愛妻の死の辛さを紛らわせるためか、仕事一筋のデンマーク在住のイギリス人、フィリップは、子どもとも満足に連絡を取れていません。やっと乳がんの治療を終えた美容師のイーダは、病院での検査が早く終わり予想よりも早く帰宅した時、夫の浮気現場を目撃してしまいます。イタリアでの娘の結婚式が直前に迫っていることもあり、動揺しながらも、イーダはイタリアへ向かいます。息子の結婚式のためイタリアに行くフィリップもイーダと同じ頃、空港に到着。イーダがフィリップの車に衝突したことで、2人は出会い、それぞれの息子と娘が結婚することを知ります。子どもたちが結婚式をする南イタリアのソレントにあるフィリップの別荘で、互いの心の傷を癒すように距離を縮めていきます。一方、彼らの子どもたちは挙式を目前に控えながらも、心に迷いが生じていて...。


ちょっとした...というには大きような気もしますが、大人ならそれくらいはやらなくちゃかもしれないアクシデントで出会った2人が、段々仲良くなって...という実にベタな展開。


そして、2人のロマンスに、"ウソつきな大人たち"の嘘との決別の物語が織り込まれます。人はとかく嘘をつくもの。それは、自分の利益であったり、他人を貶めるためであったり、世間体を慮るためであったりもしますが、誰かへの気遣いからであったり、誰かを護るためであったりもします。けれど、一方で、その嘘により、自分自身が追い詰められ、傷つけられることもあるワケで、その辺りのバランスのとり方が微妙なところ。夫への気持ちを誤魔化そうとするイーダ、義理の妹に言いたいことを言えないフィリップ、結婚について無理に気持ちを高めようとしているパトリックとアストリッド...。それぞれが、自分の中の嘘と決別し、新たな人生を歩んでいきます。それ自体には、爽やかさを感じるのですが、物語のあちこちに無理があって、引っ掛かりました。


妻が病気の時に不倫のライフ...については、到底、ヨシとは言えませんが、まぁ、世間的にもあり得ることです。でも、娘の結婚式に連れて来る、それも"フィアンセ"と名乗ることを許してしまうって、信じられません。息子には相当毛嫌いされていたようですが、さもありなん。不倫がどうこうという前からどうしようもない父親だったのかもしれません。そんな彼とイーダはどんな夫婦だったのか、イーダは、何故、そんな男と結婚し、その後の結婚生活を維持してきたのか...よく分かりません。愛人とも何の脈絡もなく突然別れ、シャアシャアと妻とヨリを戻そうとするというのも、???。彼の思考には全くついて行けません。


そして、そんなライフを庇うイーダも。何故、彼女が夫に対し怒りをぶつけようとしないのか、そんなにも自分の気持ちに嘘をつかねばらなないのか、その背景がきちんと描かれないので、彼女の言動に違和感を覚えました。


フィリップとパトリックの関係も、パトリックとアストリッドの関係も、その間に割り込んできたかに思えたパトリックの友人との関係も、きちんと描かれないままに終わってしまうので、消化不良な感じが残ってしまいます。


もちろん、いろいろなことを細かく描き切ることが良いこととは言い切れないのですが、どこまで描くか、どこを描かないか、そのバランスのとり方が中途半端な感じがしてなりません。


まぁ、それでも、そこそこ楽しめたのは、軽妙なセリフと程よいテンポ。そして、次々不運に見舞われる悲劇のヒロインながら、にこやかな丸顔とくりくりオメメなイーダ役のトリーネ・ディアホルムと、仕事もでき、亡くなった妻に純愛を貫き、性格的にも素敵で、妙にカッコ良いほとんどパーフェクトな熟年男性というかなりあり得ない人物設定にリアリティを出したピアーズ・ブロスナンのキャスティング故かもしれません。


"映画の日"とか"レディース・デイ"ならお勧めかもです。



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