ボリス・ヴィアンの小説「うたかたの日々(日々の泡)」を映画化した作品。かなり前ですが、原作を読んでいます。


パリ。働かなくても十分に生活できる財産があり、自由に生活してきたコランは、クロエと恋に落ちて結婚。幸せな日々を過ごしていたある日、クロエは、肺にハスの花が芽吹くという不思議な病気にかかってしまいます。高額な治療費のため、コランは、働き始め、不思議な人間関係に巻き込まれていきます。クロエの容体は徐々に深刻になり、そんな中、2人を取り巻く人々の人生も変化し始め...。


原作の小説には、かなり幻想的で、不思議な空気感がありました。原作には、もっと残酷な気配が感じられたのですが、本作は、どちらかというとファンタジックでキュートな印象を受けました。そういう意味では、本作よりも、岡崎京子の漫画の方が、原作の雰囲気を表現している気がしました。


美しいものだけを見ようとし、働くことに誇りを感じることを愚かだと考えるコランとクロエ。そのクロエが、美しいものであるはずのハスの花に苦しめられ、命を奪われていく...という展開が、原作のキモだと思うのですが、2人の人生に対する考え方や価値観といった部分の描写が今一つ薄く、本作では、どちらかというと、純粋で子どもっぽいだけな2人という感じで、その結果、ハスの花に命を脅かされていくことの残酷さが分かりにくくなってしまった気がします。


まぁ、原作のことは考えず、純粋に本作を観れば、このキュートさにも、左程、違和感は感じないのかもしれませんが、ハスの花が肺に芽吹くというシュールな設定は、このキュートさとはちょっと合わなかったような...。原作は、ちょっと浮世離れした大人の恋愛、本作は、子ども同士の恋物語といったところでしょうか。


少々、幼く、ポップな感じになり過ぎたとは思いますが、全体に映像は魅力的でしたし、ホンの少し、角度を変えていれば、もっとグッと原作の雰囲気が出たかもしれないと思えるだけに、残念でした。



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