。


一方、ジョージの過去が、徐々に、露になってきます。そして、そのために、テレサの彼への想いが変わり、2人の関係が崩れていきます。まぁ、冒頭から、一筋縄ではいかない関係だったことは示されていたわけですが...。


このジョージというヒト、何を考えているのかよく分かりません。例え、戦車に守られていたとはいえ、それなりに功成り名を遂げた軍人で、実戦経験もあった様子。それなりの訓練を受けてきているハズ。ここまで、弱腰になってしまった原因は何だったのか...。テレサを守るための行動を起こすチャンスも、逃げ出すチャンスもあったはずなのに、そのチャンスを活かそうとはしませんでした。むしろ、意図的にチャンスから目を背けたような感じさえします。


全財産をこの古城に注ぎ込んでしまったジョージは、自分には逃げ場がないと感じていたのでしょうか。だから、古城で生き延びる方法だけしか考えられなかったと言うことなのでしょうか...。ラストで、ジョージはテレサの名ではなく、前妻の名を呼びます。もう、戻れない過去に縋るしかないということなのでしょうか。


小心者で、臆病で、けれど、人の良いジョージ。天然で悪気がない感じもするのですが、結局、ジョージのもリチャードにも災いをもたらしている小悪魔なテレサ。犯罪者だけれど、テレサに乱暴するようなこともなく、ヘンに正義感があったりもして、悪人になり切れないリチャード。物語を主導する3人を演じたドナルド・プレザンス(ジョージ)、フランソワーズ・ドルレアック(テレサ)、ライオネル・スタンダー(リチャード)が、それぞれに好演し、作品の味わいを支えています。


古城の立地は、まさに、"袋小路"。古城の購入に全財産を投げ打ったジョージも、"袋小路"に置かれています。ボスに見放されたリチャードも"袋小路"に追い込まれています。テレサは...、どうやら、前に進むべき道が見えている様子。テレサに縋ったジョージも、ボスに縋ったリチャードも救われないけれど、他の誰かに縋りはしなかったテレサには道が開かれた...ということでしょうか...。


そう、テレサ一人が、何事にも動じず、我が道を進んでいきます。特に難解というワケではないのですが、徐々に、行く先を見失ってしまうような感覚に囚われ、観る者も、徐々に、袋小路に追い詰められているというのに...。


冒頭の真っ直ぐに伸びる道路と、それが、徐々に、水に浸され水没していく映像が美しくて印象的。